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第17話『衝撃の事実』

 朝、いつもの宿で目が覚める。

 俺はこの宿を出ていくことに決めた。

 1人になって、しかも宿の半額セールも終わってしまったら、単独で毎日6枚の銀貨を稼がなければいけなくなってしまう。

 それはさすがに厳しいので、違う宿を探すことにしたのだ。


 俺は宿を出る。

 グランベリアの様子は昨日までと何ら変わりない。

 この都市から1人の男がいなくなってしまったというのに。

 きっとそれは冒険者が集まるこの都市の大半の人からすれば普段通りのこと。

 だけど、俺にとってはそうではない。


 キラトさんが死んだ。

 死体を確認したわけではないが、疑いようのない事実だろう。

 アイシャさんの次はキラトさん。

 俺の大切な人を失う経験をしたのはこれで2人目だ。


 いつまでもくよくよしてられない。

 俺はすでに新しい今日を迎えたのだ。

 いつも通り冒険者ギルドに向かっていると、そこに近づくにつれだんだん騒がしくなって来た。

 人通りも多くなって来ている。


「なんだ……?」


 俺は歩く速さを上げ、冒険者ギルドへと向かった。



 程なくしてそこへ到着すると、その中からは女性の黄色い声のような、屈強な男性の歓声のような、いや、そのどちらもが響いている。


 特に迷うこともなく俺は入り口へ。

 その扉をくぐろうとしたと同時に、ある男に声をかけられた。


「ちょっとついてきてよ」


 小声で、周りに聞こえないように。

 その男が放つオーラは周りとは違い洗練され、空気がピンと張り詰めたような、それでいてどこか落ち着いたようなものだった。

 冒険者ギルド内からもその少し張った空気と裏腹に安心したような空気が流れていた。


 その雰囲気から、俺はその男に逆らわずついていくことを決めた。



 4分ほど歩いただろうか。

 歩くペースが早かったので少し早歩きで付いてきた。

 今俺とこの男がいるのは住宅地付近の細い道。

 こんなとこで何があるんだろうか。


「君がキバだね」


「え……、まぁ、はい。そうですけど……」


「やっぱりね。じゃあ、もう本題に入るね」


 そう言って男が話し始めたのは、今まで俺が悩まされてきた無能力者という立場を変える衝撃の事実だった。


「キバ、君は能力者だ」


「……はい?」


 耳を疑った。

 この男は何を言っているんだろうか。

 能力を使えないんだから能力者で間違いない。

 それを証明するように、俺の左頬にはアクロセスの失敗作のタトゥーが彫られている。


 この男はこう続けた。


「いや、無能力者って言ったらそうなんだけどね。それは魔力が流れていないからで、それが流れる魔力腺が存在する。非常に珍しいっていうか、見たことないケースだ。」


 そう言うと、「だから……」と言いながら俺の頭に手を当て、こう言った。


「魔力さえ流せば、君は能力者になれる」


 スゥッと、体が軽くなる。

 頭から徐々に広がっていくその新しい感覚に、少しの眠気も吹き飛んだ。


「これは……!」


「魔力ってのは、創造神と破壊神の力の欠片。それが合わさってできたもの。だからそれを持つものと持たないもので、能力の有無にかかわらず身体能力に差が出るんだ。」


 俺は手をグッと握る。

 力が漲ってくる。湧いてくる。


「どう? 今キバの体、軽く感じるんじゃない?」


 そう言われた。

 本当にその通りで、今までに比べたら重力が2分の1になったような、例えるとそんな感じだ。


「俺も……、俺にも、能力が使えるんですか!?」


 声がデカくなってしまった。

 隣に建っている家の窓から1人顔を出した人がいたが、今はそんなのも気にならなかった。


「うん。でも……、自分で魔力を作る機能がないから、たまに人から補充して貰わないといけないけどね」


 平然と、その男は言い切った。

 俺にとってあまりにも衝撃的すぎる事実を、その男は声色を一切変えず言い切ったのだ。


「あ、そうだ。俺の名前はライ。聖裁ギルド第三支部所属のS級冒険者だよ」


「ライさん……、ありがとうございま……って! S級!?」

 

 ライと名乗ったこの男は金髪の髪に黒のメッシュが入っていて、瞳は俺と同じ水色だが、目つきは俺と違って少しツリ目のよう。

 左頬に獣の爪痕のようなものがあって、その傷と立ち方などからはたくましさを感じる。

 それに加えこの人が放つ異質さからも、本当にS級であることを感じさせる。


「うん、これからよろしくね」


 そこまで言うとライさんは俺にまたついてくるように促し、さっきよりも速いペースで歩き出した。

 でも、それについていくのはさっきよりも簡単だった。

 能力を使っているわけではないのに、魔力だけでこんなに変わるものなのか。


 俺は上がりまくっているテンションをそのまま動作に出し、ルンルンで歩き出した。


ーーーーーーーーーー

 森を抜けた。

 グランベリアを出て、いつも採取系の任務を受けるあの森の奥。

 そこには山が広がっていた。


「うはぁ……」


 思わず声を漏らす。

 視界を遮っていた木々が次第になくなり、遠くまで見渡せるようになる。

 北側に続いていくこの山は『赤龍神の背骨』と呼ばれている山脈なのだそう。

 俺とライさんははそんな山脈のうちの、最南端の小さな山の1つに登った。




「そろそろ着くよ」


 登り始めて10分ほど、ライさんがそういった。

 まだ頂上に着くには遠いが、だんだんと斜面が緩やかになってきた。

 目的地であろうその場所は山の中腹あたりで、山の中にあるにしては少し大きめの小屋があった。


「今からここに2人で住むんだ」


「はい?」


 なんというか、重要な発言が唐突に来るから混乱するな。


「俺が荷物持ってたから良かったですけど、持ってなかったらどうしてたんですか?」


「取りに戻ってたよ」


 後先を考えていないのか、距離を縮めるための冗談か。

 S級の思考を読むことなどできるはずがない、と、俺は諦めるのだった。


 その小屋に着くと、中は意外と綺麗で最近も手入れされていたことがわかる。

 意外と設備も整っていて、生活するのには申し分ない。山小屋というより、普通の家のようだ。

 荷物を降ろし、手を洗って椅子に座る。


 ここでライさんは話し始めた。


「いきなり2人で住む、なんて普通は戸惑うよね。でも、ちゃんと目標がある。今からキバは……」


 そこまで言って、ライさんは間を置いた。

 俺の目をじっと見て、ニヤッと笑う。


「1ヶ月後の聖裁ギルド入団試験合格に向けて、俺と2人で修行してもらう!」


「えぇー!」


 驚いた反応を見せたが、先ほどからの衝撃の連続で驚き疲れていたので半分うわべだけの反応である。

 仕方ないね。


 俺は能力者でした。これから2人で住み、修行します。目標は聖裁ギルド入団です。

 こんな衝撃発言の連続で、俺の頭は半分回っていなかった。

 が、分かることはある。


 俺はきっともっと強くなれる。

 能力によって、魔力によって。

 今までとは比にならないほどの速度で成長するだろう。

 俺は今、その成長の過程で間違わないための、素晴らしい先生を持つことになったのだ。


 ……と、思うことにした。


「じゃあ、まず今日は休みにしよう。明日から早速修行するから、よろしくね」


「よろしくお願いします! ライさん!」


「15歳だよね。俺17歳だし、敬語やめよう」


 なんで俺の年齢知ってるんだよ!

 というか2歳差なのか。


「分かった! よろしく! ライ……さん」


 どうしても名前にさんをつけてしまう。

 チルドとファイバの時はすんなり行ったんだけどな。


 あの2人とは強さも立場も違うせいで、うまく距離を縮められない。


「まぁ、慣れれば呼び捨てにもなるよ」


 ライさんはそう言って笑った。


ーーーーーーーーーー

 それから夜までライさんと過ごした。

 この人の生活は意外にもだらしなくて、すでに風呂場前の洗面所の床はライさんの服が散乱している。

 

 この人といろんなことを話した。

 例えば、なぜこの山脈が赤龍神の背骨と呼ばれているのか。

 この世界には『龍族』という種族がいる。

 それは創破戦争前から生きている種族で、数は少ないが今もこの世界の各地にいる。

 その種族の中の原初。龍神と呼ばれる存在は、4人存在し、そのうちの1人が赤龍神。


 この北大陸はその赤龍神が住むとされていて、それを由来にこの長い山脈の名前が赤龍神の背骨となったのだとか。

 龍についての知識はあったが、その地名などはあまり詳しくないな。

 

 俺は自分の知識の偏りに疑問を持った。

 頭はいいほうだと自負しているが、この世界の各地の山の名前や街の名前、どんな地形、気候かなどは詳しくない。

 ふわっとわかる程度だ。


 ますます俺の過去が知りたくなってきた。

 俺がいたところが、外の世界をあまり見ることのない場所だったりしてな。


 山生活1日目は数々の衝撃の展開と疑問で終え、俺は眠りについた。

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