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世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!  作者: 月見里ゆずる
6章

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7


 依田悠真は実家のリビングでのんびり過ごしていた。

 

 今日は休みだ。娘は春休みだが部活に行った。

 

 冬休み前に部活で色々なことを言われて、一時期行きたくない、学校も嫌だと訴えてた。

 

 理由は妻の過去のこと。担任や同級生に散々言われたと。

 

 まさか娘の部活に入ってる子の父親が、かつて妻にいじめられてたと聞いた時は耳を疑った。

 

 娘が嫌がらせされるのはしんどい、先生とちかと話して欲しいと訴え、冬休みに、担任と部長である浅沼智景とその父親で同席してもらった。

 

 彼に聞いたら本当のことだった。


  ――私は以前から、娘に杖の大切さを話してました。同級生にいたずらで杖を隠されたり、壊されたりされた話もしてます。まさか、その犯人が母親をやってたとは思いませんでした。夏のコンクールで見たんです。

 

 昔と変わらない喋り方と態度。洪水のように中学時代の思い出があふれ出ました。

 

 娘は私の昔話を聞いて、お嬢さんに八つ当たりしてるんだと思います。


 遠回しに私の娘が同級生に嫌がらせされるのは仕方ないと正当化しているような物言いだった。

 私が代わりに謝ったって、向こうが許す訳がない。


 ――親の因果って子に報いるっていいますからね。


 ねっとりした顔で言われたとき、全身に言葉に出来ない怒りが走ったが、そこはこらえた。

 

 他の人がいる手前だったこと、この段階で怒ったら向こうが「あの依田結花の旦那も似たもの同士」と叩かれるのが目に見えてた。

 

 親の因果を理由に娘がいじめられる筋合いはないこと、これ以上やるなら、出るとこでます。担任も同様です。と啖呵をきった。

 

 それ以来多少治まったようだが、部活ではみんなに距離を置かれている。

 

 表向きはなんともない風だが、陰で嫌味が飛んでくるのは変わらない。それでも、娘が行くのは、負けず嫌いな所があるからだ。

 

 悠真はメッセージアプリを眺める。

 

 相変わらず自分本位なことしか送ってこないな。

 

 ため息が出るレベルを通り越している。

 

 結花は早く帰ってきてとか、職場のみんなにいじめられてるのと泣き言ばかり。

 妻の結花と別居して2ヶ月。2月も半ばを過ぎた。

 

 再構築の条件として、働くことを提言した。

 何より、マッチングアプリで男性を騙していたことから、慰謝料を支払う立場になってしまったから。

 結花の勤務態度の様子は毎日陽貴から送られる。いないときは、教育係としてきてもらっている尾澤からだ。

 

 正直ここまで世間知らずで非常識だとは思わなかった。

 服装はもちろん、言動も家でいるときのまま。男性スタッフ達にちょっかいかけたり、女性スタッフ達には陰湿な嫌がらせやマウント取ってると。

 注意したら反抗的になったり、社長の妻であることや呉松家のお嬢様を引き合いにして脅したり、威張り腐ってると。

 1月から入ってもらってるが、この1ヶ月でやめたいとスタッフが続出している。


 ――結花さんを外で働かせなかった理由がなんかわかる。 

 

 結婚の時の条件として、結花を働くようなことはさせないと義母の周子からしつこく言われた。

 それも理由の一つだが、本当は周りとトラブル起こすリスクが高いことからだった。

 そもそも結花は、子どもの頃から、周子から玉の輿を目指し、専業主婦で夫に養ってもらうのが前提で育った。

 上2人はそれに反発していて、母親と必要最低限しか連絡取らないようにしている。

 やっぱり働かせるんじゃなかったかと後悔する反面、今の状況だと離婚になってもおかしくないから、今のうちにお金貯めとけとせめぎ合っている。

 

 店長である野崎は「社長の身内とはいえ、こんな非常識な人入っても困る。なんでうちが犠牲にならないといけないんだ」と詰めてきた。

 悠真の評判も最近下がり気味である。

 非常識な身内を入れたことで、他のスタッフ達の業務に支障きたしているということからだ。

 

 今までスタッフの身内を入れたことは何度かある。しかし、ここまでひどいものではなかった。

 結花だけがひどいんだと言いたい所だが、あの問題あるスタッフの身内という枕言葉がついて回る。

 

 悠真は結花の被害者でもあるが、スタッフ達にとって加害者でもある。それは兄の陽貴も一緒だ。

 

 スタッフ達や野崎の言うとおり、結花の慰謝料を支払うために稼ぐ必要のために、スタッフ達が犠牲になる必要も義理もない。

 しかし悠真としては、少しでも社会にもまれて欲しいという願いがあった。

 家で何もしないなら、せめて働いて欲しい。


 ――小人閑居にして不全を処す。

 

 暇人はろくなことをしないという意味だが、結花の状況をそのまま表している。

 

 どうしたら自分の立場を理解できるのだろうか。

 

 野崎や尾澤に言われてもなお、私悪くないと一点張りだ。

 同性から嫌われるタイプは要注意と巷では言われているが、本当にその通りだ。同性である娘からもよく思われてない。



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