【MOVIE6】頂点のバール凸
病室につくと、真衣が、寝込んでいた。
頭を4針縫う怪我。
医者の話だと、もう……いつ意識が戻るかわかったもんじゃないらしい。
俺は、看護師に訪ねた。
「……なんで、こんなことになってるんですか」
「私共も、警察づてでしか聞いてないのですが……。頂点と名乗る男が金槌で、自宅に居た真衣ちゃんをドアの隙間から……」
「そいつは……捕まったんですか」
「未だ、逃走中だそうで……」
……俺があのとき、一緒に帰ってたら。
医者と看護師が去った病室に俺、間切、藍那、キヌエが残された。
「結人くん、知りたいですか、真相。」
「……真相って、なんだ」
「これ、見てください」
藍那がスマホを見せてきた。
そこにはyoutubeが、俺の家のドアが、真衣が、映っていた。
『オラァ!クソガキ!』
『出てこい!』
『<バァン>(金槌でドアを殴る)』
『……もうやめてください!(チェーンつきでドアを開ける真衣)』
『クソガキじゃねーが、まぁいいか』
『<バァン>』
『俺様がyoutubeで頂点を取る男、頂点だ!』
『間切こもものファンは全員チャンネル登録しとけ!』
『もっと面白いものみせてやる!』
「……どうしてこんな動画がyoutubeに上がってる」
「たぶん……もも様の過激ファンでしょう。まだ、一部ですが結人くんを許してない人たちがいるんです」
コメントを見ると藍那の言う通り、『もっとやれ』とか『最高!』とか賛同するコメントがいくつも出てきた。
「……どうして真衣がこんなことされなきゃいけないんだ。やるなら俺だろうが。大体、なんで俺の家がこの頂点とかいう野郎に知られてんだ」
「……確実なことは言えないですが、おそらく謝罪動画の背景から特定されたんだと思います。今見たら、窓が空いてました。」
……窓……。
確かに、俺はあの動画を録る直前、換気のために窓を開けた記憶がある。
「窓からの景色を元に俺のアパートを特定したということか。」
「……それしかありえないはずなのですが、それもちょっと考えにくいんです。」
「分かるように言ってくれ」
「そういう特定を行なう時は『ストリートビュー』を使われることがほとんどなのですが、結人くんのアパートはモザイクで隠れていて、特定されたとは考えにくいんです。」
……ストリートビュー。
道とか建物をネットで見れるあれか。
「じゃあ、どうやって特定したってんだ」
「……わかりません」
 
「……あたしの、せい……だよね。」
と黙っていた間切がポツンと言った。
「…………いや、これは俺のせいだ。お前のファンを怒らせたのは俺なんだから。」
もっと言えば、炎上を利用して稼ごうなんて、俺が汚い考えを持ったせいだ。
……空気が重い。
…………。
「真衣が倒れちゃってまいっちんぐ!」
「なーんつって!」
とキヌエが。
……冗談でもやめてくれ。そういうの。
「……冗談でもやめ―――――」
「冗談でもやめて! そういうの!」
声の主は間切だった。
「ああ? ウチは結人を慰めようと!」
「やめてください!二人共!」
「お前ら、もう帰っていいぞ」
「真衣が、静かに寝れないだろ」
「俺も帰るわ」
……精神的にキツイ。一人になりたい。
「待て、結人!」
「待って、あんた一人で大丈夫なの!?」
……うっさい。
一人にさせてくれ。
「……一人に、させてあげましょう。」
と藍那の声。
……ありがとう。藍那。
「ボクも、一人になりたいですから」
作者PS.作者が藍那お気に入りすぎて良いところばかり持っていく。




