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『愛してる』

作者: ミオ
掲載日:2026/08/02

愛なんて本当は知らない。


「私はあの人を愛してる。」


彼女は何度もそう口にした。


彼が友達と遊びに行けば不機嫌になり、自分を優先しないと責めた。


別れ話になれば泣き叫び、

「私を捨てるなんてひどい」と言った。


新しい恋人ができたと聞けば、

「まだ私を忘れられないはず」と思い込んだ。


彼女は、それを全部「愛」だと信じていた。


そう教わってきたわけでもない。


ただ、愛されたことも、誰かを本当に愛したこともなかった。


愛を知らない人は、

愛に名前を付けられない。


だから、寂しさを「愛」と名付けた。


不安を「愛」と名付けた。


支配したい気持ちを「愛」と名付けた。


失いたくない執着に「愛」と名付けた。



ある日、彼女は元恋人に言われた。


「君が欲しかったのは、俺じゃない。君を安心させてくれる誰かだった。」


その言葉に腹を立てた。


「何も分かってない。」


そう吐き捨てて、その場を去った。




数か月後、


彼女には新しい恋人がいた。


また「運命」だと言った。


また「愛してる」と言った。


相手が思い通りにならなくなると、同じように責め始めた。


歴史は繰り返される。


本人だけが、その理由に気付かない。



本当の愛とは、相手を自分の思い通りにすることではない。


相手がいつも笑顔でいることを願い、

その幸せが自分の思い通りでなくても、受け止める気持ちだ。


彼女は、その景色を一度も見たことはない。


それを注がれたこともない。


だから今でも、

自分は誰よりも愛情深い人間だと、

彼女は信じ続けている。


愛を知らないまま。


自分で名付けた何かを愛だと言って、彼女はこれからも語り続ける。

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