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i.

 週明け、校内は音楽室に竜巻が来たという噂で持ちきりだった。室内を一目見ようと、生徒たちは技術棟に押し寄せた。危ないから、と追い払っても効き目がない。音楽室には、とうとう鍵が掛けられた。

 クラスの連中が話しているのを聞いたところでは、中はもう当日ほど荒れてはいないようだった。休日に呼び出された教師たちが、後片付けをしたのだ。割れた窓ガラスだけがそのままで、今日の夕方に交換されるということだった。土日には業者が対応できなかったのだろう。

 後処理に駆り出された様子で、あたふたと忙しげにしていた高野が声をかけてきたのは、何日か後の放課後だった。

「ちょっと、生徒指導室に来てくれ」という。その後のことを話したいらしかった。

「部屋を私物化していませんか」

 慧はいった。

「おれを指導するわけでもないのに」

 高野は二の句が継げなかった。慧のいうとおりだからだろう。

「聞きたくないなら、来なくていいんだぞ」

 むすっとしていう。

「いえ、行きますよ」

「初めから、そういえ。まったく、もう」

 小声で不平をいう高野と一緒に生徒指導室へ行く。高野は歩いている間中、ずっと文句をいっていた。

「どうしたんです。やけに不満が多いですね。疲れてるんですか」

 部屋に入り、慧はいった。

「疲れているとも。土日も音楽室の片づけで呼び出されて、全然休んでない。大変だったんだぞ。幾らモップで拭きとっても、ちっとも乾かないんだからな。何度拭いたことか」

「おれのせいですか」

「いや、もちろん違うが──そうだ、おまえは大丈夫だったのか。風邪ひかなかったか」

「今頃、何いってるんです。別に何ともありませんよ。見てわかりませんか」

 高野が溜息をつく。

「あれだけ濡れていたのに竜巻とはね。滅茶苦茶な誤魔化し方だ」

「おれがいったんじゃない。あの後、部屋を見た木村先生が、そうじゃないかっていったんだ。皆、妙だとは思ったろうが、結局それで納得した。自然のせいでなければ、人のせいだからな。一番怪しいのは、校内にいた早川ということになる。それは困ると思ったんだろう。女の子一人であれだけ部屋を荒らしたという仮説も、無理がある気はするけど、ただでも早川のことは、どうしてもっと早く対処しなかったって、校長の剣幕が怖ろしかったからなあ。当然なんだけどな。教頭や木村先生は、かなりしょげてたよ」

 どういってみようもない、という顔で高野はいう。慧の方は、学校や教師たちの内部事情には、さほど興味がなかった。

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