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将来の夢。


 ゆいちゃんの将来の夢は大学卒業してすぐにお嫁さんになることです。


 世界一可愛いゆいちゃんは、きっとイケメンでお金持ちの男性と結婚できると想います。そして幸せな家庭を築きます。可愛い子供にめぐまれ、孫にも可愛がられるおばあちゃんでいたいです。


 最期までみんなの人気者でいたいです。


 私は世界一可愛いので会社勤めは似合わないと思っています。


 今からおしゃれや体型維持のためにエステに通ったり、女子力をあげたいと思っています。


 高校生になったらまずは将来の旦那さん探しをしたいと思います。


 世界一可愛いゆいちゃんなら絶対できると思います。


 もしこれが叶ったら、みんなを結婚式を呼んであげます。


 結婚式の会場は海が見えるチャペルで、お色直しは3回ぐらい。和装とあとはドレスが2回。


 みんなに余興やってもらいたいです!


 世界一可愛いゆいちゃんのためならみんな動いてくれると思います。そして美味しい料理を食べさせてあげたいとおもいます。


 それにゆいちゃんのドレス姿は絶対可愛いと思います。


 だから自分の夢を叶えるために、少しずつ可愛いゆいちゃんを続けたいと思います。


 朗々と読み上げる私に対して、教室の凍りついた表情は今でも覚えている。外より寒かった。

 同じクラスの親友も目を丸くしていた。


 担任に原稿用紙を提出したあと「本気でおもってるのか?!」「真面目に書きなさい」と呆れまじりの怒りからの保護者面談になった。

 私は本気だった。夢を叶えるために高らかに宣言しただけ。


 ほら、自分の願いや目標を口に出すだけで叶う確率があがるってよく言うじゃない?

 書くだけで80パーセント叶ったようなもの。


 面談の時母は「うちの可愛い娘の将来の夢を否定するのか?!」と怒ってくれた。


 この頃から専業主婦願望はあった。


 人にしてもらって当たり前。

 旦那さんを支えると言っているけど、ただ単に働きたくないから。


 私は自分の容姿に自信があるから、すぐに結婚できるし、将来の旦那さんになるだろう人は私の可愛さで、惚れた弱みで何でも言うこと聞いてくれると思っている。


 今の段階で男子に少しぶりっ子しただけで、なーんでも言うこと聞いてくれる。可愛い可愛いとチヤホヤしてくれる。


 自分以外の女子が可愛いと言われているのを聞くと、男子を使って嫌がらせさせたり、陰でそのターゲットとなる女子に2人っきりにして、容姿をけなす。


 イケメンの彼氏がいる同級生や先輩や後輩の仲を邪魔した。

 要は略奪だ。


 自慢の容姿でその彼氏に私を振り向いてもらえるようにスキンシップや甘えたりしていた。それで別れたカップルが何組かいる。

 でも飽きたらその彼氏も捨てる。


 邪魔をしている時が一番楽しいから。


 魅力ないあんたが悪いと。


 泣いている彼女を見るのが楽しかった。優越感に浸れて。


 私は女子から評判悪いけど、男子から人気があった。


 同性は邪魔だ。私より可愛い人がちやほやされるのがなんとしてでも許されないんだから。


 あれは確か中学校2年の時に、自分のキャリアを見つける的な、興味ある職業を探すみたいな授業で将来の夢の作文を書いたと思う。


 そして22歳の時に宣言通り結婚した。


 作文通り同級生を呼ぶことは出来なかった。いや、来なかったに近い。

 女子で来たのは親友の磯崎望海だけ。

 あとは母が呼んだ”サクラ”達だ。


 同性の友達がいなさすぎるのは性格に難あり、地雷率が高いと言われているのを、母のおかげでごまかすことができた。

 残りは私や母が無理やり呼んだ人たち。


 夢を叶えてもう10年以上経つ。


 私は37なった。中学生の娘がいる。

 夫は優しいし言うことを何でも聞いてくれる。

 私に対して言い返そうものなら、強く出て黙らせる。


 でも物足りない。


 夫はローカルスーパーの経営や現場仕事で忙しい。


 仕事は朝早く、夜は11時前に帰ってくる。

 休みも不定期だからすれ違いがちょくちょく起きる。

 私と娘が可愛くないのかと思う。


 夫が忙しい代わりに、私と実家の母で一緒に娘を色々連れて行っている。 


 家のことは多少やっているものの、家事は苦手だからお手伝いさん達にお願いしている。


 普段は何してるって?


 母やママ友や親友の望海と一緒にランチや買い物に出かけている。


 日中は娘もいないから寂しい。


 仕事をすればいい? そんなの無理無理。


 私は世界一可愛いから働かなくていいの。


 そう夫と約束したんだから。


 母は夫を婿養子にさせたかったけど、夫はそれを断った。


 夫は家業があるし、それに私には兄と姉がいる。そのどちらかが呉松家を継げばいい……なはずだが、母としては可愛い私にさせたかった。


 結婚の条件としていくつかあるが、その中の一つが私を専業主婦にさせることだった。働かせるのはだめと。


 そんな無理難題でも夫は可愛い私のために誓約書にサインをしてくれた。


 前に私に働けと言われたことがある。


 義理の母が仕事中に転倒したから、穴埋めとして代わりに入って欲しいと。


 私は誓約書を引き合いにして即拒否。

 母に泣きついて夫を懲らしめてもらった。

 夫が母に嫌味を言われながら頭を下げている姿は最高だった。

 私に逆らおうものなら母を呼んでとっちめる。


 罰として夫のお小遣いを1000円引いた。


 月のお小遣いが3000円だ。夫はかなり落ち込んでいたが、私としてはたかが千円でなに凹んでいるのか分からない。

 ちなみに今でもお小遣いは変わっていない。

 そんでもって、趣味のクイズサークルに月1回顔だすから、一体どこからお金が出ているのやら。


 独身時代のお金? 誰かが援助してるの?

 もしかして義理の両親?

 援助するぐらいなら、私と娘にお金援助しなさいよ!

 可愛い可愛い私と娘が大事じゃないのか!

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