ー転移門決戦編ー 騎士vs魔眼の老人
「オオオォォォーーーーー!!!!!!」
最初に動いたのはゴーレムだった
ついさっき黒い短剣に切断された自分の足を
唯一無事な右腕で掴みあげると
それをレオに向かって勢いよく投げつけた
本来なら何百キロもある
馬鹿でかい石の塊が高速で飛んで来れば
為す術も無くその圧倒的な質量に
押しつぶされるはずだが・・・
相手は【天才】レオである
「《【切り刻む盾】・ドレッドミキサー》」
その言葉と同時に
レオの周りに配置されている
黒い短剣が一斉に動き出した
瞬く間に全ての短剣が
一斉に黒い粒子になったかと思うと
そのまま粒子はレオの前方に集まり
黒い波動を放つ黒い盾を造り出す
・・・禍々しい盾と巨大な岩が激突する・・・
ギャリギャリギャリ!!!!!!!!
とても岩が衝突したとは思えない
何かを無理矢理削るような気味の悪い音を立てて
黒い盾はゴーレムの足だった岩を簡単に防ぐ
それどころか黒い盾は
全体を生き物のようにうねらせて
ヤスリのように次々と岩を削っていく
ーーーものの数秒で岩が細かい砂になった
「これで終わりか?」
「そんなわけないじゃろ!!」
そう言ってレオが
うごめく【ドレッドミキサー】の隙間から
老人の様子を確認すると
いつの間にか老人は
傍のゴーレムの手のひらの上に
チョコンと座っていた
そして老人を手に乗せたまま
ゴーレムはゆっくりと上半身をひねり
野球のボールを投げるかのように振りかぶる
「まさかッッッ!!」
「オオオォォォーーー!!!!!」
ゴーレムが小柄な老人を
レオに向かって思い切りぶん投げた
「自滅する気か!?」
レオはさっきと同じように
自分の前方に【ドレッドミキサー】を展開する
巨大な石を数秒で
塵にする盾が飛んでくる老人に牙をむく
このままでは老人が
【ドレッドミキサー】に衝突して
ゴーレムの足と同じ運命をたどってしまう
・・・だが
「ふぉふぉふぉ、射程距離内じゃ!!」
勢いよく飛んできた老人の瞳が
慌てて【ドレッドミキサー】を展開する直前で
不気味に赤く光るのをレオは見た
ゾワ・・・
ゾワ・・・ ゾワ・・・
ゾワゾワゾワ!!!!!!
「ぐぁぁぁっ!!!!!?」
その瞬間レオの全身を気味の悪い【何か】が
はいずりまわるような感覚が襲った
そのせいでレオの集中力が途切れ
さっきから足場にしている大剣と
目の前で展開していた【ドレッドミキサー】が
黒い粒子となって空中に霧散してしまう
そしてもちろん足場の大剣を失ったレオは
重力に従って落下し始める
「ぐっ・・・がぁぁぁ!!!!!!!!」
レオは落下しつつも自分の頭を抱えて叫ぶ
それほどの苦痛と違和感が
レオの意識を襲っていた
「ふぉふぉふぉ!!これで詰みじゃ!!
・・・・・・・・・・・・・お?」
だがここでレオの苦しむ姿に
勝利を確信して高笑いしていた
老人が不意に硬直した
「たいした執念じゃのぅ」
そんな老人の周囲に
黒い粒子が集結し始めた
ズゾゾゾゾ!!!!
そのまま粒子はうごめき
形を徐々に変えていく
その様子を空中で身動きの取れない老人は
黙って見ていることしかできない
「ふぉふぉふぉ、これは・・・」
完成したのは巨大な黒い腕だった
地上にいるゴーレムと
ほぼ同じサイズの巨大な腕が老人に殴りかかる




