ー転移門決戦編ー 決戦直前の騎士達
「ふぁ~、今日も平和っすね」
「・・・そうだな」
ここは魔界にある
騎士達の駐屯地周辺の森の中
その森の中の散歩道を
けだるげな様子の茶髪のチャラい見た目の騎士と
顔がよく見えないほど前髪の伸びた
陰気な騎士が並んで歩いている
このところ二人は
木々の伐採やその運搬などの
地味な肉体労働で体に疲労がたまってきており
たまの休みに近くの森まで羽を伸ばしに来ていた
「こうも平和だと・・・ん?」
・・・・ぃ・・・・・ぇ・・・
涼しげな森の中を爽やかな風が吹き抜けるなか
二人の耳に聞き慣れた少年の声が聞こえてきた
「この声って・・・」
「あぁ・・・レオ司令官だな」
二人のもとに聞こえてきたのは
普段から朝の集会や食堂などで耳にする
駐屯地の若き司令官レオ・ハートの声だった
「何でこんなところで司令官の声が?」
「あー、そういやお前は
ここに来て日が浅かったな・・・ついて来い」
そういうと陰気な騎士がもう一人の手を引いて
声の聞こえる方へ歩き出した
「ちょ、ちょっと!
服を引っ張らないでくださいよ!!」
ーーーーーーーーーー
「セレスさん・・・
僕は、僕はどうすればいいんでしょうか!?」
「知らない・・・もう病院に帰っていい?」
「そんな冷たいこと言わないでくださいよ!」
声の聞こえる方へ歩いていくと
予想通りそこには小柄な騎士のレオと
一応、権力的には駐屯地の頂点に立つ
《医療室・室長》のセレスがいた
「なんか、珍しい組み合わせっすね・・・」
「ちょっと黙って見てろ」
「?」
相方の言葉にチャラい見た目の騎士が黙ると
二人はレオとセレスの様子を茂みからのぞき見る
「いいですかセレスさん
これは重大な問題なんです!
ちゃんと答えてください!!」
「・・・はぁ」
そんな二人の目の前で
レオは顔を真っ赤にしてセレスに詰め寄った
詰め寄られたセレスは
心底嫌そうな顔でレオを見ている
「もう一度最初から言いますよ・・・
セレス・シュタインさん!!
僕と付き合ってくだs 「ダメ」 」
「・・・」
その瞬間、時間が凍り付いた
「えっ・・・ちょっ・・・えっ?
司令官・・・ふ、振られたんすか?」
チャラい見た目の騎士も
あまりのあっけなさに言葉を失う
レオが顔を真っ赤にしながら
勇気を振り絞って放った一世一代の告白を
セレスは少年に最後まで言わせることなく
ばっさりと断ったからだ
「だから、どうしてそうやって
すぐに断るんですか!?
僕はどうすればいいんですか!?」
凍り付いた時間から立ち直ったレオは
負けじとさらにセレスに詰め寄る
「知らない」
そしてセレスが
もっと顔をしかめながらレオを突き放す
「もう・・・酷いですよ、セレスさん
せめて最後まで言わせてください」
「ダメ」
「僕の何がいけないんですか・・・
やっぱりあれですか?
たくましい男の人が好みとか・・・」
「・・・別に」
レオの質問にセレスはつまらなさそうに呟くと
さっさとその場から去ってしまう
「うぅ~・・・」
セレスに素っ気なくあしらわれたレオは
その場にしゃがみ込んで唸り始める
「これは・・・
ちょっと俺、司令官をなぐさめてくるっす」
「待て、もうちょっとだ・・・」
「もうちょっとって?」
あまりのレオの哀れな背中に
チャラい騎士がレオに歩み寄ろうとするが
陰気な騎士がその手を掴んで止める
そうやって
二人が茂みの中で言い争っていると・・・
「レオく~ん、どうしたの~?」
「またセレスちゃんに振られちゃったの~?」
「元気出してよ~
ほら、私のお胸に飛び込んでおいで~」
どこからともなく
この魔界の駐屯地で働いている
他の女騎士達がぞろぞろと
しゃがみ込んでいるレオの元に集まってきた
しかも全員、大人びているというか・・・
母性に溢れているというか・・・
なぜか集まってきたのは
大人(意味深)のお姉さんばかりだった
「 ? ? ? 」
いきなり現れた女騎士達に
取り囲まれたレオを見て
チャラい騎士が唖然とする
「まぁ、そうなるよな・・・」
「どういうことっすか?」
何か事情を知ってそうな
相方にチャラい騎士は説明を求める
「どうやらレオ司令官は
あの手の大人びた女性に
絶大な支持を得ているらしい・・・
ある方々の意見だが
『なんだか放っておけない』
『かわいい』
『弟にほしい』
『むしろ逆に襲われたい』などなど・・・
さらに・・・
ちょっと向こうの木の陰を見てみろ」
そう言って陰気な騎士は
少し離れた木を指さす
「最後の方の意見が気になるっすね・・・」
「気にするな・・・
気にしたら負けだ
それより、ほら・・・」
「なんすか、木の陰を見ろって・・・
ひぃぃぃ!!!!??」
チャラい騎士が目を向けると
そこにはこの場を去ったはずのセレスが
レオとその周りの女騎士を能面のような顔で
睨みつけていた
「レオ司令官は定期的に
セレス室長に告白をするんだが
毎回振られて今みたいな状況になる・・・」
陰気な騎士は横でブルブルと震える
相方を無視して説明を始める
「そしてセレス室長はなぜか毎回
レオ司令官の告白を断りながらも
群がってきた女性を
食い殺すような目で見ているんだ・・・」
レオ司令官に群がるお姉さん達
そのお姉さん達にデレデレするレオ司令官
木陰で能面のような顔をするセレス室長
「・・・」
この様子を見てチャラい騎士は
目の前で繰り広げられている
茶番を理解したようだ
「これがここでの一連の流れだ
なぜセレス室長がレオ司令官の
告白を断るのかは分からないが・・・
まったく、レオ司令官も罪なお人だ」
「・・・」
「感想は?」
あらかた説明をし終えた陰気な騎士は隣で
ワナワナと震える相方の顔を覗き込む
「爆ぜろ」
チャラい騎士の口から
そんな呪いの言葉が漏れ出た




