ただ、愛していただけ・・・
一体、何処で壊れてしまったのだろう・・・・。
一体、何処で間違ってしまったのだろう・・・・。
俺は・・・ただ、君を・・・・・。
愛していた・・・・。
それだけの筈だけだったのに――・・・・・。
「いやっ!止めてっ・・・・透弥くんっ!!」
「クスッ・・・待ってよ、絵里奈」
部屋に響くのは絵里奈の悲鳴と狂った透弥の笑い声。
透弥の手には異様な輝きを放つ包丁。
今、絵里奈は殺されかけている。
そう、恋人である透弥に・・・・。
怖い・・・・怖い・・・殺される・・・っ!
「と、透弥くん・・・どうして・・・・?」
「お願い、止めて・・・」そう震える声でそう哀願する。
しかし、透弥は・・・・。
「なんで?俺に殺されたら永遠に絵里奈は俺のモノになれるのに・・・」
そう答える透弥の目は正気ではなく、完全に狂気に満ちている。
徐々に絵里奈と透弥の距離が狭まって行く。
このままでは本当に殺されてしまう・・・・。
「透弥くん・・・私は、透弥くんの事が好きよ・・・・でも、こんなの間違ってるわ」
「絵里奈・・・俺も絵里奈の事を愛しているよ・・・でもね、それだけじゃ駄目なんだ。
君の事が愛しくて、愛しくて堪らないんだ・・・だからね・・・」
“君の全てを俺にくれないとね”
そう言った透弥は完全に狂ってしまっている。
絵里奈は部屋を飛び出し猛スピードで走った。
此の侭では本当に透弥に殺されてしまう。
まだ死にたくない・・・・。
しかし――・・・・
「きゃぁっ!」
グイッと、透弥に腕を掴まれた。
「クスッ・・・捕まえた・・・もう逃がさないよ」
「お願い・・・ころ・・殺さないで・・・」
涙を流して透弥に訴える。
「・・・・・」
暫くの沈黙が走る。
沈黙の後、透弥は信じられない事を絵里奈に告げた。
「じゃあ、絵里奈・・・・君を監禁しても良い?」
「かん・・・きん・・・?」
「そう、監禁だよ。・・・・君を閉じ込めて、一生俺と一緒に居るんだ」
この命が奪われるか、一生涯の自由を奪われるか・・・。
選択肢は二つしかない。
しかし、絵里奈は死にたくない気持ちのほうが強いわけで・・・・。
「解ったわ・・・監禁して良いから・・・・だから、殺さないで・・・お願い」
「クスッ・・・解った、良いよ」
カランと音を立てて透弥の手から包丁が投げ捨てられた。
そして、狂気に満ちた笑みで絵里奈を抱きしめた。
「ねぇ、絵里奈」
「・・・・なに?」
「絶対に逃がさないからね?・・・・・一生、俺の傍に居てもらうよ」
「っ!!」
ビクッ、と、身体が震える。
透弥の狂気が・・・・抱きしめられる腕から伝わってくる。
「絵里奈、愛してるよ・・・・」
狂気に満ちた声で囁かれる愛の言葉と口付け。
そして、絵里奈は本当に透弥に監禁されてしまった。
外に出ることも、友人や家族とも連絡を取る事など勿論許されない。
唯一許される事は、狂った透弥と共に過ごす空間に居る・・・・ただ、それだけ。
今、思えばあの時死を選び、透弥に殺された方が良かったかもしれない。
そうすれば、狂った透弥を見続けないで済んだかもしれないのに――・・・・。
時にそう思うけど、時は既に遅し・・・・。
“愛してる”
この言葉は時に狂気に塗れた残酷な運命を誘う・・・・。
<END>
狂愛などは二次創作の方で何度か手がけた事があるのですが、
本格的な狂愛をオリジナルでは手がけた事が無かったので、
個人的な感想としては、「遂にやってしまった・・・・」という感じです・・・はい。
実の事、此方の小説は後日掲載予定の連載小説の前触れの様なものだったりします。
狂愛だとかダークシリアスだとかそんなネタばっかり書いていて本当に大丈夫だろうかと、
今更ながらに心配ですが、どうか、温かい目で見守ってやって頂ければ幸いです(^^;)
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