表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

【MOVIE3】炎上を利用

【MOVIE3】


ピピッと目覚まし時計がなって、俺は目を覚ます。

普段ならすぐに洗顔と歯磨きをするとこだが、そんなことお構いなしに、俺はパソコンでyoutubeを開く不潔ムーブをしていた。

何故そんなことをしてるかって?

昨日、youtubeに初投稿した動画がどうなったかチェックするためだ。

……なんと、俺が昨日投稿した動画の再生数は!


たったの1回だった。


なーにが『炎上を利用しなさい』だよ。

全然ダメじゃん。

ユーチューバー熱が一気に冷めた俺は、普段通りの支度して学校へと向かった。





教室の扉を開くと、また間切こももの周りに人が集まっていた。


「間切さん、ユーチューバー辞めたってほんと?」


―――――は?

間切がユーチューバーを辞めた? どういうことだ?

「え、えっと。」

間切は戸惑ってるように見えた。

「やめてください、もも様g……。」


<ドンッ>

「邪魔なんだよ、子供は引っ込んでな」

止めに入ろうとした藍那が突き飛ばされる。

「うぅ。痛いよぉ」

「大丈夫か藍那。」

俺は藍那の元に駆け寄り、手を差し出した。

「ボクのことはいいですからもも様を助けてあげてください!」

藍那の表情はとても真剣そうに、俺の瞳に映った。

……助けるつってもな。

「この前みたいに音と煙でなんとか出来ないの?」

「今、切らしてて。だから、結人くん、はやくもも様を!」

俺にどうしろつーんだよ。


何があったのか知らないが、間切には、こんなところでくたばってもらっては困る。

これから俺が散々利用してやる存在なのだから。

だから、助けに動くべきとは思ったが、特に案が浮かばなかったから、とりあいず自分の席に座って様子を見ることにした。

……が。

俺の席は間切こももの前の席だったので、メスヤジウマの一匹に座られていた。

椅子じゃなくて机に。しかも、土足で。


その光景を見てると、すげー気分悪くなった。

『居座るのは自分の椅子だけにしろ。』とダジャレを言いたいのを堪えつつ、俺は自分の席に居座るメスヤジウマに声をかけた。


「あのさ、そこ俺の席だからどいてくんね?」

「あー、ごめn……って! お前、今youtubeで話題になってるやつじゃんwww ウチの学校だったのww」

きったねえ声。

声も驚きだったが、一番の驚きはあの『キス動画』で間切にキスされてるのが俺だとこいつが知っていたことだった。

なぜなら、盗撮されたあの動画は現場から若干遠くから撮られている上に、ピントは間切にばかり合っていて、俺の顔だと判断される可能性は低いと思っていたからだ。

「あの動画、かなり距離あったのによく俺だって分かったな。」

「はw 距離なんて全然無いじゃんww お前、頭イカれてるけど、目もかよww」

「頭イカれてるのはおめーだよ」

早く、俺の机から降りろ。

「いやwお前以上のやつはいねえってww 面白れーわwwこの動画www」

そう言うとヤジウマが自分のスマホをタップして、俺にスマホを向けてきた。

「……なっ!?」


そこには、例の『キス動画』ではなく、俺が昨日投稿した間切のファンを煽る動画が映っていた。

しかも。


再生数が100万を超えていた。


なーんだ。

youtubeも気まぐれなやつだな、今朝まで1再生だったのに。

これで俺もユーチューバーの仲間入りだぜ!

嬉しさで俺は、広告ってどうやってつけんのかな?とか、幾らお金もらえるのかな?とか、入った金で何買おうかな?とか。色々妄想した。


「何そんなビビッてんだよww自分でアップした動画だろww」

「いや、なんつーか、嬉しくてな。」

「お前は嬉しくても、間切さんのファンは激おこだよww ほらwコメント見てみろよww」

ヤジウマが自分のスマホを俺に手渡してきた。


俺はその時、現実を、知った。


ヤジウマが見せてきたコメントは、動画は、俺のチャンネルのものでは無かった。

動画が投稿されているチャンネル名は” ているん♪”だった。

すぐさま、自分のスマホでyoutubeにログインして自分のチャンネルを見たが、再生数は相変わらずの1。

どんな手品を使ったのか知らないが、” ているん♪”は、俺が昨日投稿した動画と全く同じ動画を投稿してやがった。


「まーた、こいつなのか……」

「はw何言ってんのww」

「……もういい」

俺は目の前のヤジウマにスマホを返すと、自分の席へ座った。

「ちょっw 見えるじゃんww」

そう言うと、前のヤジウマは俺の机から降りる。

なんだか知らんが、やっと俺は自分の席を取り戻せた。

精神的にキタので、俺は頭を伏せて机にふて寝を始めた。

俺の机は汚れていたが、もうどうでもよく思えた。


「おいwどうしたんだよwさっきの笑顔はどうしたww」

……うっせえ。引っ込めブス。

そのあとも何度か話しかけられたが、腹いせに全部シカトしてやった。


ヤジウマの足音が数歩聞こえて、声をあげた。


「間切さんがユーチューバーやめたってうわさwこいつのせいw?」

……こいつ?

こいつって……まさか俺じゃねえよな?

「いや、こいつっしょ。こいつ以外にありえる?」

あーもう、気になって仕方ねえよ!

目を見開いて起き上がると、キンパツインテ豚が俺を指差していて、周りのエセヤンキーみたいな奴らにむっちゃジロジロ見られた。

「間切さん、どうなの?」

                                            


――間切に集る生徒がどんどん増えてきた。


「はぁ?」「ノリ悪」「つまんな」

「教えろ!」「教えろ!」「教えろ!」

「いい加減答えたら?」


「……ごめん。答えられない。」

ごめん!? あの間切が!? 

しかも……よく見るとなんで、目がうるうるしてんだよ。




「おい、行くぞ。」

流石に見ていられなくなった俺は間切に声をかけた。

「行くってどこに!? あと数分でホームルーム始まるんだけど?」

「うわーなにお前」

「白馬の王子様気取り?」

白馬の王子様? そんなんじゃねえよ。

「いいから行くぞ。」

俺は間切の手を取ると教室を飛び出した。

「……どこ行くつもり?」

間切が不安そうな面で見つめてきた。

「すぐ分かるよ」

俺は間切の手を引くと階段を駆け登った。


「着いたぞ。屋上だ。」

――屋上の扉前に俺たちは到着した。

「屋上……? 屋上の扉の前じゃん。」

そう。屋上には鍵がかかっていた。

「ところがぎっちょん!」

俺は屋上の鍵を取り出した。

「えっ、普通、屋上の鍵なんて生徒が持てないでしょ? なんであんたが持ってんの!?」

「細けえことは気にすんなって」

実は去年、大掃除の当番で屋上の鍵を借りた時に『コンビニに行く!』とか適当に理由つけて校外に出て合鍵を作ってきた。

高校といえば屋上に誰もが憧れるだろ?

人生でたった三年間しかない高校生活だ。 楽しまないでどうする。

……楽しめてねーけど。


<ガチャ>

屋上の鍵を開け、中に入ると煌めく太陽が俺たちを照らした。

「こっちだ。」

俺は間切の手を引き、屋上の端にある四角い建物のハシゴを登った。

外を見渡すと、自然豊かな公園や巨大ショッピングモール、江戸川やスカイツリーが一望出来た。その風景は色々なものが調和し合って綺麗だ。



「どーしてあんた、あの動画あげたわけ!?」

間切が目をうるうるさせて、ちょっぴりおこりっぽくそう言った。こいつ、結構泣き虫なとこあるよなぁ……。

「いや、だって、お前が炎上を利用しろって!」

「あんたの……あんたのせいで! あたしは……大迷惑してんだけど……!!」

ポロッと、間切の瞳から涙がこぼれ落ちた。

「はぁ? お前がやれって言ったんだろ!」

「そっちの方面じゃなくったってよかったでしょ!! もう……後には引けないけど……」

……何言ってんだ?

「そっちの方面以外に、どっちの方面があんだよ」

「あたしを助けたヒーローだって、そういう言い方だってできたじゃない!」

あぁ……。たしかに。

……仮に分かってたって、実行していたかと言えば恥ずかしくて出来たもんじゃないが。

「お前のヒーローなんざごめんだね、妄想が過ぎんだろ。はっきり言って気持ち悪い。」

その言ったら、間切の顔がムスッとブスになった。

「……あたしだってあんたみたいなクズ、ごめんだし!」

涙をポロリするその姿に、不覚にもズキリと来てしまった。

「はぁ? てめえにクズなんて言う権利無いだろ」

そう言い返した俺を無視して、間切はプイッと後ろを向いた。

「あたし、帰る。」

「……じゃあな」

ハシゴを降りるときに、こっちを向いた間切は……複雑そうな面で、その表情が俺の眼球に焼き付いてしまった。

作者PS.ここもめためたキツイ。文章もキツいけど、過去のいじめを思い出してトラウマが… 藍那は政宗くんのリベンジの小岩井吉乃のパクリです。作者のお気に入りキャラ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ