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【MOVIE6】イキたくない

 あれから、10日以上たった……と思う。

  寝てないし、日付を見てないから正しくは分からない。


<ピコッ>


 スマホの通知音が真っ暗な部屋に鳴り響く。


()()()()1()0()0()0()()()()()()()()!』とメッセージ。


  項垂れる身体を起こして、リンクをタップすると動画が再生される。


  ……耳にあいつらの声が入ってくる。

  今思えば、真衣との記録はこれしか残ってないのか。


「……なんで、()()()()()しか残ってねえんだ……。」


 悔しい、悔しい、悔しい……。

 気づけば、()()()()()が手に着いていた。


 ……久しぶりだ。この虚しさ。

 バイト漬けの頃はイヤな事がある度に()()に逃げてたのに。

 ……そうか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 ()()()()()()()()

 辛いことが起きた時、人は()()()を分泌する。


 反射的か能動的かの違いはあるけれど、()()()()は似た者同士だと思う。


 なのに、人は()()()()()()()と捉えて、()()()()()()()と唱えるんだ。


 ……酷いよな。人って生き物は。

 虚しさと同時に、疲労に苛まれた俺は眠りについた。



<ピンポーン>



 ……誰か来たらしい。音で目が覚めてしまった。

 けど……出る気力は無かった。



<ピンポーン><ピンポーン><ピンポーン><ピンポーン><ピンポーン>



 ……うるさい。睡眠ぐらいさせてくれ。


 間切の()()()()()が来たのだろうか。

 真衣を……あんなにした奴だ。報復してやろうか。


 ……いや。

 奴らの気持ちも……今ならちょっぴり分かる。

 大切なものは失ってからその尊さに気づく……。()()()を俺は知った……。


 あいつらにとって()()()()は……とても尊いものだったんだと思う。あの偉そうな態度は理解出来ないけど……。


 だから……()()()()()()()()()()


  生きる理由も無いし。なんかもう、楽になれるなら何でもいいや。



<バタン>



()()()()()()()()()()()()()


「……()?」


  ドアを開けた先に居たのは―――――


 ()()()()()()()()じゃなくて、()()()()だった。


  いつもの制服ではなく、いつか出会った時と同じ白いコートだった。


「……なんだ、()()か」


「あたしじゃ悪いわけ?」



「じゃあな」




<バタn―――――>



  ドアを閉めようとしたら、間切の足に止められた。


「ちょっと、()貸しなさいよ」


「……俺、ボコられんの?」


「ちがう! 出かけるからついてきてってこと!」


「そんなん、藍那かキヌエについてってもらえばいいだろ」


「……()()()()()()()()()()()()。」


「は、意味わかんねーよ」


「いいからくんの!」



  ―ぐいっ



 パジャマの袖を間切に引っ張られて、半ば強引にはドアからアパートの廊下までつまみだされた。


「こんなことしたって、俺、ついてなんか行かな――」


  そう言いかけた時だった。



<ゴッ>



  ()()()()()()()がきゅうしょにあたった。


()()、何すんだ!」


「……()()()()()()()()()。」


「―――――は?」


  たしかに、『()()()()()()()』とは言った、言ったけど……さ!


「あんたが元気出るまで蹴ったげるから。」




<ゴッ>

<ゴッ>

<ゴッ>

 



  いってぇ……。容赦なく本気で蹴りやがって……。


「わかった……わかったよ! ついてくから! もうそれやめてくれ……。」


  また盗撮されたら間切に迷惑がかかるともちょっと考えたけど、どうでもよく思えた。


「じゃ、そのダサいパジャマ、着替えて。あと、頭ボサボサでキモイからシャワー浴びてきて」


「はぁ?、めんどくせーな」


「あたしの隣を歩きたいなら、そんぐらいして」


  ……何でそんな上からなんだ。


「……待たせたな。」


 俺は白ベースのシャツの上に黒のジャケット、ネイビーのデニムに着替えて間切に姿を見せた。


「ちょっと、意外。……あんたの服、イケてるじゃん(安物臭いけど)」


「ふん、たりめーだろ。()()が選んでんだk―」


  ……思い出して、しまった。


「悪い。やっぱし俺行く気失せた」



<ゴッ>



  間切が回し蹴りを膝に食らわせてきた。


「……は? 何すんだ!」


「言ったでしょ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


  なんだよそれ、励まそうとしてんのか、俺を蹴りたいだけなのかどっちだ。

  どっちにせよ、このままじゃ蹴られ続ける。


「行く気戻ったから、()()のはもうやめてくれ」


  ……俺の身体のほうが持たなそうだ。


「それなら、よし。」


  と間切は微笑む。

 その笑顔は()()()()()()()。顔だけだけど。

 

  俺と間切は階段を降りて、アパートの前まで来た。


「チャリ出して」


「……悪いけど、今チャリ漕ぐ気力とかねーんだよ」


「じゃ、あたしが漕ぐ。 あんた後ろね」


「……それなら、いいけど」


 俺たちは走り出した。



<グラグラ>



「なんかめっちゃグラグラしてんだけど?」


「しょーがないでしょ! 二人乗りなんて初めてなんだから」


「遅いから安定しないんだ。もうちょいスピードをあげろ」


「でも、スピードあげたらこわいじゃん!」


 怖いのはグラグラチャリに振り回される俺の方なんだけど?


()()()()()()()()()()()()()()()


「あんた何言ってんの!? ()()()()!」


「……? 訳わかんねえよ、いいからスピードあげてくれ」


「……分かったわよ」



<ギュン>



 急加速して、物凄い超スピードで走るチャリ。


 電信柱に頬が掠めた。


「ちょっ!? 殺す気か!」


「スピード出し過ぎだ! ブレーキ使えブレーキ!」


()()()()()()()()?」


「……()()()()()()()()()!?」


「ち、ちょっとド忘れしただけだから! はやく教えなさいよ!」


 ……()()()ね。


「今握ってるハンドルの下にあるだろ、握れるつまみが。そいつを握れば止まる、あくしろ!」


「わ、わかったわよ」


 戸惑う間切。


「おい、どうした?あくしろよ!」


「……()()()


 こっちの台詞だは。


「はやくブレーキかけてくれよ!」


()()()()()()()()()()()()()()()()


「は? ざけんなよ!」


()()()()()()()()()()()!!」


「はぁ!?」


 なんとかしろつってもなぁ……。


 チャリの進む先を見渡して俺は宣言する。というかしていた。


「突き当たりに公園あるだろ、フェンスあるとこまで直進な。」


「……わかった。」


「俺が『今』って言ったら()()()()()()()()()()


「な、何言ってんの!? ()()()()!」


「助かりたいなら言う通りにしてくれよ!」


「あ、あたし、()()()()()()()()()()()()()()()!」


「こんな時まで訳わかんねえこと言うなよ!」


 つーか、遅え。

 もう真ん前にフェンスがある。


()()


 俺は間切を抱き抱えて、超スピードのチャリから飛び降りた。



<どしゃん>



 チャリはフェンスに激突。

 俺たちは地面へと放り出され、着地の衝撃と間切の体重(意外に重かった)に押し潰されそうになった俺は空気イスから正座へと崩れ落ちた。


 綺麗な間切の髪から、いつもの()()()()()()がして俺は惑ってしまう。


「どこ触ってんだバカっ!」



  <――ゴッ>



  うっ……。


「わ、悪い!」


 なんで俺、助けたのに殴られてんだよ。事故だしそんくらいご褒美でいいじゃんか。


 つーか、さっきまで()っちまって、()きたくなんかなくて、()ってもよかったのに、どうしてこんなことしてんだ。情緒不安定なのかな、俺。


 俺は間切の身体から手をどけて、チャリを起こした。


「お前、自転車の運転酷すぎだろ……。」


「し、仕方ないじゃない! あたし、自転車なんて乗ったの()()()()()……」


 ……は?


「そんなの、無理に決まってんじゃん」


「だって! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


  うわぁ……。()()()で、()()()()()()()()()()()


「もう無理しなくていいよ、俺、漕ぐから。 どこまで漕げばいい?」


()()()()

___________________________

あとがき

ワンポイント秘話


作者「こももは経験無いのに、下ネタに敏感」


こ「...べ、べつにそういう話に興味ないわけじゃないというか何と言うか」


作者「()だな」


こ「今日は違う色......じゃなくて何言わせんの口コス!!」


「こもも思いの外かわいい」「高校生でチャリ乗ったことないって何!?」「読者も色知りたい!!」

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