無邪気な医者
「は?」
ジュゥゥゥーーー
床に落ちた赤い金属バット(?)は
一瞬で床の石をドロドロに溶かした
溶かされた石が
溶岩のように真っ赤になっている
「ちょ、ちょっとメイちゃん!?
なんてものを使ってるの!!」
「だ、大丈夫、大丈夫!!
その人に魔法は効かない・・・
いや、正確には効きづらいみたいだし。
ね、イズモ君?」
「・・・どういうことだ?」
ソフィーに肩を掴まれて
前後にガクガク振られているメイが
こちらを振り返って
得意顔でウインクしてくる
「もしかして自分の体質のことを
理解できてないの?」
そう言ってメイは落ちた金属バット(?)を
拾い上げて俺とソフィーに
見えやすいように差し出してきた
「これは熱を発生させる岩石を
加工して本来の何倍もの熱量を
発生させることができる自信作でね!!
熱量の調整はできないけど
魔法を組み込むことで
飛躍的に熱量の上限が上がって・・・」
「そんなのの説明はどうでもいいから!!
さっきのはどういう意味なの?」
金属バット(?)の説明に
夢中になっていたメイを
隣にいたソフィーがたしなめる
「そんなのって・・・頑張って作ったのに
・・・イズモ君の腕はこれを当てられても
なんともなかったでしょ?」
「なんともないってことはないが・・・」
まだ熱さでジンジンしているが
石を一瞬で溶かすほどの熱を浴びたと
考えると驚くほど軽傷だ
「普通はこんなのを腕に当てられたら
腕が溶けちゃうよ」
そう言うとメイは
面白そうケラケラと笑う
「いや、笑い事じゃないんだが・・・
じゃあ、なんで俺の腕は無事なんだ?」
「ほら、イズモ君って
魔力保有量が異常に低いでしょ?
確か3000しかないんだっけ」
「あぁ、そうらしいな」
「それがどうしたの?」
メイの話に興味が出てきたのか
ソフィーが横からメイに尋ねる
「最初は魔法が効かないって聞いてたから
景気づけに爆発魔法を仕掛けてたんだけど
イズモ君が吹っ飛んじゃってビックリしたよ
話が違うじゃんってね」
またメイがケラケラと笑う
あれで気絶した俺にしてみれば
たまったものではないが・・・
そんなメイの態度に腹が立ったのか
ソフィーがメイの頭を拳で挟んで
グリグリしだす
「笑い事じゃないでしょ!!
ちゃんと謝ったの!?」
「い、痛い痛い!
ギブアップギブアップ!!
ごめんなさい、イズモ君
メイは反省してます!!許してください!!!」
するととたんに
さっきまで上から目線で話していたのに
よっぽどグリグリが痛いのか
メイが必死に涙目で俺に謝ってくる
「お、おい・・・
そのへんで許してやったらどうだ?
俺は気にしてないから」
「はぁ、仕方ないわね」
「うぅぅ・・・」
俺の言葉を聞いて
ソフィーがグリグリをやめて
メイの頭を開放する
メイはグリグリされていた所が痛いのか
頭を撫でながら小さく唸っている
「それで、魔法が効きづらいことと
魔力保有量が低いことに
どんな関係があるの?」
床に座り込んで
メソメソしているメイに
ソフィーが呆れたような声をかける
メイは自分の頭を撫でながら
こちらを見上げて答える
「あくまでも仮説なんだけどね・・・
メイはもしかして魔法は魔力にしか
作用しないんじゃないかと考えてる訳なんだよ」
「「?」」
魔力だの作用だの小難しい話に
俺どころかこの世界の住民のはずの
ソフィーの頭にまで?マークが浮かんでいる
「メイも今までは
魔法が効かない存在について
考えたこともないから
なんとも言えないんだけど・・・
う~ん、なんて言えばいいのか分かんないな」
自分の話を俺達にうまく伝えられないのか
メイが顎に手をあてて考えだす
「まぁ、詳しい事はメイの屋敷で調べたいから
イズモ君を家に連れて帰りたいんだけど
・・・いいよね?」
「そういうことなら納得するけど・・・
本人がどう思うか」
考えるのが面倒になったのか
メイは悩むのをやめて
俺の手を再び掴みソフィーに尋ねる
ソフィーもきちんとした考えがあるメイを
止める気は無いようで
俺にどうするか聞いてくる
「あぁ、メイがいいなら
俺は構わないぞ」
メイはこの国でもかなり有名な医者らしいし
メイと一緒にいるだけでも
この世界のことについて
色々知ることができるはずだ
そう考えた俺は
メイの屋敷へ行くことに決めた
「本当!?
よし!イズモ君の許可もでたし
早速家に帰って実験だーーー!!」




