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世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!  作者: 月見里ゆずる
7章

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4

 7月に入った。

 初夏の風が離れに吹いてくる。

 

 スマホを片手に誰も気付かれないように外に出る。

 

 時間は17時過ぎ。久しぶりのメイクアップに心躍る。

 いつもは動きやすい格好にしていて、ノーメイクが多かった。もう服装でとやかく言われる必要がなくなった。


 ――依田さん、7月でここじゃなくて夏風町なつかぜちょう店に行って貰うから。


 端的に言うと異動を言い渡された。

 

 教育係だった尾澤は、4月の終わりに元の勤務先に戻り、結花は落ち込んでいた。

 店長の野崎から厳しく言われる日々だ。

 

 5月に悠真は社長を退任、陽貴も退職をして、末弟の隆太だけ残る形になった。

 後任の社長は尾澤、人事部長は野崎になった。

 7月で正式に就任になる。 

 

 隆太は西南中央店せいなんちゅうおうてんの店長だが、会社内の発言力は、悠真と陽貴に比べて弱い。

 結花と日常的に関わりがない。むしろ避けている。

 

 親戚の集まりの度に、悠真のいないとこで抱きつかれたり、ベタベタ触られたり、彼の妻の悪口を言われる。

 悠真に相談した上で止まる訳でもないので、陽貴だけ話していた。

 

 今回悠真と結花が離婚騒ぎになっているのは知っているので、これ幸いとして悠真にぶちまけた。

 隆太も陽貴同様、悠真に離婚してほしいと思っている口であるが、よりを戻すならうちに関わらないようにしてほしいと条件つけた。


 さて、結花は悠真と陽貴が辞めたことにより、後ろ盾がいない状況になってしまった。

 野崎は2月の段階で結花を辞めさせようと考えていた。

 

 だから厳しいことで有名な尾澤を呼んで、結花を自滅させるようにさせたかった。

 しかし2人が意外と上手くやれてること、少し真面目にやるようになったことで、スタッフから評判が少しずつ上がっていったので、辞めさせる材料が見つからなくなった。


 とはいえ、尾澤は2月から4月までと期間限定で来ただけだ。

 尾澤と後ろ盾の身内がいなくなったのを狙って、6月いっぱいで辞めるように言った。

 結花はじめ、尾澤や他のスタッフ達は辞めさせるのはおかしいと野崎に抗議した。 


『確かにゆいちゃんは最初はあれだったけど、尾澤さんのおかげで頑張ってきてる』


『依田さんが描いた野菜や果物のポップが好評で、ネットでも話題になっている。うちにも描いてほしい』


『おばちゃんの間で密かにゆいちゃんのファンがいるから、それはさみしい』


『戦力が増えたというのに、辞めさせるのはおかしい』


 スタッフ達の話を耳を貸さず、野崎は「他所の店舗に行くかやめるかどっちかにしろ」と進言した。


 結花は他所の店舗を希望したが、先方から人は既にいるからと体よくお断りされた。


 他の店舗でも結花の評判は良くも悪くも耳に入っているので、関わりたくない、一緒に働きたくない――トラブルメーカー押しつけるな、男性スタッフに手を出しかねないからちょっと……つまり《《引き取り拒否》》。

 野崎は他の店舗が拒否している、行き場がないのを分かってて、事実上退職になるようにした。

 

 ――結花は本当に《《無職のおばさん》》になってしまった。


 悠真と陽鞠と義理家族で同居は結花を釣るためのエサに過ぎなかった。


 実際は、陽鞠から顔すら見たくないと言われたので、悠真から離れで住むように言われた。

 義理家族の手伝いや家事とお風呂だけ中に入れるが、悠真と陽鞠と一緒に食卓囲むのは出来ない。

 2人の帰りが遅いからである。


 それぞれ帰りがバラバラでも、作るのは結花の役目。それが眠くても。帰って来る連絡が来るだけでマシである。

 揃っても結花は話に入れてもらえない。


 陽鞠から合いの手入れるように、黙れとか失せろとか言われるから。


 ――あんたに復讐し続けるから。


 宣言通り、陽鞠が結花に話しかける時は、憂さ晴らしにするときだけ。

 黙れとか失せろとか言われて、2人で喧嘩になる時がある。悠真も結花にきつい言い方をする。

 悠真がいるときは表面上止めるが、こっそり言い過ぎるなと陽鞠を止めるだけ。強く言わない。

 夫婦で話すとしても事務的なことばかり。


 そんな中、結花の逃げ道ができた――パパ活だ。

 おじさんターゲットに、アプリを入れて出会いを探す。


 というのも、結花と悠真は離婚届を出してないものの、事実上敷地内別居となっている。

 パートもクビ、家族からないがしろにされている結花にとって、この手のシステムは嬉しいものだった。


 クビを言われてすぐにパパ活アプリを入れた。

 ネットで楽に稼げる方法とさがしたら、パパ活のワードが出てきた。


 やっぱり汗水たらして働くのは性に合わないね。


 ほんと馬鹿馬鹿しい。真面目な人演じるの疲れた。


 暗黙のルールとか、コンプライアンスとか、セクハラとかいちいちうるさいし、力仕事なんてもう2度とやりたくない。 


 世界一可愛いゆいちゃんを待っている男の人達は沢山いるんだから!


 パパ活やればあわよくばお金持ちと結婚できるかな?


 年齢はきちんと誤魔化さず、優しい人募集ですと、自慢の写真を載せて。目元を隠して。


 無理かと思ったら意外とあっさりいけた。辞めてくれと言われて6月から10回ぐらい行ってる。


 年齢は同い年から、上は60代のオジサマ。


 職業も様々で、会社経営者、役員、教師、政治家の息子など。


 内容は食事がほとんど。あといいパパは、欲しい服やカバンを買ってくれる。

 家にあったブランド品は夫と娘に全部売られてしまった。慰謝料の足しとして。

 

 もっというと、夫が趣味で入ってるクイズサークルの道具や本を売って私と母の懐に入れてたことバレてしまった!

 その弁償代金見て見てびっくりした。クイズのボタンで5万するって‼


 夫は弁償するか、ボタンを作れって迫ってきた‼

 

 そんなのゆいちゃん無理! と大人しく給料から支払った。


 本は非売品だからアプリ内で私のアカウントに通報者されてて、もう凍結されちゃった。


 正直生活きついの! たかが過去のことでこんな支払いしろだなんだ、めんどくさい。離れでの使用料として3万ぶんどられるし‼ 身内なのに何で?!


 家の中は娘がいるときは入れないし、話しかけても罵倒されるし。

 そういう意味ではパパ活は私にとって逃げ道であり、生活の糧なの。


 夫や娘とか義理家族はチヤホヤしてくれないけど、パパ達は、ぶりっ子やればゆいちゃんの言うことコロッと聞いてくれる。

 夫と娘にバレないように、離れにパパ達から貰ったブランド品やお金を隠す。

 また勝手に売られてしまうから。


 娘も真面目でほんとつまんない女よ? お説教ばっか。

 誰に似たんだか。夫ね。


 まぁ、成績はいいらしいから、有名どころ行って、お金持ちと結婚して、ゆいちゃん楽にして欲しいぐらいよ。その前に、娘を取ってくれる人いるかね。

 私と違って地味目な顔だから。


 男子にモテた話もきいてないし、付き合ってる子の話もない。


 そういう意味では、ゆいちゃんまだいけるの。みんなは痛いおばさんって言うけど、やっぱり可愛い子の方がモテる。

 今日相手する《《パパ》》は、50代半ばの会社役員のオジサマ。

 会うのは3回目。


 社会人になった2番目の息子が独立したのを機に、夫婦仲が微妙になっちゃったんだって。

 1番上の息子は、都会で働いていて、結婚してるみたい。

 息子達の写真見たけど、お父さんに似てイケメン。


 うちの夫とは大違い。

 ワンチャン2番目の息子と仲良くなれないかなー。その前にパパを狙わないと。

 パパと会うのは西南中央せいなんちゅうおうのショッピングモール。

 体の関係ないだけましよね? いつも3万から5万くれて、プラスブランド品くれるから、まじ嬉しい‼


 こころ浮き立つ結花だが、災難はパパ活帰りに来た。


 ――従姉妹の望海のぞみに見られたのである。


 結花本人は全く気付いてなかったが、図書館帰りの望海と子供達の朝陽あさひ夕陽ゆうひが、結花と知らない男性が親しげに話してる姿や、お金を貰ってる姿を見た。

 場所は西南中央に近くにあるコーヒーショップ。離れた席から撮影して、悠真と陽鞠に送りつけた。

 当然2人の耳に届いた。 

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