メイの屋敷
「ここがメイの家だよ!」
メイに案内されて後をついて行くと
城の敷地の中にファム達の屋敷ほどではないが
子供が一人で住むには大きすぎるほどの
豪華な屋敷が建っていた
「ここに住んでるのか?」
「そうだよ、
自宅 兼 病院 兼 実験施設ってところかな」
確かにこれだけ大きければ
病室や実験用の部屋があっても
部屋は充分あまるだろう
「じゃあ、早速中に・・・あっ」
「?」
メイが俺を連れて
家に入るために玄関の扉を開けようとすると
突然小さな声を上げた
不審に思った俺がメイを見ると
俺に爆発の魔法を仕掛けたことを
自慢げにソフィーに話していた時のような
良いこと思いついた的な悪い横顔が見えた
「悪いけど、
ちょっとここで待っててくれない?」
「・・・何でだ?」
「いいからいいから」
そう言ってメイは
ニヤニヤしたまま扉を開けて
俺を置いて家の中に入ってしまった
ーーーーーーーーーーー
「・・・遅いな」
俺は玄関の扉の前でそう呟いた
メイが屋敷に入ってから
もうかなりの時間が経っている
もしかして歓迎会でも開いてくれるのか?
ーーーガチャ
そう思っていると不意に扉が開いた
「ずいぶん遅かったな」
ため息をつきながら開いた扉に手をかけて
中をのぞき込み文句を言う
何も聞かされずに放置されていたんだ
文句の一つでも言ってもいいだろう
だが・・・
「死ねええええええ!!!!!」
「え?」
扉の奥から返ってきたのは
言い訳でも謝罪でもなく死の宣告だった
メイだと思って声をかけたが
そこにいたのはナース服を着た若い女性で
なぜか手には手術用のメスが握られている
クラスで委員長でもやってそうな
お下げ髪で大人しそうな女性が
なぜか俺に襲いかかってきた
いきなりのことに驚いて固まっている俺に
扉の隙間から容赦なくメスが振るわれる
「うおっ!?」
俺の顔めがけて振るわれるメスを
上体を反らすことでギリギリで回避する
避けた勢いで後ろに尻もちをついた俺を
突然現れたナースが見下ろしてくる
「チッ!!外した・・・」
「いきなり何だ!?」
「うるさい!!!!!」
俺の姿を見て舌打ちした後
躊躇なくナースから再びメスが振り下ろされる
「くそっ!!悪く思うなよ!!」
俺はそう言ってとっさに立ち上がると
振りおろされるメスを持った手首を掴み
背負い投げの要領でナースを投げ飛ばす
「っっっ!?」
だがナースは体をねじって
俺の投げから抜け出すと
そのまま空中で体勢を立て直し
ストンと俺から少し離れた場所に着地する
「何なんだいきなり!?」
「黙れ!!」
「ちょっと落ち着いてくれ!!」
なんとか状況を把握しようとナースに
話しかけるがなぜか怒鳴り返される
さらにジタバタと地団駄を踏んだかと思うと
さっきから手に持っているメスを俺に向かって
思いっきり投げつけてきた
俺が慌てて背後の玄関に飛び込み
扉を閉めると背後でメスが突き刺さる音と
ナースの悔しがるような
うなり声が聞こえてきた
「危なかった・・・」
俺は一旦息を整えると
背後の扉にもたれかかって脱力する
背後の扉を警戒しながら
屋敷の中を見回してみる
屋敷の中はやけに薄暗く
正面の大きな階段の手すりと
階段の後ろ側にある三つのドア
そして玄関から入ってすぐにある
左右に延びる廊下に取り付けられた
燭台の上で燃えている光る石の明かりで
ギリギリ屋敷全体がうっすら見渡せる程度だ
「開けろコラ~!!!!!」
背中で押さえつけている扉から
ドンドンと扉を叩く音と
さっきのナースの声が聞こえてきた
絶対に開かないように
思いっきり体重をかけていると
ひた・・・ひた・・・
どこからともなく足音が聞こえてきた
響いてくる足音に気づいて
辺りを見回すために目をこらすと
正面の階段から
全身に包帯を巻いた人間が下りてきていた
包帯は体どころか顔全体にも巻かれていて
性別の判断もできない
「ふがふがふがふがふが・・・」
階段を下りながら
包帯人間が何か喋っているが
声がくぐもってほとんど聞き取れない
「何なんださっきから・・・」
「ふが・・・ふがふが」
「いや、聞こえないから
包帯を取ってくれないか?」
「!!!・・・コホン」
すると包帯人間が
慌てて口元の包帯を解いて
恥ずかしそうに咳払いする
「・・・失礼シタ」
「あ、あぁ」
「デハ、モウ一度」
意外と礼儀正しい包帯人間は
俺に一言断った後息を大きく吸い込んだ
「貴様ガ!!!!!
ワガ主人ヲ泣カセタ
犯人カァァァァァーーー!!!!!」
包帯人間の絶叫が屋敷に響き渡る




