食事と雑談
ーーー食事中ーーー
「こんなにのんびりしてていいのか?」
ファムに頼まれて食事を作り終えた俺は
似たような味や見た目の食材を使って
なんとか完成させた即席カレー(仮)に
夢中になっているファムに質問した
「この屋敷は人間達のいる
拠点から少しだけど離れてるから大丈夫よ
どういう訳か大陸を侵略し終わってから
人間達が全然移動しなくなったの」
「へぇ・・・」
カレーを頬張りながらファムが答える
どうやらこの屋敷は
人間達に侵略された大陸にあるらしい
そのことに少し不安になるが
モグモグと俺の作ったカレーを
美味しそうに食べるファムを見ていると
なぜか頬が緩んでくる
すると背後から視線を感じて振り返ると
シェリーが悔しそうに俺とファムを見ていた
「ファム様・・・あんなに
おいしそうに食べて・・・」
「シェリーも食べたらどう?」
「新人君のカレーおいしいよ~」
すっかりカレーを気に入ったファムとメアが
頬にカレーをパンパンに詰めながら
シェリーをテーブルに誘う
「メア!あなたまで!」
メアの様子を見たシェリーが
絶望したような顔で後ずさる
「遠慮しないで食べろよ」
そんなシェリーに
俺は大盛りのカレーがのった皿を差し出す
「くっ!
私を甘く見ないで下さい!!
こんなもの・・・」
そんなふうにブツブツ言いながらも
シェリーの鼻はヒクヒクと動いて
カレーの匂いを嗅いでいる
「もう意地張るのやめて食べなよ~
これからは料理は新人君にしてもらおう」
メアがカレーを食べながらシェリーを説得する
「ほら、残ったらもったいないだろ」
頑固なシェリーに俺はスプーンを直接渡す
するとシェリーはこの雰囲気からは
逃げられないと思ったのか
嫌々だがカレーをスプーンですくって一口食べる
「ッッ!?」
すると食べた瞬間
シェリーのメイド服のスカートが
激しくバッサバッサと揺れ始めた
俺が驚いてスカートを凝視していると
なにやらフワフワした尻尾(?)
のようなものがスカートからはみ出した
同じくファム達と一緒に
カレーを食べていた京子が
シェリーに自慢げな顔で聞く
「どう?
優くんのカレーは?」
京子に聞かれるとシェリーはハッとして
「おいしい、です・・・」
と歯を食いしばりながら悔しそうに答えた
「座って食べたら?」
京子の提案に黙ってうなずき
シェリーが空いた席に座ると
早々にカレーを食べ終えたファムが言う
「まぁ、私の部下に出来なかったのが
心残りだけど・・・なにはともあれ
今日からあなたは魔族のために働くのよ!」
「働くって言っても
何をすればいいんだ?
肝心の人間達が全然移動してないんだろ?」
「そうね・・・
とりあえずあなたが今まで
生きてきた中で体験したことを
教えてもらおうかしら?
人間と交流があったと言っても
それは一部の話で
私達は人間の生活のことをよく知らないのよ」
「・・・分かった、できるだけ詳しく話そう
・・・まず、そもそも俺は
こんな見た目だから友達が少なくてな
京子以外の人とはあまり話したことがない
だから必然的に京子とよく話すんだか
そのせいか京子のことを慕ってる奴に
男女問わず目をつけられたりしてーーー」
俺が話し出すとファムやメイド達も
静かに俺の話を興味深そうに聞きだした
・・・だが
「ーーー路地裏に連れ込まれてーーー
ーーー突然ナイフでーーーーーー
ーーーーーーーーー他にもーーー」
時間が経つにつれて俺の話を聞いていた
ファムとメイド達の顔色も悪くなってくる
「人間・・・なんて恐ろしい種族なの・・・」
「私達はとんでもないものを
相手にしているのかもしれませんね」
「ファムさまぁ、こわいよぉ・・・」
メアに至っては震えながら涙目で
隣に座っているファムに抱きついていた
「優くん!?
ファム達に変なこと吹き込まないで!」
「でも本当のことだぞ?」
「もう!!ファムちゃん達には
私がちゃんと話しておくから
優くんは食器でも片付けてて!」
俺に指示すると
京子はファム達に
華やかな学園生活のことを話し始めた
俺は素直に食器を片づけて
洗うために調理場に向かう
ーーーーーーーーー
調理場から帰ってくると
ちょうど京子の話が終わるところだった
「なんでこんなに境遇に違いがあるの?」
ファムが一番に俺に聞いてくる
可哀想な人を見る目で
見られているのは気のせいだろうか?
「まぁ、いろいろあるんだよ」
食器を洗い終わったばかりで
疲れていた俺はファムに説明するのが面倒になり
適当に話をごまかす
「そう、大変だったのね・・・
もう遅いし今日は寝ましょう」
そう言うとファムは
俺達を寝室に案内すると
食事をしていた部屋に帰っていく
なぜかその背中には
なんとも言えない悲しさがあった
「何か俺のことを
誤解されている気がするんだが・・・」
「大丈夫よ優くん
後でちゃんとフォローしておくから、
それより・・・」
京子が言葉を途中で止めると
俺にもたれかかってくる
「ベットは一つか、どうする?」
「もちろん一緒に寝ましょう」
「いや、そういうわけには・・・」
「もちろん一緒に寝ましょう」
「・・・だから、京k」
「一緒に寝ましょう・・・ね?」
そういう京子の目は
飢えた獣のような目をしていた
「いや、俺は・・・」
俺の抵抗も無視して
俺は強引に京子に部屋に引きずり込まれた
あぁ、はたして
俺は生きて朝を迎えられるだろうか?