囚われの主人公
ピッ ピッ ピッ
「う、ううっ」
体中が痛い・・・
目を開けると見覚えの無い天井が見えた
どうやら俺はベットに寝ているようだ
体に目を向けるとよく分からない機械が
大量にくっついている
ここはどこだ?
「目が覚めた?」
声のした方を見ると
白衣を着た無表情な女性が
手元のモニターを見ながら
俺の顔をのぞき込んできた
「ここは?」
白衣の女性に質問すると
別の声が質問に答えた
「魔界に騎士達が作った
駐屯地ってところかしら」
「・・・お前はっっ!!」
白衣を着た女性の後ろから
顔を出した人間に見覚えがあった
「ソフィー!!」
慌てて立ち上がろうとするが
手足が動かないことに気づく
「無駄よ、悪いけど
勝手にあなたの体を検査させてもらってるわ」
「大人しくして」
改めて自分の体を見ると
手足がそれぞれ
ベットの足と手錠のようなもので繋がれていた
・・・そうか、あのあと俺は気を失ったのか
・・・ファム達や京子は無事なのか?
「俺をどうするつもりだ?」
どうしようもない状況に
俺は一旦もがくのをやめてソフィーに聞く
「どうもしないわ、けど・・・
あなたには聞きたいことがたくさんあるの
正直に答えた方があなたのためよ」
「悪いが、俺はファム達のことを
話すつもりは無い」
「それは残念ね
でも私達が聞きたいのは別のことよ」
魔族について聞かれると思っていた俺は
ソフィーの言葉を聞いて肩の力を抜く
短いつきあいだが
ファム達を売るような真似はしたくない
「早速だけど質問よ
あの時、どうしてあなたは動けたの?
魔石はきちんと発動していたのに」
「魔石?」
「とぼけないで
さぁ、答えなさい」
ソフィーが俺に詰め寄ってきたが
魔石という言葉に聞き覚えなんてない
俺は首をかしげてソフィーに言う
「何を言ってるんだ?」
「そう、あくまでしらを切るつもりね
まぁ、あなたの体をセレスが調べているから
そのうち分かるでしょう」
「セレス?」
知らない名前を聞いて俺が戸惑うと
ソフィーは黙って隣の
白衣を着た女性を指差す
「初めまして
《医療室・室長》セレス・シュタイン
あなたの名前は?」
そう言うと白衣を着た無表情な女性が
ペコリと頭を下げる
頭を下げた拍子に肩まである茶髪が
バサッと前に出た
顔は綺麗と可愛いの中間ぐらいで
絶妙なバランスを取っているが
無表情と目の下の隈のせいで
不健康な印象がある
「出雲優だ」
礼儀正しく自己紹介されたので
思わず俺も自己紹介してしまった
「イズモユウ?
珍しい名前
どこの地方の生まれ?」
「いや、それは・・・」
四天王にスカウトされて異世界から来ました
なんて言えるはずもなく俺が言いよどんでいると
廊下の方から大きな足音が聞こえてきた
「おいソフィー!!」
足音が部屋の前まで来たと思ったら
ドアが勢いよく開いていきなりイケメンが
怒鳴りながら部屋に入ってきた
「うわ、ギルバート・・・」
「嫌そうな顔すんな!!
てめえ勝手に魔族共に
喧嘩売ってんじゃねーよ!!」
「もー、うるさいわね」
突然現れたギルバートと呼ばれたイケメンは
ソフィーに怒鳴ったかと思うと
ソフィーの肩を掴んで前後に揺らし出した
「ここまで来るのに
どれだけ面倒だったと思ってやがる!!
しかも人間に負けたってどういうことだ!?」
「ギルバートの苦労なんて知らないわよ~
ただ、面白い男を《四天王》のところで
拾ってきたわよ」
ギルバートにされるがままのソフィーは
頭をガクンガクン揺らされながら
俺の方を指差す
「はぁ?面白い男?」
そう言うと今まで気づいてなかったのか
ベットに縛り付けられている俺を
眉間にしわを寄せながら見る
「なんだコイツは?
《オーガ》か?」
「私の奇襲の邪魔をした男よ
あと一応言っておくけど、その男は人間だから」
「人間!?コイツが!?」
目を見開いたギルバートが
ソフィーに振り返る
「本当」
ソフィーの隣でセレスが頷いている
自分でも普通じゃない外見を
しているのは分かっていたが
こうも驚かれると悲しくなってくる
そんなことを思っていると
俺に貼り付けられていた機械を
セレスが取り外していく
「測定終わった」
「やっと終わったのね、結果は?」
「ちょっと待って」
そうしてセレスが
手元のモニターを操作しだした
「ギルバート、その男の拘束を外してあげて
もう拘束する必要はないわ」
「さっきからお前らは何してんだ?」
俺の拘束を外しながら
ギルバートが二人に聞く
「調べてるのよ
その男にはなぜか魔石が効かなかったの」
「・・・そんなことありえるのか?」
「本当よ、だから調べてるんじゃない」
ギルバートが拘束を
外し終わったタイミングで
セレスもモニターの操作をやめた
「どう?セレス」
ソフィーにつられて俺も
セレスの手元のモニターを覗き込む
そこには訳の分からない記号と
大量の数字が並んでいた
この記号はおそらくこの世界の文字なのだろう
ファム達の屋敷でも見たことがあった
「普通じゃねーか」
何を期待していたのかギルバートが
残念そうに言う
だがセレスは
モニターを凝視したまま動かない
「どうした?」
ギルバートがセレスに聞くと
黙ってセレスはモニターの一部を指差した
そこには相変わらず訳の分からない記号と
ある数字が表示されていた
この世界でも数字の表示や意味は
変わらないようだ
そこにはこう表示されていた
3000




