二人のメイド
突然家の床に空いた穴に落ちた俺達は
次の瞬間にはなぜか見たこともない綺麗な夜空から
一直線に深い森へと落ちていた
「きゃぁぁぁ~~!!!」
「落ち着け京子!」
突然床に空いた穴からの落下に
巻き込まれた京子は
恐怖で顔を真っ青にしながら
俺にしがみついている
「おいファム!!なにがどうなってる!?
この状況はなんとかなるんだろうな!?」
ついさっきまでリビングで面白そうに笑っていた
ファムに向かって怒鳴ると
ファムは少し引きつった顔をしながら
落下中の俺達の方に器用に寄ってきて
「ごめん、ちょっと間違えちゃった・・・
なんとかしてぇ・・・」
京子に負けないほど顔を青くしながら
涙目で俺の腕にギュッと抱きついてきた
「何言ってんだ!
さっき俺の家で《四天王》だの何だの
訳の分からないこといってただろうが!」
「《四天王》でもさすがに
この高さから落ちて
無事ですむわけないでしょ!!」
「何、逆ギレしてんだ!!!!」
そうやって二人で言い争ってる間にも
どんどん地面が迫ってくる
「誰でもいいから
早くなんとかしてよぉぉぉ!!!」
「クソッッッ!!」
俺は少しでも京子とファムを助けようと
無駄だと知りながら二人を抱きしめる
そんな絶体絶命の場面で
俺達が地面に激突しようとする瞬間
森の中から何かがすごい勢いで
落下地点に向かって来るのが見えた
次の瞬間、俺は柔らかい何かに
包み込まれるような感覚がして
そして、俺は意識を失った
ーーーーーーーーー
「・・くん・・・・ぅくん!・・・優くん!!」
「うぅ、京子か?」
「優くん!!
よかったぁ、目が覚めたのね」
目が覚めると目の前に
ホッとした顔の京子がいた
どうやら俺はベットに寝かされているらしい
「ここは?」
そう京子に聞くと
いきなり部屋のドアが開いて二人の女性が
部屋に入ってきた
「よかった、京子さんのご友人も
目が覚めたようですね」
そう言って入ってきたのは
白く長い髪を頭の後ろで
団子のようにまとめた
メイド服のような白黒のドレスを着ている
眼鏡をかけた色白の背の高い美女と
「あの高さから落ちて
気を失うだけですむなんて奇跡だよね」
オレンジ色のショートヘアで
隣の美女と同じ服を着ている
小麦色の肌をした
活発そうな印象のとても胸が大きい美少女だ
そんな二人がベットの横まで歩いてくる
「誰?」
俺がそう問いかけると
色白の美女がコホンと咳払いして
「私はシェリー・ノーゼン
《四天王》ファム様の秘書と
身の回りのお世話をしています」
そういうと肘で隣の少女をつつく
するとハッとした顔をして少女が慌てて
「私はファム様の護衛役の
メア・ウルズといいます!」
と自己紹介をした
二人ともコスプレでもしているのか
シェリーの頭には髪と同じ色の
狼のような耳がぴょこんと生えていて
メアにはドラゴンのような太い角が
頭の横に一本ずつ生えている
「俺は出雲優・・・
正直なにが起こったのか
よく分かってないんだが・・・」
俺の自己紹介を聞いて
メアが突然ベットに身を乗り出して
俺の顔を覗き込みながら聞いてきた
「ところで君って
料理とか掃除ってできる?」
「あぁ、そこそこできる方だと思うが・・・」
「本当!?やったぁ~!!
歓迎するよ新人君!!」
そう聞くと目をキラキラさせながら
メアは思いっきり俺の頭を抱き寄せた
「ふぐぁぁ!!」
俺の頭がメアの胸に埋もれる
メアの胸が大きすぎて息ができないだと!?
「む、胸で息がっっ!京子、助けてくれ!!」
俺が必死に京子の方を見ると
「だだの脂肪の塊に優くんが誘惑されてる!
くっ、私にもあれだけの大きさがあれば・・・」
なにやら羨ましそうな悲しそうな顔で
自分の胸を見下ろしている
「京子!早く!!」
俺の意識がまたしても沈みかけた時
「何をしてるの!?」
部屋のドアが勢いよく開き
ファムが中に入ってくる
さっきまで家にいたときのTシャツではなく
豪華な赤いドレスに着替えていた
その姿は確かに《四天王》なんて呼ばれても
おかしくないくらいの威厳と気品を備えていた
「メア!
早く私の執事を放しなさい!」
「あぁ!
ごめんねファム様」
慌ててメアが命令を受けて俺から離れる
「助かった・・・」
俺の無事を確認すると
ファムが俺の手をつかみ
無理やり力ずくでベットから引きずり降ろす
「ちょっと待って!!
優くんはもう少し
横になってたほうがいいと思う!」
京子がいきなりのファムの登場に
驚きつつもファムとは逆の手を掴んで引っ張る
「放しなさいよ!!」
「ダメ!!」
俺の手を引っ張りながら
二人が言い争いを始める
「ファム様
そんなに慌てて
どうしたのですか?」
ファムの慌てた態度が気になったのか
シェリーがファムに聞くと
京子との引っ張りあいで疲れだした
ファムが真っ赤な顔で答える
「魔王様が
この男を呼んでるのよ!!」
「「えっ!?」」
それを聞くと
シェリーとメアが顔を真っ青にして
ファムの握っている方の手を
力一杯引き始めた
「あっ!!」
京子の抵抗もむなしく
俺達は三人に引きずられながら
部屋の外に引っ張り出される
「魔王様はいまどちらに!?」
「私の部屋よ!」
「急がないと魔王様怒っちゃうよ!」
俺と京子は三人に引きずられながら
魔王と呼ばれている人のいるらしい
ファムの部屋まで引きずられていった