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05番の両親が謝りにきて男の顔面がもうボッコボコ

 彼も連絡相手として登録されており、いつでも連絡できるから何ヶ月ぶりというわけではない。直接でも長距離転移が可能なので、会いにいけるし。

 たまに泊まったときに会いに行っていたし、両親も会っていたから久々ではないものの。あんなことがあったのでずっと会ってなかった気分になる。


「ぐったりした。まさか恋人がいたなんて。普通番に恋人いるなんて思わないよね?それどころか婚約するまでがんじがらめにしてくる。私の番がクズだった不運だよねえ」


「そうね!やってしまいなさいっ」


 母が拳を作り頷く。


「会話音声はこれよね」


 父も頷いている。裁判で完全勝利が確定できる音声が入手できた。


「うん」


 中身を見て言われた内容を確認する。


「ばっちしだ。勝てる勝てる楽勝」


「複製しておけよ」


 複製を忘れずに行う。ばら撒いたってこっちは構わないんだけどね〜。両親たちと今後のことを詰めていく。


「裁判には勝てるけど……」


「そうねぇ。勝っても恋人の方になんのダメージもいかないかもしれない」


 母の発言に皆ハッとなる。確かに彼と両親は非難轟々になるだろうけど。恋人の女は逃げようと思ったら逃げられる。逃げられないように包囲網を敷くしかない。


 それと、映像がないからこちらだけ作る必要がある。偽造になるのかもしれないけれど、本当にあったことなので偽造とまではいかないグレー加減。

 しかし、あるとないのとでは見せる相手に多大なる視覚的なものがあまりにも違いすぎる。というわけで映像を作り上げてそれを家族に向けて上映。


「できた」


 音声は本物をアテレコさせているので偽りなし。訴える男も撮られていた、またはフレージュがなにかしたと思うだろう。この世界にはまだ、映像とか映像技術とか偽造の有無の概念がないからね。

 相手は完全に敗北心を感じる。裁判の勝訴は確実だ。笑みを浮かべて家族へ顔を向ける。当然、マギノアもここにいて共に映像を鑑賞していた。


「どう?」


 映像を見終わって感想を貰う。父も母も音声だけでも怒っていたが、映像となるとさらに自己投影が強くなるので怒りで震えている。


「とんでもない男だ」


「ええ。声を聞いた時はなにをふざけているのと思っていたのだけれどっ。本当に私の娘に。許せないわ」


 マギノアに声をかけると「類を見ないほどのバカだな」と言い切る。それは裁判を見た人全員言いたくなる言葉になるよ。


 裁判の用意をして二ヶ月後、裁判が開かれる前にベスベランの両親たちが、我が家にやってきた。


「申し訳ございませんでした!!」


 側には顔面をボコボコにされたベスベランがいて、なにか喋っているのかモゴモゴ言うが口の中も切れているのか、話せないっぽい。うちの親たちが許すと言う言葉を言わないのは普通だろう。フレージュだって口が裂けても言わない。


「こいつから聞きまして!ことを知ったのはっ、半月前なのですっ」


「へえ。そうですか」


 向こうの義理父の中身に母は冷えた声音で返答する。その冷めたパンより冷たい声の具合に、義理の母も息を呑んで俯く。ハンカチで目元を拭っていて泣いているみたい。泣きたいのはフレージュだ。


「なんのご用ですか?」


 泣こうが謝ろうが裁判はしますが何か?


「その、謝りにきました」


「ああ、はい。では、お帰りはあちらです」


 フレージュが我先に相手を煽る。もう義理の父にも母にもなる予定がないから、気を遣う必要もない。


「そ、それは。謝らせていただきたい」


「ええ。本当にごめんなさい。すみませんでした。知らなかったのです。息子に、その」


 ベスベランの母親の言葉を引き継ぐ。


「親に婚約と結婚生活を偽装させるためだけに番を利用して恋人と付き合ったまま自分のために犠牲になってくれ。婚約のサインをしたから破棄したら傷物になってこの先、誰にも嫁げなくなるんだから……言うことを聞け!と言われたこと……ですか?」


「へ」


「は?」


「むぐぐっ、がが」


 彼の両親で最後はベスベランなのだが、やはり口を開いても滑舌が悪くて聞き取れない。都合がいい。話し合いに嘘つきで犯罪者の発言はいらないから。

 男がなにか言いたげにこちらへ言ったり、自らの親に言っていたりするけれど。


「黙れっ」


「喋らないでっ。穢らわしいっ」


「むぁ!?」


 実の親から睨まれて責められていた。フレージュの親だって、彼と同じことをしたら同じように対応してくる。

 娘だからと無闇に庇おうとしないだろう。無実ならばまだしも、彼らのことだからそれなりのツテを使い調べたから、あんなに激怒しているのだろう。


 ベスベランも向こうや馬車の中で相当詰られ続けたのか、かなり心が疲弊しているみたい。共に半月以上共に居たとなれば浮き目がないとわかりきっているらしい。

 なんの証拠もないからと言い訳や口八丁でかわせると思っていたようにも思える。しかし、現に恋人は彼の住む屋敷にいたので、義理の両親は見てしまったのかもしれない。


「あ、あなたから手紙を貰って……先ぶれを出さずに私たちはこの子の家に……行きました」


「無事届いたようでよかったです」


「き、君のせいでっ……ぐっ!」


 ベスベランが怒鳴ろうとしたが、無言で義理の父から睨まれて胸ぐらを掴まれると、浮いた腰を叩きつけるように座らされる。


「黙りなさい馬鹿者」


「す、すみません」


「ずっと黙ってろ」


「は、はい」


「本当に恥ずかしい。二度と外に出られないわよ!」


「あ、ご、ごめんなさい」


 こうやって、責められながらここまで来たんだなとすぐにわかるほど、分かりやすい。

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