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v.

 なあ、と慧に話しかけてみる。どうせ暇だし、黙っても喋っても怖いのは一緒だ。

「何です」

 慧は外を見たまま答えた。

「おまえの家族って、普通の人間か」

「人の家を何だと思ってるんです。全員、普通の人間ですよ。おれも含めて」

「いや、そうだろうけどさ。その、術者じゃないのか」

「違いますよ」

 慧は高野にちらっと目を向けて、

「そんなに他の術者に会いたいですか」

「いや、会いたくない。おまえだけでもう充分だ。そうじゃなくて、その、おまえのその力のこと、両親は知ってるのか」

「それを聞いてどうするんです」

「ええと、三者面談の予備調査だ」

「学校のことと関係ないでしょう。おれの成績や態度に何か問題がありますか」

 大ありだよ、それが担任に対する態度か。思ったものの、高野は黙った。今の返事からすると両親は何も知らないのだ。不備のないところを周囲に示しているのも、どうやら意識してのことらしい。

 そういえば慧も、いつも一人だ。クラス内の誰ともほとんど話さないし、部活動にも所属していない。成績も運動能力も頭抜けているのに、クラス委員などに指名されたこともなかった。私的にも公的にも、周囲と繋がりがないのだ。自ら望んだ振る舞いではあろうが、高野と違って、そのことさえ誰も知らないのかもしれない。

 やんでいた雨がまた降り出してきた。フロントガラスに細かい水滴がつく。霧雨のようだった。

 こいつは毎日、何を考えて過ごしているのだろう、と高野は思った。

 周囲の少年たちが挙って望みそうなものを手にしていながら、それらを生かせる当たり前の世界に彼はいないのだ。親も知らない余分な力を抱え、目立たぬようひっそりと生きている。同世代の友人と子犬同士がじゃれるような気安いつきあいをすることもなければ、女の子たちと楽しく遊ぶこともない。持てる能力を周囲に示し、評価を得て自負心を満足させるようなこともなく──少年らしい楽しみが、少しもないではないか

 おまえはそれでいいのか、と高野は心の中で慧に訊いてみる。いいわけはなかった。

「おまえさ」

 といったものの、思ったままは訊けない。どうにもならないことなのもわかっていた。

「その、毎日、何して過ごしてるんだ」

「どういう意味です。それも予備調査ですか」

 高野の方を見ようともせず慧はいう。

「まあ、うん、そんなようなものだ」

「普通のことしかしてないと思いますけど。あなたは何をして過ごしてるんです」

 逆に訊かれて高野は戸惑った。確かに、とんでもなく漠然とした問いかけだった。おれは毎日、何をしてるんだろう。考えたところで、慧がいった。

「別に答えなくていいですよ。今のは質問ではありませんから」

 高野は絶句する。何がひっそり生きる少年だ。まったく、かわいくない。

 こういうやつの心中を慮ろうとする自分は愚か者なのかもしれない、と彼は思った。

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