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v.

 高野は暫く立ち尽くしていた。何て学校なんだ、と憮然として思った。術者はいる。魔物は出る。最悪だ。何というところに来てしまったんだろう。

 これからどうしたものか、と思案する。広沢慧のことである。黙って去った彼の真意を計りかねていた。考えれば考えるほど、慧は前からすべてを把握していたに違いないと思えてくる。高野のことも、高野が彼に気づいていたことも、だ。どうして無視していたのだろう。まさか見逃してくれていたのか。

 温情に満ちたその言葉とあの術者の雰囲気は、何ともそぐわなかった。何か他の理由があるのかもしれない。想像もつかないが、無論いい理由ではないだろう。何にしても、もはや慧の前で、そ知らぬふりで授業を続けるのは無理だ。とてもそんな度胸はなかった。

 高野は長い溜息をついた。どうやら、とるべき手段はひとつらしかった。つまりは広沢慧と直接話してみるしかない、ということだ。できればやりたくないが、自分のクラスの授業ができないのでは教師生活の破綻だろう。仕方ない。ここは潔く──と、高野は嫌々ながら決意した。

 慧はどう出るか。ああして高野の前に現れることで、彼もまた自身の正体を曝していることになるのだ。よもや、何のお話でしょう、とはいうまい。とりあえず話には応じるはずだ。いや、わからない。応じないかもしれないが、とにかく声をかけてみるしかないだろう。

 昼休みで騒がしい三年二組の教室を覗いた。慧はいなかった。こんなときにどこへ行ってるんだ。せっかく人が意を決したというのに。休み時間なのだから席にいなくても責められない、と知りつつ腹立たしくなる。踵を返したところで慧と出くわした。探していたくせに、ぎょっとしてしまう。冷静を装って話しかけた。

「ちょっと、いいか」

 小声でいって、廊下の隅へ移動する。慧も黙ってついてきた。

「話があるんだ。放課後、生徒指導室へ来てくれないか」

 ここで込み入った話はできない。事務的に用件だけ伝える。伏せていた目を上げ、慧が高野を見た。刃物のような光を帯びた視線だった。高野は凍りつく。断る気かと思っていると、彼は頷いた。

「わかりました」

 それだけいい、くるりと背を向けて教室に入った。

 残された高野は、その場に座り込みたい思いだった。もちろん、生徒で一杯の廊下でそんな真似はできない。やっとのことで歩き出し、職員室へと逃げ帰った。

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