第27話『二次試験 前編』
一次試験が終了したあと、俺たちは医務室へ戻った。
ちなみに、会場から戻る時も転移を使って戻った。
いきなり景色がガラッと変わる体験は2回目になっても面白いものだ。
「キバ君結構怪我したね!」
「サキもカラスも、無傷な方がおかしいんだよ」
俺は立場上、この二人にE+級と思われたままだ。
二人の顔を見ると、怪我の具合よりも俺が一次試験を突破したことに驚いているかのようだった。
すると俺のところへ、見知らぬ女子がやってくる。
「37班、キバ君ね……。じゃあ、治療するね」
そう言って俺の怪我の部分へ手をかざすと、一瞬にして傷が消える。
チルドの治療は少しずつ治ってく感じだったけど、この人のは一瞬だった。
「二次試験も頑張ってねー」
治療を終え、みんなに言っているであろう台詞を言って次の怪我人のもとへ歩いていった。
「美少女だねぇ……」
サキがそう言ったので同意しておく。
確かにあの人は顔が整っていて可愛かった。
「……早く部屋戻るぞ」
もう歩き出していたカラスに急かされたので、俺とサキは慌ててその背中を追った。
後ろからその背中を見ていて思う。
……カラス身長高いな。
180cmぐらいありそうだ。
俺の身長は前測ったときは173cmだったか。
心の余裕ができてどうでもいいことを考えながら、俺たちは部屋へと戻るのだった。
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「それにしても、運が良かったな。キバ」
カラスにそう言われた。
今回の試験内容から考えて、あまり力のない冒険者は落とされるようなものだったからだ。
ゴブリンなどの低級魔物を狩れるのは最初の何も手がつけられていない状態だけ。
力のない冒険者は強い冒険者たちの速さに追いつけず、結局ゴブリンは狩られていて強い魔物と戦う、ってな感じになってしまう。
この一次試験によって、224班あったのが今は72班まで減ってしまった。
きっと生き残った班の中には、人数が欠けたものもあるだろう。
そう考えると随分人が減ったな……。
ところで、俺が弱いと思われたままなのは……チームの方針に関わるほど重要なものかもしれない。
俺が強いというだけで、次の試験で目指すチームの動き方も変わってくるだろうからな。
「俺……、更新受けてないだけで多分、E+級っていうほど弱くないんだ」
そう、打ち明けた。
カラスは分からない、といった顔をし、サキはニコニコこちらを見ている。
あまり喋らなかったカラスが喋り始めたから、それを崩さないようにしているのだろうか。
「……それなら、魔物を倒した功績とかでランクの更新がされるだろう?」
「あぁ、俺一ヶ月ぐらい山に籠もってて、任務ろくに受けてないから」
新米冒険者としては珍しいその行動に理解が追いつかないカラスは頭を押さえた。
「次の試験、お前の実力を見せてもらうぞ。俺はそこで判断する」
そう言って、またカラスは口を閉じた。
「もうちょっと喋っててもいいんじゃないかな……?」
サキがカラスにそう訴えるが、黙ったままだ。
「無理してそういうの強要しちゃうと、更にチームの雰囲気悪くなっちまうぞ」
俺はもとからチームの雰囲気が微妙だ、というような言い方でカラスへの皮肉も含めながら、サキにそう注意した。
「キバ君は優しいね!」
笑顔を崩さずそういうので、俺は俺の中でなんとなく気持ち悪さを感じていた事に触れる。
「サキ、お前何歳だ?」
「ここで年齢聞くの? ……いやまぁ、15歳だけど」
俺と同じくらいだと思ってたが、まさか同じ年齢とは。
「俺も15歳だ。キバ君ってのやめてくれ。なんか気持ち悪い」
初対面の相手にそう言われるのも、優しそうな相手にそう言われるのも別に違和感はない。
俺もこの部屋に入ってきたときは敬語だったしな。
だけどなんか……。サキが君付けってのが……なんか、うーん……。
「分かった……。キバ、ね!」
一瞬笑顔を崩したが、すぐにまたいつもの顔に戻った。
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「すべての受験者は、先ほどと同じように移動してください」
俺たち(主に俺とサキ)が話していると、放送が入った。
「四分割されたうちの、あと一つのとこだな」
俺は一次試験前の女性の説明を思い出しながら、部屋を出る。
「二次試験からはチームで行動、なんだよね! 楽しみだなぁ!」
俺がE+級よりも強いというのを聞いて、D+級のサキが勝手に期待していた。
俺が知ってる強い冒険者はS級のライさんとD級のキラトさん。ザンギさんとハナさんもいるが、長い時間過ごしてきて俺の基準となっているのはあの二人だ。
D級のキラトさんよりも、今の俺が強いと思えない。
D-級ぐらいだろうか……?
あってもD級下位ぐらいだろうな。
「じゃあ、飛ばすよ」
また同じような言葉を聞いて、俺たちはあの会場の門の下へと転移した。
「何回見てもすごいねぇ!」
一番人生楽しんでそうだな。サキは。
キラキラのエフェクトが飛んできそうな勢いの彼女を先頭に、俺たちは歩き出す。
「二次試験について説明いたします」
先ほどと同じ女性があの時のように説明を始める。
毎回説明するという方針なのか、結界の話ももう一度聞かされた。
「二次試験は対人戦です。班ごとに用意された待機場所があり、開始の合図とともにそこから出て、一つのフィールドで全ての班が戦ってもらいます。」
合格の条件も、一つの班を撃退するというさっきとほぼ変わらないもので、脱落の方もさほど変化はなかった。
ただ一つ、三人全員が倒れたとき、全員が医務室に送られ脱落となる、というのが追加されていた。
「では、頑張ってくださいね」
そう言って、女性は俺たちを部屋に送り届け去っていった。
「対人戦かぁ……。一つの班を撃退って、つまりその人たちを医務室送りにしなきゃいけないってことだよね」
サキがそう言った。
さっきの魔物との戦い、魔物と戦闘し勝利する、というのは魔物を倒せば終わりの話だった。
でも今回は違う。一つの班を医務室送りに……つまり、一つの班を俺たちの手で脱落させなければいけない。
これによって72班あったものが順当に行けばに36班まで減るだろう。
一つの班を撃退できなければ、脱落。
それで脱落する班もいることを考えると、この二次試験で相当な数が減りそうだ。
「じゃあ、一つの班を倒すまでは、なるべく戦闘に積極的に行こう! そのあとはリスクもあるし、落ち着いて合格するための立ち回りで行こうか! その他のところについては……キバの強さ次第ってことで!」
こうして俺達の今回の試験での方針が決まる。
ちょうどよく、ここで試験開始の放送が鳴る。
「すべての班が揃いましたので、これより2次試験を開始いたします! 全ての班は30秒以内にフィールドに出てください!」
「行こっ!」
サキは元気に俺たちの背中を押した。
「頑張ろうな」
カラスに声をかけると、照れくさそうにしながら「あぁ」と頷いた。
現在の班の数は偶数。うまく行けば、すべての班で一対一の構図になるかもしれない。
それ以上になると面倒なことになる。
「あそこの班! こっち向いてるみたいだし、私たちの方から出向いてやろう!」
能力的に俺が前衛なので、俺が前に出て走り出す。
サキの言葉通り向こうもこちらに気づいていて、正面からの戦いが始まりそうだ。
「よし……! サキ!」
「ほいさ!」
そんな返事をして銃を構えた。
俺はその射線に被らないように走る。
カラスも影の移動で俺の速さについてこれる。
……完璧だ。
「来いやぁぁあ!」
そう叫んで、その班の注意を引く。
こちらに視線が集まったところでサキが銃弾を撃ち込んだ。
「なんだと!?」
(焦ってもどうにもなんねぇぞ……!)
俺は素早くサキの方向を隠すように立ち、その隙にサキが移動する。
あと戦えそうなのはあと二人……! 距離は5mないぐらい!
ドンと踏み込んで、距離を詰める。
「うっ!」
目の前の男は焦りから声を漏らした。
(……! なんだ!?)
地面が沈んだ。俺が殴るときに踏み込んだときだ。
(こいつの能力か……!)
後ろにいた翼の生えた女が高く飛び上がり、俺に一撃を加えるために加速しながら向かってくる。
「ふんっ!」
俺は覇力を使い周りの地面を殴り、足元の地面ごと削り取った。
(地面をいじった方の能力者が厄介だ)
だから先に目の前の男を倒すことに決める。
地面が柔らかくなる前に地面から足を離して、その男の顔面に一撃を入れる。
その男の地面は影の池のようなもので沈んでいた。
「ガハッ……!」
足元の池のようなものによって俺の攻撃を避けることができず男は血を噴き出して倒れた。
「あと一人……!」
女はまた高く飛び上がろうと翼を広げるが、一向に飛び上がらない。
「ふぅ……。完封、だな」
地面の影から手が伸びて、その女の足をガッチリとつかんで離さない。
カラスだ。
「早くしてくれないか……! 握力が持たない!」
「うす」
そう言って女に近づくが、少し遠くで光るものをみて俺は足を止めた。
その直後、目の前を弾丸がかすめる。
「俺ごと行く気かよ……?」
遠くから狙っていたサキの攻撃だった。
目の前の女が倒れたことで、死の危機にひんしていたわけではない先ほどの2人も同時に医務室へ転送される。
「……どうやら、更新をしていないだけというのは本当のようだな」
カラスが影から出てきて、そう話しかけてきた。
その顔には動揺のようなものが浮かんでいる。
「いやぁ! ごめんねキバ! 当たりそうだったでしょ!」
何が面白かったのかケラケラと笑いながら、サキも近づいてくる。
「俺を試しただろ?」
「えぇ? なんのことかなぁ?」
サキはとぼけているが、わざと俺のスレスレを狙った攻撃だったことに違いはない。
しっかりと敵のことも射止めつつ、俺を試すような弾道。
――サキは思っていたよりも強いかもしれない。
「それにしてもキバって……本当はC――」
「うお!?」
目の前が爆発した。遠くから飛んできた何かが、目の前で爆ぜた。
「お、会話の邪魔だった? すまんね」
少し遠くから、声が聞こえた。
こちらに迫りくるのは、一人の男。
だが……。
こいつは単独で、さっきの班全員よりも強い。
俺達は一斉に構え、その男を警戒した。




