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プロローグ

 この世界はもともと、『創造神』と『破壊神』の二神の存在によってバランスが保たれていた。


 人間、エルフ、ドワーフ、獣人……。

 いろいろな種族の生物が暮らすなかで二神も世界で暮らしていて、ちっぽけな世界の発展を目標に皆で過ごしていた。


 だが、そんな日常はある裏切りによって突如終わってしまう。

 創造神も破壊神も特殊な力を使うときは互いに確認しながら使うという規則があった。故に、世界は均衡を保っていた。


 しかしある日、破壊神はそんな規則を破り、自由気ままに力を使い始める。


 この規則を破るという裏切りによって創造神は破壊神によって封印され、破壊神は創造神との戦いによって力の5割を失った。


 世界はこの宇宙規模の戦争を、『創破戦争』と呼び、それ以降に経過した年月を『創破暦』と呼ぶ。



 時は経ち、現在。創破歴1014年。


 まず、裏切り者の破壊神は世界から『邪神』と呼ばれるようになっていた。


 そしてあの戦争から、邪神はこの世界に『魔物』と呼ばれる特殊な生物を創った。


 さらに、戦争が終わった後に創造神と破壊神の力の残片が混ざり、『魔力』となった。

 この世界のほぼ全ての生物はこの魔力の存在に適応するかのように、『能力』というものを持つようになる。


 能力を持つ生物は『能力者』と呼ばれ、その力の内容に合った職に就くようになる。


 戦闘向きな力を持つ生物は大体が『冒険者』と呼ばれる職に就き、今、魔物の力が増していくこの世界で滅亡を防ぐため、戦い続けるのだ。




 ――魔力。

 それは血が血管を流れるように、魔力腺と呼ばれる管を流れるもの。

 生物によって流れ方も、その量も違う。

 それぞれに刻まれた能力を扱うために、この魔力を消費する。


 魔力を体外に発散する系統の能力もあれば、魔力を体内で使用し身体強化などを施す系統の能力、魔力の通り道を利用して生物から生物へ使うことでバフや回復などのサポートをする系統の能力もある。


 これは大きい括りで語ったもので、実際の「能力」は計り知れないほどの種類に数がある。

 威力はもちろん、使用用途に目的などは使う者の技量などに左右される。もはや無限ともいっていいほどだ。

 


 では、魔力を持たない、能力が刻まれていない、などといった生物は居るだろうか。

 何らかの理由で、能力を扱うことができない。そんな生物は、存在するだろうか――。



 ――ある少年は、こう信じていた。


「力なんて、なくても守れるはずだ」


 きっと、この世界は不平等だ。

 能力の有無、その優劣で立場が、身分が変わるほどに。

 だから彼は触れた――。

 彼が知る世界で閉ざされた、この世界の真実に。


 何も知らなかった彼の、たった少しの好奇心によって、この世界に新たなストーリーが生まれた。


 ――これは、『無能力者』と呼ばれたある少年の物語である。

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