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昨日までの生活



 ジリリリ・・・ ジリリリ・・・

 


 「ん、もう朝か・・・」



  聞き慣れた目覚まし時計の音で目が覚めると

 俺は布団のぬくもりを惜しみつつも起き上がり

 部屋のカーテンを開く



  開かれた窓からは眩しい朝日と

 毎朝見ている町並みが一望できる


  その景色をしばらく眺めてから

 俺は部屋を出てキッチンに向かう



 「さて、朝食を作るか」



  いつもなら母親が毎朝用意してくれていたが

 少し前の両親の結婚記念日に

 二人とも旅行に行ってしまってからは

 毎朝一人で朝食を作らなければならなくなった



  一人ならコーンフレークとかで十分だが

 《あいつ》にそんなものを

 食べさせるわけにはいかない



  俺がキッチンに入ると

 もうすでに《あいつ》がいた





 「遅いよ~、お腹すいた」



 


 「悪かったよ、

  すぐ作るから待っててくれ」


 「甘い卵焼きが食べたいな」


 「分かった」


  出会っていきなり

 朝食のリクエストをしてきたのは

 俺の家の隣に住んでる川上京子だ


  お互いの両親が知り合いという理由で

 昔からよく家に遊びに来ていた


  両親が京子の親も一緒に

 旅行に連れて行ったせいで

 俺が朝昼晩と京子の食事の面倒を見ている



 「朝食できたぞ」


 「ありがと~♪

  じゃあ、早速いただきま~す」


 「卵焼きだけじゃなくて

  野菜や米も食べるんだぞ」


 「分かってるよ~、

  優くんは自分のことは気にしないくせに

  他の人のことになると

  すぐに口うるさくなるんだから」



  そう言って京子はグチグチ言いながらも

 俺の作った朝食を食べ出した


  ちなみに言うと京子はかなりの美少女だ

 腰まである黒髪は光を反射するほど艶やかで

 凛々しい瞳は女性からの尊敬の眼差しで見られ

 個人的に胸が少々物足りないが

 余分な肉が一切ないスレンダーな体と

 整った顔立ちで男のファンも少なくない


  なんとなく京子の食事する姿を眺めていると

 京子が突然食事の手を止めてこちらを見てきた


 「どうした京子?」


 「そんなに見られると照れるんだけど」


  少し頬を桃色に染めながら

 京子はこちらをちらちらと見てくる


 「悪い・・・」


  確かに食事している姿を

 じっと見られるのは

 あまり気分がいいものじゃない


 「着替えてくるから

  京子はゆっくり食べててくれ」


  そう言って俺はエプロンを外すと

 食事をしている京子をリビングに残して

 自分の部屋に戻った



  部屋から戻ってくると京子は

 すでに朝食を食べ終わっていた



 「じゃあ行くか」


 「うん!」






  京子を連れて家を出ると

 ドアにいつも通り鍵をかけて

 通学路を京子と一緒に歩いて行く



  学校に近づくにつれて

 同じ高校の生徒の数もちらほらと増えてきた



 「・・・・は・・・ゃ・・・・」



  ふと耳をすますと

 前を歩いている同じ高校の女子生徒が

 こちらを見て何か話している


 「川上さんの隣にいる人って

  毎日一緒に登校してるよね・・・

  どんな関係なんだろう?」


 「やっぱり付き合っているのかしら・・・」


 「ちょっと聞いてみてよ」


 「でも、隣の人は顔が恐くて

  話しかけづらいですわ・・・

  それにさっきから

  こっちを睨んできているようですし」


 「えっ、嘘っ!!」

 


  といったような会話がここまで聞こえてくる


  もう恐がられるのは慣れてるけどな・・・


  そうして女子生徒を恐がらせないように

 できるだけ前の女子達を見ないように歩く


 「あの子たち・・・

  優くんに失礼じゃない!?

  ちょっと、説教してくる!」


 「いいんだよ京子

  俺は気にしてないから」


  まぁ彼女たちの言っていることも一理ある

  



  俺の名前は出雲優

 ご近所では顔が恐いことで

 ちょっと有名だったりする




  短く尖った髪型に相手を威嚇するように

 つり上がった三白眼


  同級生と比べて二回り以上大きな

 身長190を超える長身に全身を覆う分厚い筋肉


  初対面の子どもにはだいたい

 目を合わせただけで泣かれてしまう


  この見た目のせいで

 厄介なこと(ヤクザさんからの勧誘・職務質問)

 に巻き込まれるなんてのも日常茶飯事だ


  



  そもそもこんな体つきになったのも

 そんな奴らから自分を守るために鍛えただけ


  

  しかも地元の不良達にとっては

 俺を倒すのがステータスになるようで

 度胸試し感覚で日々襲われて

 自然と戦っているうちに体の筋肉量も増えていく



  髪型に関してはただ単に癖っ毛で

 鋭い目つきは父方のじぃちゃんゆずり





  そんな外見の俺と学校一の美少女の京子が

 一緒にいたら気になるにきまってる


  俺に止められた京子は

 まだ怒りは収まってないようだが

 今すぐ説教することはやめてくれた


 「優くんは他人に優しすぎるよ・・・

  これで見た目がまともだったら

  もっと女の子にモテモテだったのに~

  あ~もったいない!」


 「俺は別にそういうのは気にしてない・・・

  それにその言い方だと

  今も誰かにモテてるみたいに聞こえるぞ」


 「モテてるよ」


 「誰に?」


  京子は俺の言葉に

 嬉しそうにニヤニヤしながら答える


 「私に」


 「・・・冗談はやめてくれよ」


  ・・・さっきの女子生徒が噂するのも

 こんなやりとりをしているせいなんだろうな




 「本気だよ、だから見た目で

  女の子を追い払ってくれるのは

  私的にはうれしいかな~なんて思ったりして」




 「そうか」




 「あっ、信じてないわね」


 「まぁな」


 「ちぇっ、まぁそのうちに

  優くんをメロメロにしてあげるから

  もうちょっと楽しみにしててね♡」



  そう言って京子は自分の控えめな胸に手を当て

 腕に寄りかかってくる



 「はいはい、楽しみにしておくよ・・・

  おい、そろそろ学校だぞ」


 「本当だ、じゃあ私は朝練があるから行くわね

  また晩ご飯の時間になったら

  優くんの家に行くから」


  学校が見えてくると同時に

 京子は朝練をするために学校へ走っていった






 「さて、晩飯は何にするかな」


  などと今晩の献立を考えながら家に帰ると

 家の前に誰かが立っているのが遠目に見えた


  不審に思った俺は

 その人物に声をかける


 「すいません、家に何か用ですか?」


 「あなたが出雲優?」


 「はい、そうですけど・・・」


  近づくとそこに立っていたのは

 かわいらしい少女だった


  燃えるような赤い髪を膝まで伸ばし

 顔は驚くほど整っている


  身長は中学生ぐらいだが凜とした

 たたずまいで幼い印象はない


  ・・・外国の人だろうか?


  そんな少女は全身泥だらけだった


  着ている服も元々は赤いのだろうが

 泥のせいで茶色くなってしまっている


 「そう、なら優

  話があるわ、中で話しましょう」


  すると少女は俺の手を取り

 家の玄関まで一直線に歩いて行く


 「ちょっと待ってくれ!

  そんな泥だらけで家に入るな!」


  そうして俺は、見知らぬ少女の服を

 洗濯機に放り込んだ後

 体の汚れを落とすために家の風呂場に案内した






  ・・・まさかその少女が

 一人で風呂に入れないとも知らずに







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