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06裁判のち結果。まあ余裕で採決は決まりきってるからね。乾杯

 彼らは怒りでこちらのことを忘れている。

 いや、気にしているけれど、今はそんな場合じゃないと思っているのだろう。どっちでもいいけど。彼らの親子喧嘩をみながらも本当に何をしに来たのだろうかと首を傾げて、ずっと見続けること数分。


「すいません。話の続きをさせてもらえますか」


 あちらの親たちがこちらへ窺う。どうぞと手で示すと、のっしりした紙の入れ物をこちらに寄越す。思わず鼻で笑う。示談ってことか。バカにしてくる。両親も怒りで目を尖らせた。


「お詫びの、気持ちです」


 相手側の言葉にさらに怒りのメーターが上がる。燃えそう。


「裁判はやめませんからね!」


 母が興奮した様子で言い切る。汚らしいと言わんばかりに、お金と向こう側をにらみつけると相手は怯えた顔をする。びくっとなった。

 危機が迫っている顔なんて他人だからこそ怖い。相手を怒らせる理由があるから、さらに怖いのだ。相手は違いますと震えた手でそれをテーブルに置く。


「これは、息子と縁をつないだ私たちの気持ちです。不誠実な我が子と番だなんて、申し訳なくて堪りません」


 必死に謝るけど。


「こちらのセリフです」


「裁判は……覚悟しております」


 彼らが覚悟してもね。


「言っておきますが、証拠は揃えていますのでそちらに勝ち目はありませんよ」


「はい。わかっております」


 向こうが悲しげな顔をしようと決してやらない選択肢はない。後ろ指を指される生活になろうと、子どもの育て方を間違えたのだ。


 こちらは一つも悪くない。正直来ないで欲しかった。仮にも一度だけ、義理であれ家族になると思っていた人たち。

 少しでも思った彼らの人間臭さを垣間見るのは嫌だから。こちらは心を鬼にして挑みたい。


 お金を置いたまま彼らは帰っていく。とりあえず手をつけないで弁護士に預けることにした。受け取ったと言い切られて隙を与えないように。


 ベスベランはこちらを睨みつけていて、反省なんてしてなかった。彼らは前を向いていなかったので顔を見てなかったから気づかなかった。

 けれど、こちらの両親とフレージュが睨みつけると、慌てて前を向いて帰る。怖いならやらなければよかったのに臆病者だ。


 そこからはベスベランたちの国の弁護士たちと連携して裁判は始まったけれど即終結した。呆気なく。動かしようのない映像という証拠があったから。映像と音声を見たベスベランの顔と言ったら、まるで幽霊を見たように青白くて怯えていた。


 自分の番がとんでもないものを隠し持っていたことに唖然としていた。溜飲が下がる。

 フッと笑って彼へお別れの顔色を渡すと、相手は「なんで教えてくれなかったんだ!?」と責任転嫁してきて思わず裁判所全体が白けた。

 言うにしても恋人と付き合い続けるために、真の番の女を隠れ蓑にするクズへ教えるわけがないと、皆が思っているに違いない。


「判決を言い渡す。フレージュ殿の訴えによりベスベラン氏を有罪とする」


「あああ!そんなっ!そんなのって!」


「ベスベラン!話が違うじゃない!私が永遠に贅沢できるって言ってたじゃない!嘘つきよあなたは!」


 叫ぶのは、ベスベランの秘密の恋人女だ。彼女の両親へも今回の顛末を伝えると涙ながらに謝ってきたが、合わせて恋人女も訴えたので高額の慰謝料の支払いが決まった。

 嘘つきなのはこちらの扱いを見たら即わかりそうなものだけど?諭した女が嘘つきにさせたのに、騙されたと喚く意味ね。


 悪質だ。ツガイと知っていたのに二人して番婚詐欺の共犯として裁かれることになった。初顔合わせの時にのこのこ、こちらへ顔を見に来なければ視認せずにあまり気にしなかったかもしれない。


 これ見よがしに見にきて舐めるように見て、マウントをしに来た方が悪い。あんなの、婚約者がいるとわかっていてバカにしにきたと、ありありとわかるからね。

 裁判に勝って、両親と幼馴染であるマギノアと祝杯をあげる。乾杯して夜遅くまで笑い合う。


「おめでとう」


「ありがとう。もう何回目?」


 ふふ、と笑う。バルコニーに出て、興奮に冷めない体温を冷ましているとマギノアが来る。


「よかったな」


「うん」


 婚約も無事、白紙になった。破綻したようなものだけど、精神的苦痛がたんまりお金に変換されて満足だ。


「あの間抜けな顔、傑作だ」


「映像裁判は新聞に載るらしいよ」


 今回の裁判は遠いけれどこの国にも伝わり大々的で画期的だと、かなり注目を浴びている。いつかインタビューとか取材とか来てもおかしくない


「好きになってたのか、あいつのこと」


「それ、今聞く?」


「今だから聞ける」


 頬を指で摩りながらうーんと唸る。まさか、聞かれるとはね。悩むくらい心になにもない。


「番って言われたから好きになろうとは思ってた。まだなる前」


「そうか、よかった」


「それは言えてる」


 マギノアは嬉しそうに笑うとバルコニーの手すりへ手を乗せた。絵になる。


「おれはお前のことを結構気に入ってるからな」


「私も」


 お互い笑い合って、何度目かの乾杯の音をらかちんとさせた。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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