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第32話『ダサいね、今の』

 俺は体を揺らされ、目を覚ました。


「っもう交代か……」


 起き上がりながらそうつぶやき、俺を起こした人物と会話をしてテントの外へ出る。


「おはようキバ」


「頑張りましょう、キバ君」


「ずいぶん早いおはようだけどな……」


 隣のテントから出てきたサキとシズクと一緒に焚き火の近くに座る。

 他の冒険者たちも別の焚き火で各方向を見張っていて、抜け目はない。


 眠い目をこすりながら三人で適当に会話し、特に何事もなく夜が明けた。




「昨日と同じように竜車に乗れ。今日の夕方前にはネオン街へ到着する予定だ」


 そう指示され、俺たちは同じ竜車に同じメンバーで乗り込んだ。

 俺達の乗る竜車を引く緑色の竜は昨日の疲れなどもろともせず、元気に歩みを進めている。


「おいE+級のガキ」


「……はい?」


 唐突にそう呼ばれたので間抜けな声が出た。

 見下されてる……。

 無能力者時代に散々聞いた声色だ。


「今回の任務、知ってはいるだろうがランクの高いやつらも呼ばれるような任務だ。足引っ張るような真似すんじゃねェぞ?」


 そこまで言ったところで、シズクが止めに入った。


「リョウ君、やめて? 私たち同じギルドの仲間じゃない。私が昨日キバ君と仲良く話してたからって敵視しないでちょうだい」


 そう言って睨みつけた。


「……うっ、悪かった。キバ」


「え?いや……別にいいですけど」


 リョウはシズクに好意を抱いていた、という意味だろう。

 全く気づかなかったが……そういえばこの二人はギルド無所属時代から一緒にいたんだっけか。


「ダサいね、今の」


 サキが俺に耳打ちしてきたので、軽く頭にチョップしておいた。


 この件で別に険悪になることもなく、なんならより一層和んだ空気になり、俺たちは会話を弾ませながら竜車に揺られた。


ーーーーーーーーーー

「くぁあ〜!」


 竜車から降りて、俺は深く息を吐いてのびをした。

 ずっと座りっぱなしはさすがにきつい。

 他のみんなも、各々で疲れを紛らわすようにストレッチを始めたりしていた。


「ここが目的地、ネオン街だ。夕暮れ前とは言え、この雨雲のせいで暗い。足元に気をつけながらついてこい」


 今までも仕切っていたリーダー的存在が先頭を歩き、俺たちはそれについていく。


「ピカピカしてる……!」


 街に入るとサキがそういった。

 この暗さを照らすように、目に優しくなさそうなネオンの光が街を照らしている。

 グランベリアとは別の方向に発達しているのか、それともグランベリアがさらに発達すればこうなるのか。

 この街の雰囲気がこの街の発達具合を俺達に伝えている。


 ――ただ。

 この街の発達具合、その規模。

 これに見合うほど、人の騒がしさはない。

 静けさを隠すように、ネオンの光が街を照らしているような気がした。


 十分ほど歩いた頃、より一層でかい建物の前に到着した。


「ここは任務中、俺たちが宿泊する場所だ。」


 主張の激しい看板には『ホテルポップ』という文字が飾られている。

 作られたばかりであることが伝わる壁の綺麗さに、自動で開くガラス製のドアが面白い。


「ようこそホテルポップへ」


 俺達は受付の男性に迎えられ、人数を伝え部屋番号などを聞かされて奥へと入った。


「702……ここか」


 渡された鍵とそれに取り付けられた番号から、俺は702号室へ向かった。

 俺は鍵を開け、扉を開ける前にふと横を見る。

 茶髪のロングヘアーがなびいて、701号室の部屋の奥へ入っていくところだった。


「……俺も入るか」


 少し前に俺の修行を手伝ってくれたハナさんを思い出す。

 感謝しないとな。

 彼女がいなければ俺はこの場所に立っていないのだから。


 扉を開けて目に飛び込んできたのは、あまりに整理された内装だった。


 ライさんと長い間過ごしていたというのもあるだろう。

 俺も散らかしぐせがついてしまうところだった……いや、自分で気づいていないだけでもうついているのかもしれないが。


 こんなに整理された部屋は久しぶりだ。

 いや、アイシャさんの家、あれよりも綺麗かもしれない。


 俺は濡れた上着を玄関のハンガーラックにかけ、ベッドに腰掛ける。


「うわっ! ふかふかだ!」


 こんなふかふかなベッドは初めてだ。

 もしやここ、最上級のホテルじゃないのか?


 夜も朝も、このホテルの食堂で飯を食うらしく、俺は予定時刻まで待ち、二階に降りることにした。


 扉を開けると隣の部屋の人も出てきたようで、鉢合わせることとなった。


「……お?」


「す、すみません。邪魔……ですよね」


 そう言って隅の方に体を寄せるその女子の手をつかむ。

 どこか嬉しそうな、それでいて暗い顔をしたその女子の手を。


「ひぇっ!」


「すみません。俺です」


 俺はその目をまっすぐ見て、そう告げた。

 隣の部屋の女子、ハナさんは今やっと俺の存在に気づき、目を見開いた。


「キバ君……?」


 徐々に顔が赤くなっていくハナさんを見て、俺は掴んでいた手を離していないことに気づく。


「あっ! す、すいません! いきなり触っちゃって……!」


「いいんです……。 ただ、知り合いがいたことに……安心しただけです」


 ハナさんは自分の胸のあたりに手を持っていって、つぶやいた。


「行きましょう。そろそろ夕食です」


「そう、ですね……!」


 久々の再会であの時よりもさらにぎこちない俺とハナさんは一緒に下へと向かった。



 食堂の扉を開けると、すでに待っていた冒険者たちに一瞬見られる。


「誰よその女!」


「それやめろよ!」


 レイラがふざけたノリにクロムがツッコむのを見て、俺は笑ってしまう。

 隣のハナさんは苦笑いしていた。

 レイラがふざけたとき、少し体がはねたような気もするな。


「初対面の人にその発言はやめてやってくれ……」


「わるいわるい!」


 ちっとも思ってなさそうだな。


「で、どなたなんだ?」


 俺をハナさんから少し遠ざけたあと、カラスがそう聞いてきた。


「俺の恩人だ。感謝してもしきれないくらいの……な」


 そう答えると、「そうか」と短く返して、サキ達と同じ席に着いた。


「あの……一緒に食べますか?」


 ハナさんに聞いてみたが、少し迷ったあと首を振った。


「私は良いです。……あまり盛り上がれないと思うので」


「そう、ですか……」


 俺は一人こちらに背を向けたハナさんの後ろ姿を数秒眺めて、カラスが座るその隣へと向かった。


「いただきます」


 おかわり自由のこの食堂は俺達冒険者の声で賑わっていて、とても楽しい雰囲気だった。


 俺は竜車で同じだったメンバーと笑い合いながら飯を食べた。

 一人寂しく飯を食べるハナさんを見たが、俺にはどうすることもできなかった。


ーーーーーーーーーー

 部屋に戻ってすぐ、俺はベッドに顔を埋めた。


「ふぅう……!」


 腹いっぱいだ。

 おかわり自由、追加料金が発生することはない。

 こんなに満腹になったの、久々かもな。

 案外自炊のときはこんなにたらふく食わないものだし。


 今日はもう風呂、歯磨いて寝るだけか。


 数分その姿勢を崩さず休んだあと、俺は服を脱いで風呂へと向かった。


「うおぉ……でけぇ……」


 ホテルの一室なのにこんなにでかい風呂ついてていいのか。

 各部屋にこれがあるなんてどんだけ高級ホテルなんだよ……?


 存分にこの広い風呂を楽しむとしよう。




 一時間を少し過ぎるくらいは風呂につかった。

 普段の俺からすれば長過ぎるかもしれない。

 ……でも気持ち良かったので問題ナシ!


 俺は気持ちを切り替える。

 明日から、この雨、この街について調査が始まる。それが済んだらその解決に動くことになる。


 本来ならもっとあとに行うはずだった小隊配属戦をこの任務に変更し、さらに今のうちから任務を開始している。

 どれだけここに長居することになるのか分からないが、そんなに難しいものじゃないといいな。


ーーーーーーーーーー

 朝、目を覚ます。

 遅刻することはなく、予定通りの時間だ。


「っし! 張り切って行こう!」


 俺は眠気を覚ますため自分の頬を叩く。

 ネオン街調査任務が幕を開けた。

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