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世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!  作者: 月見里ゆずる
8章

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7

 やーんっ! 嫌だ。もう外なんて嫌。


 また《《前みたいに》》なっちゃう!


 前夫と実娘からの軽蔑の視線。罵倒の言葉。


 義理両親から生活態度に口だしされる日々。


「わ、分かったわよ! 見せればいいんでしょ?」


 しぶしぶログインして、他の銀行アプリを見せた。


「光河、葵依。こいつが動かないように見てくれ。お父さんはチェックするから」


 はーいと子供達に手足を封じ込められて、身動きが出来ない状況に。


 なんなの、この家族! みんな私を疑ってばっかだし、言うこと聞いてくれないし。


 旦那がいないときにブス娘と陰キャ息子を支配して、言うこと聞かせていたけど。こいつらも旦那がいると強気になるんだよね。ほんとムカつく。


 虎の威を借る狐みたいで。


 マジウザい、キモい! とっとと失せろ!

 

 こいつらとクソ義理両親さえいなければ、夫と2人きりできるのに。


 あ、でも、お金ないからあの義理両親は給与運搬機として生きて貰わないと。


 もっというと、夫にも働いてもらわないと、子供達が可哀想。本音は、世界一可愛いゆいちゃんが働きたくないから。


 今素直に言うこと聞いた方がいいかな?


 もう家を追い出されるのなんて嫌だし。


 だいたい今12月の中旬で寒いし。


 光河くんの体あったかいわー。


 やっぱり野球してたってこともあって、鍛えられてるのね。

 

 結花は上目使いで光河に視線を向ける。


「ねぇ? ゆいちゃんのこと見逃してよ? というか秘密にしてって約束したじゃない?」


 甘ったるい声でなかったことにするようせがむ。

 その声にうんざりしたのか、光河は舌打ちした。


「ちょっとー、ひっどーい! 舌打ちなんて! あおちゃん、さっきの見たでしょ? この子ひどいわー」


 葵依も結花の話を無視して「あんたがやったんでしょ? 正直に言って! そしたら離してあげる」と鬼の形相で責める。


「ち、違うわよ! お父さんじゃないの? ほら、お金ないっていうし!」


 天を仰いで私は悪くないとアピールし続ける。

 

 でも、あの子達から取ったのって月数千円ぐらいだし、たかがお小遣いなんてしれてるし。


「はぁ? じゃぁ、なんであんなにブランドもんあるんだよ?! お金ないって騒いでるのに!」


「あああ、あれは、昔っからも、も、持ってるやつなの! あんた達には関係ないでしょ! 光河くん、かっこいいから見逃して!」


 じたばたと暴れる結花に子供達2人は呆れと軽蔑でうんざりそうに顔をしかめる。


 学年で嫌われてる女子みたいで嫌になる。


 猫なで声で話してくるし、一緒に買い物しよ誘ってくるし、腕くんでくるし。


 中学生男子が母親と腕くんで買い物してる姿を同級生に見られた日なんて地獄だろ。


 後でいじられるし、もしかしたらずっとそれをネタにからかってくるやつがいるというのに。


 しかも40過ぎて自分のこと名前で呼んでるし。マジできしょい。


 周りの親でそんな人見たことなかったし、後にも先にもないと思う。


 世界一可愛いとか抜かしてるけど、ほうれい線そろそろ目立ってるし、気味悪いぐらい年齢不詳なんだよ。


 美魔女とはまた違う怖さと嫌悪。


 姉には態度めっちゃきつい。


 あんまり言い返さないことや、あいつのような我が強く、わがままタイプが天敵であることを分かっててやっている。


 弟の俺がいうのもあれだが、姉は真面目ではいはい言うこと聞くタイプ。父にもあんまり反抗しない。


 あいつがお金をせびってるのも知ってる。


 最初にお母さん銀行と称して俺たちの分を預かってたけど、密かにお金がなくなってた。


 プラス、姉にいたっては、月のお小遣いから数百円~数千円単位であいつにぶんどられている。  


 なぜ知ってるかというと、姉が俺も取られてないかと聞いてきたからだ。祖父母にも聞かれた。


 あいつが来てからお金がちょいちょいなくなってる。


 お小遣い表代わりに銀行のアプリでチェックしていたら、いつの間にか下ろした跡がスマホの通知で来る。


 しかも下ろしただけで、どこに振り込まれたとか来ない。


 時間帯的に朝や昼が多い。


 父や祖父母は自分の口座を持っている。 


 お金の管理は祖父母含めてあいつがやっている。


 元々祖父母の分は自分たちでやっていたが、あいつが管理するしないでもめた。


 キャンキャン吠えるように主張するあいつにうんざりしたので、渋々従ってる形だ。


 いつも祖父母とあいつは喧嘩している。


 生活態度がだらしないとか、言葉遣いが幼いとか働いた方がいいんじゃないかと言われて、「うるさい」とか「だまれ」とか「遺産残して死ね」と強い口調で返してる。


 結婚の条件が専業主婦になることが約束だからと言って頑なに働かない。だから父に働けと強要している。


 最近では姉に「学校いかないならアルバイトして、ゆいちゃんに尽くせ」と迫っている。


 言い返したら、姉が描いたイラストのクロッキー帳を破いたり、趣味で集めているアニメのグッズやポスターを勝手にフリマアプリに売って、自分の物にしている。


 アニメのグッズの件も、俺が姉の部屋に行った際に、なくなってたことに気づいた。姉は「間違えて捨ててしまったみたい」と物悲しげに言っていた。


 テレビではあいつは「家族にいじめられているんです」と泣いて訴えていたが、逆だ。


 人に注意された腹いせや、家庭内のいらだちを家族に向けて、相手の弱みをついて嫌がらせをしているから、やめてくれと言っているだけだ。


『うちの馬鹿妹をビシバシやってください。恥ずかしながらロクに働いたことがなく、無神経で、いい年して自分が世界一可愛いと思ってるし、自分のこと名前で呼んでるわ……身内の恥です。本当は存在を抹消したいぐらいですが、そこは一応《《呉松家としての対応》》をしてます』


『あいつは顔だけしか取り柄ない中身空っぽなやつです。子供の頃から母がかなり甘やかしてまして。何かあったら家の名前出したり、母に頼ってばっかで、周りも面倒くさいから折れていたんです。それをあいつは何でも言うこと聞いてくれると勘違いしていたんです。《《自分でなにかやり遂げたことがない》》』


『前夫の悠真ゆうまさんも健気さや可愛さに惹かれて結婚したとおっしゃってました。しかし、あいつは働きたくないがために、高校時代から婚活みたいなことをやって、家庭的な自分を演出するために、実家のお手伝いさん達を利用して、悠真さんを騙してたんです。結婚後もそれを隠してやってきたんですよ。家のことは全て他人任せ。あいつは母か男友達と遊ぶかでしたね』


『悠真さんは家事出来ないことを騙してやったことに。家のことが出来ないなら、一緒に出来るようになろうと再三言ってたんです。でも、あいつはそれに甘え切っちゃった結果、離婚なんです。なんせ悠真さんが倒れても男友達と遊んでたんですからね。姪っ子もあいつの日頃の態度にうんざりして悠真さん側についた』


『姪っ子が通ってた中学校は、私達が卒業したとこです。ちょうど姪っ子の担任と、入ってた部活の部長のお父様があいつの同級生。当時のことを知っている人間から、姪っ子は理不尽な扱いをされていました。挙げ句の果てには、私達家族や悠真さんのご実家から姪っ子宛てのお金を無断で引き出して遊んでたんです。色々積み重ねて、姪っ子は心底軽蔑しているんです。今でも憎んでるんですよ』


『家族でもう1回やり直そうとやってたんですけど、自分の非を認めず、パパ活やってましたからね。働くのだるいからと。この時点で反省の色ないんですよ。自分が被害者だと思ってる。今まで周りはそうやって通用したかもしれませんが、もう無理ですね。あの年になれば見た目だけじゃ通用しないし、周りの目はシビアになる。あいつにはそれ相応の報いが必要なんです。わがままで振り回したり、陰湿な嫌がらせ、人を騙したことの罪を一生背負って生きて貰わないと。だから田先さん、どうかこいつを容赦なく厳しくやってください』


 祖父はあいつの兄と仕事上の付き合いがあり、それで過去を色々聞く機会があった。


 正直元夫と娘に追い出されるのは残当ざんとうだと思う。

 

 ――こんなやつお義母さんって呼びたくない。家族として認めたくない。


 それが俺にとってささやかな抵抗だ。それは姉も同じ。

 

 うちの家族は外では家族円満アピールしているが、家の中ではそうではない。あいつと俺たちで喧嘩だ。


 あいつもSNSで父や祖父母の悪口バンバン載せているから。


 姉は表向きお義母さんと呼んでいるが、いないときには『あの人」とか「あいつ」と呼んでいる。


 素直に従ってるのは性格もあるが、あいつの動向を知るためにでもある。


 祖父母も外では「結花さん」と呼んでるが、家では「呉松さん」と名前で呼ばない。


 父も絶対名前ではなく「あいつ」や「お前」とか「あれ」「それ」と呼ばれている。


 こいつには家族扱いしないことが一番いい仕返しだ。俺たちや瀬ノ上さんを騙した罰だ。


 元夫も娘もこいつが痛い目に遭った方が留飲が下がるだろう。 


 祖父の話聞いてたら、あいつが俺たちのお金をぶんどって遊んでる可能性は十分あり得る。


 日頃の好感度低いから疑われるんだよ。自業自得だ。


「――やっぱり、あった。光河、葵依。やっぱりお前達の口座から引き落とされている。昼間にな。通帳記載しないのも、お前達にバレないようにするため。浅知恵だな。もっというと、おじいちゃんおばあちゃんもだ」


 周平は低い声で結花に鋭利な視線を向けた。

 子供達は悪臭を振り払うかのように、鼻をつまんだ。


 結花の隠し口座――実家にいたときに使っていただハーバー銀行のものだ。


 結花と周平が再婚した2年前から、不定期だがだいたい午前中に、家族のお金が数百円から多いときは万単位で引き落とされ、結花の口座のもとに来ている。

 その数年前には、元夫の悠真と娘の陽鞠の口座から同じ手口で、横流しした跡や、実家の母である周子から毎月10万お金を貰っていた。

 仕送りは結花が働いてから止まっている。なぜなら、兄の良輔が厳しく管理したから。

 

 銀行のアプリ以外に他でお金を稼いでいるのではと、フリマアプリやパパ活サイトなど探していく。

 結花のフリマアプリのアカウントを見つけ、売っていったものを探していく。


 多くはブランド物の衣類、靴、宝飾品など――そして見つけた。やたら高く取引されているものが。


「光河、葵依見てくれ」


 周平は2人に結花のフリマアプリのアカウントで、過去に取引された履歴を見せた。


「あ、やっぱりないと思ったら、これか……」


「マジモンのクズだ、この女。スタッフさんが送ってきたのはガチだったんか……」


 子供達は結花に突き刺す視線を向ける。


「……おじいちゃんとおばあちゃん呼んでくる」


 周平は舌打ちして、両親に事情を話して連れてきた。

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