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第28話『二次試験 後編』

「こんなに早く漁夫が来るなんて……。聞いてないんだけど」


 サキがそう呟いた。

 俺たちの方針的には、このあとは合格のため生存の立ち回りをする予定だった。

 だけど、こっちに迫るあいつは俺たちの戦闘が終わって一分もしないうちにこちらへ到着した。


 この男が一度戦闘に勝利してからこっちに向かってきたとすると、俺たちの戦闘が終わる前にはもう決着をつけ、さらにこっちに移動してくる必要がある。


「あいつ……相当強いんじゃねえか……?」


 カラスも同じことに気づいていたようで、冷や汗を垂らす。

 相手は一人。

 それでも俺達はすぐに突っ込むことはしなかった。


「そんな警戒すんなって! 俺はただ遊びに来ただけなんだから――」


 そんなことを言いながら、男は手をあげた。


「さ!」


 と同時に、俺たちのところに落雷が落ちるように地面が爆ぜた。


「はぁ!?」


 さっきは何か飛んできて爆ぜた。

 今は何の予兆もなく、俺たちの足元が爆ぜた。


「予備動作とかないわけ!? こんなんじゃ避けれないじゃん!」


 サキが怒っているが……意味ないと思うぞ。


 カラスはなにやら地面にしゃがみ込み、目をつむっている。

 意識はあるようなので、俺は二人に向かって、一言言い残す。


「援護頼むぞ!」


 地面を蹴った。

 俺が能力が解除されずに扱える最大出力……!


「うわ!」


 男もこの速度に初見じゃ対応しきれず、俺の拳を素直に受け取った。

 鈍い音とともにその男が5mほど吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直した。


「すげぇ威力……! お前、強いなぁ!」


 今の一撃を受けてなお、男は笑い、こちらへ向かってくる。


「爆破の能力じゃねぇのか……!?」


「いいや? それで合ってるよ!」


 俺の腹に向けた一撃を、手で受けとめる。


「がっ……」


 全身が痺れる。

 俺の動きが止まる。


(もしかして……物理攻撃に爆破を乗せたのか!?)


 手から徐々に身体全体にしびれが広がった。


「かふっ……。こりゃあ、お前の攻撃受けるわけには行かねぇな」


「さすがに無謀すぎるね!」


 男はそう言って地面に一本、指を向ける。


 その瞬間俺の足元は爆破で崩れ、俺は空中に浮くことになった。


「その筋力も空中じゃ何もできないでしょ!」


「やばいっ!?」


 もう一撃、俺に拳を撃ち込んだ。

 俺はまた体が痺れる感覚に襲われる。


「かはっ……」


「このままお前を倒して……! ん?」


 その男の地面に影の池が出来上がると同時に、弾丸が飛んでくる。


「ぐっ!」


 男は自らの爆破から守るためかサングラスのようなものをかけていて、弾丸はそれに防がれた。


「随分硬いサングラスだな!」


 反撃開始だ。

 地面を蹴り、思いっきり距離を詰める。

 さっきの弾丸を警戒していた男は反応に遅れ、俺の攻撃をもろに受けることとなる。


「ゲホッ!」


 男の体が宙を舞う。


「キバ! 右に飛べ!!」


 後ろからカラスの声が響く。

 俺は言う通りに右に飛んだ。

 俺が立っていた場所は爆破によって崩れ、地面は原型を保っていなかった。


「次、後ろに下がれ!」


 また俺はカラスの言う通り動き、今度も立っていた場所が崩れ去る。


 この爆破による土煙で覆われた戦場を、三発の弾丸が駆ける。

 男の苦痛の声が聞こえる。


「いってぇ!?」


「いえーい、命中」


 サキは普段のテンションからは考えられないほど、冷静にそう言った。


 チームの方針に沿い、その男を煙の中で追うのをやめ、仲間の方へと下がる。


「ナイス援護。少し遅かったけどな」


「スコープ変えてたの!」


「俺はここら一帯の影に魔力を流してた」


 サキが煙の中でもあいつに弾丸を当てれたのは、その特殊なスコープの位置特定によるもの。

 カラスが爆破の位置を当てれたのは、影に流れた魔力によって地面の変化を先読みしたから。


 ライさんの能力でいう感知のような使い方だ。

 さてはこいつ頭いいな……?


「キバも今ので疲労たまってるし、なるべく戦いたくないね……。なんならこのあとくるやつらからは全力で逃げるでもいいかも!」


「同感だ。これ以上無理をするのは脱落の危険性を高める」


 サキとカラスの心配により、俺も少し自分の状態を見つめ直す。


「出血は少ないけど……確かに少し体痺れてるしそれがありがたい」


 先程の爆破男との戦闘の余韻で俺の体は少し痺れたまま。

 なるべくこの状態で戦闘はしたくない。


 安全に行くときは安全に、戦闘のときはしっかり戦闘に切り替える。

 安定していて良いチームだ……。


ーーーライ視点ーーー


「今回の受験者、強い奴と弱いやつの差が激しいな」


 隣に座る試験官がそう言った。

 誰か分からないので黙っておく。


「特にあの白髪の――」


(キバの話題か!?)


「女。氷を使うその女と、炎を使うあの男は飛び抜けて強いな」


(なーんだ、キバじゃないんかい)


 俺はさっきからキバの行動をみている。

 戦闘の際の判断も、立ち回りも申し分ない。

 十分俺が教えたことをできている。


「ライさん! あれって……あのキバですか!?」


 後ろにいたムキムキの金短髪男が控えめに話しかけてくる。

 そう、ザンギである。


「そうだよ。どう? ザンギから見て彼は」


「どうも何も――」


 そう言って、ザンギは開いた口をふさぎ、ニヤニヤと笑う。


「あの時より随分強くなりましたね……! 俺の教えがあったからですかね?」


 自己肯定感強いなぁ……。


「そうだね。ザンギ、それからハナのおかげだよ」


 ハナはこの場にいない。

 ぜひキバの活躍をみてほしいところだ。


「ありゃあ……、俺を抜くのも近いかもしれませんね」


 ザンギの能力は身体強化系。

 そこはキバと同じだが、一つ違う点がある。


 ザンギの能力は自分の基礎身体能力と筋肉量、筋力を基準にして強化するというもの。

 キバはそれに加え、魔力量と能力を使う際の魔力の密度という要素でも強化が加わる。


 その二人の成長速度といえば、明らかにキバのほうが速いだろう。圧倒的とまでは行かなくても、その差は開いている。


「まぁ、これからのキバ次第だね」


 ザンギの心境を加味して、そうカバーしておいた。


(……さて、あの人の勘は当たるかな……?)


 俺は自分の口を手で覆い、ひっそりと口角を上げた。


ーーーキバ視点ーーー


 あれから戦闘はしていない。

 遠くの方で出来上がっては消える氷の塊や、時々このフィールドを赤く照らす炎を観ながら、俺たちは落ち着いて移動していた。


「警戒してないとすぐ敵来そうで怖いね」


「そうだな」


「俺がこの辺索敵してることに感謝しろよ」


 俺とサキがそんな会話をしていると、カラスがキレ芸を披露した。


「……っぷ! あはは!」


「やっとこういう場面でも会話できたな、カラス」


 笑う俺たちを見て、カラスは若干微笑み、すぐに無表情に戻った。


「……! 来るぞ……! 俺たちの右斜め後ろ、二人だ!!」


 こんな笑ってしまう会話はすぐに終わりを迎え、俺たちはその敵から逃げる。


 ヒュン!ガッ!


「ぐあっ……!」


 カラスに直撃したのは猛スピードで飛んできていた石の塊。


「俺は影の中で身を潜める。何とか逃げてくれ! 必要なら援護もする!」


 そう言ってカラスは影へと沈んでいった。


 先ほどまで遠かった気配はものすごい勢いで迫ってくる。

 

(移動速くないか!?)


 そう思った瞬間、またしても石の雨が降り注ぐ。


「きゃ!!」


 サキが悲鳴を上げる。

 当たるスレスレで避けたようだった。


(サキは速い移動手段がない。なら……)


「少し我慢してろ! サキ!」


「えっ? うん……。 って! ちょっとぉ!?」


 俺は覇力を発動しサキを抱きかかえる。


(逃げるの優先。相手もなんか移動速いし、ここは最大出力!)


「掴まってろよ!」


 俺は出力を上げ、地面を蹴る。


「きゃああぁ!?」


 俺の腕の中に収まるサキの、高い悲鳴が戦場に響き渡った。


ーーーーーーーーーー

「今をもって二次試験を終了いたします! 先ほどと同じように行動してください!」


 あの石の雨を降らせるやつらから逃げることに成功した俺たちは、その後は何も起きることなく無事にこの試験を突破した。


「石飛んできたときは焦ったな!」


「そうだな。あのまま脱落してもおかしくなかった。俺がいたおかげだ」


 自己肯定感高いな……こんなキャラだったのか。こいつ。


 今までなら一番騒がしくしていたサキがあまり喋らない。

 あの石の雨で怪我でもしたか?


「サキ?」


「えっ!? あぁ! うん! そうだね……はは……!」


 サキはぎこちない笑顔を浮かべた。

 その薄紅色の瞳はこちらを見てはそらしてを繰り返し、明らかに本調子ではない様子。

 何が「そうだね」なんだか。

 怪我したならそう言えばいいのに。


 俺とカラスはそれに触れることなく、またさっきと同じ道をたどり医務室へと到着した。


「37班、キバ君、サキちゃん、カラス君……ね。全員軽傷っと」


 一次試験のときも現れたヒーラーの美少女は、そう言ってまた一瞬で傷を治していった。


「三次試験も頑張ってねー」


 みんなに言っているであろうその言葉を残して。


 さっきの試験を振り返りながら、俺たちは班の部屋へと着いた。

 治療も済んだし、あとは三次試験の放送を待つだけだ。


 それにしても、サキが本当に喋らない。

 相槌はうつものの、自分から喋りだすことがそんなになくなってしまった。

 頬から耳にかけて、全体的に赤くなっている。


「サキ、大丈夫か? 顔色悪――」


「キバ、サキは少し熱っぽいんだ。やめてやれ」


「そうなの……か……。無理すんなよ」


「……うん」


 サキはこくりと頷き、机に顔を突っ伏した。

 カラスからなにやら呆れたような目線が飛んでくる。


「……なんだよ」


「いやぁ、……女の子の不調にも気づけないなんて、キバもまだまだだな、と思ってな」


「なんだとぉ?」


 そんな他愛もない会話をして、俺たちは三次試験開始の合図を待った。

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