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世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!  作者: 月見里ゆずる
5章

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3

11時頃になると買い物客が賑わう、

 

 店内は流行りの曲がけたたましく流れたかと思いきや、スタッフを業務の呼び出しのアナウンスが流れたりと、やかましい。

 

 せっせとカートや籠を片付ける人、ピークに合わせてレジ打ちに入る人……。

 結花は普段いくお店とは違うジャンルということもあり、顔をしかめていた。


「ここが、鮮魚コーナ……駐車場側に近いドアのあたりに、野菜があるでしょ……それから……」


 野崎の話を上の空で聞く結花は、男性スタッフに好みがいないか狙いを定めるが今の所いない。

 先程目をつけていた男子高校生の姿がない。


 内心舌打ちしながら、野崎の後ろについていく。


 それそろ12時近いし、かえっていいよね? 


「依田さん、何かご質問ありますか?」


 惣菜コーナーで足を止めた野崎。いきなり質問されて、結花は「あの、野崎さんって既婚者ですか? 彼女いない人っていますか」と尋ねる。


「……今は関係ないことですし、お答えする義理はございません。プライベートのことをいきなり聞くのは失礼でしょう。先程も人事部長に言われたでしょう」

 期待はずれと言わんばかりにやれやれとため息つく。


「なによ。質問ぐらい答えてよ。ハゲの癖にキッショ!」


「業務のことならともかく、今はそういう話をする関係でもないでしょう。見た目を直接貶すのは失礼じゃないですか?」


 見た目のことを言われ、野崎は呼吸を整える。


 なんなんだ、この人。


 お嬢様育ちって聞いてたけど、ほんとどこがだよ。


 成金の間違いじゃないか?


 いつだったかネットで、お上品な貶し方みたいな内容が話題になっていたが、遠回し過ぎて分からなかった。あれとは正反対。火の玉ストレートすぎる。

 

 結花はフンとそっぽ向いて「なんなのよ、ケチっ!」とアピールする。

 

 今時そういうこといきなり聞いてはいけないって、教わってないんだろうな。下手するとセクハラ案件だよ。

 

 色々な意味で時代に取り残されたのかもしれない。

 

 ニュース見ないって言ってたしなぁ。

 

 野崎の内心のぼやきは胸の内にしまう。

 一通り場所を案内した頃には休憩タイムだった。


「では、こちらまた書類の手続きと勤務のルールに関する話をいたします」



「はーい」

 面談スペースに2人きりで今後の勤務予定や、どういった人が働いているかや、職場のルールを説明を受けた。


「では、次は水曜日なので、遅れずに来てください」


 野崎の話を無視して結花は退出しようとするが「ここはありがとうございました。よろしくおねがいしますって言ってください」と止められる。


 しぶしぶ「ありがとうございました。よろしくおねがいします」と言うが、棒読みでまるで馬鹿にするような言い回しだった。


 結花は着替えてからバックヤードに目を向ける。


 事務机と椅子が並べられていて、おばちゃん3人と、男性2人だろうか。

 おばちゃん達も男性2人も固まって座っている。


 結花は当然後者の向かいの席に座って、やっほー、元気? と声をかける。


 男性2人はいきなり声をかけられて、顔を見合わせる。


「お、お疲れ様です」


 大人の対応をして、スマホとち睨めっこしながら、パンを齧った。


「ね、名前は? 年はいくつ? 彼女いるの?」


 矢継ぎ早にプライベートのことを質問されて、男性達は結花と顔を合わせないように必死になる。


 返事をしてくれないのか、結花は拗ねるように、鞄から菓子パンとペットボトルのお茶を取り出した。


「ゆいちゃん、今日から来たから、わかんないことだらけでー。野崎って人はうるさいし……」


 そこから始まる野崎に対する悪口。甲高い声に負けないように有線が流れる。

 男性の1人がおばちゃん達に勘弁してくれと目線を送った。


「よ、依田さん。こんにちは。こっちおいで。今日は初めてで疲れたんだね」


 おばちゃんの1人が助け舟をだした。


 しかし結花はおばちゃんの話に「あんただれ? あんたに話聞いてくれなんて言ってないけど」と喧嘩を売る。


「私は、太刀川裕美たちかわひろみと申します。今のみんなに聞こえるような言い方だったよ。それにそこのお兄さん方はスマホとにらめっこしてるんだから、そっとしといてあげて。ほら、おばちゃん達が話聞くから!」


 そうよとあとの2人のおばちゃんも頷く。

 おばちゃん達の勢いに負けたのか、結花はしぶしぶ太刀川の隣に座る。


「まー、可愛いねぇー! お人形さんみたい!」


「ほんとねぇー! 年おいくつ? 20代?」


「いや、10代かな? 学生さん? ゆいちゃんって呼んでいい?」


 おばちゃん達が容赦のことをコメントしてくれたのか、結花は調子良く自分のことを話す。

 太刀川、小野田おのだ塩浦しおうらと名乗ったおばちゃん達は、惣菜部門の人達で、結花同様、朝早くから来て出勤している。


「確かにねー、店長は厳しいけど、無理もないかなと思う。正直自己紹介の時びっくりしたよ! ああいう服は動きにくいからさ、これから動きやすいものの方がいいよ」


「店長の前ではきちんとやっとけばいいの。私達の前では適当でいいから!」


「そうそう! ……とはいっても、店長より厳しい人がまだいるのよねー」


 3人は同じ人を思い浮かんだのか、確かに……ゆいちゃんと合うのかと心配する。


「えー、まだ厳しい人いるの??」


 結花は盛大なため息をつく。


 店長が口うるさいというのに、それより厳しいって、ここは厳しい人しかいないの?! みんな意地悪ね。

 おばちゃん達は甘やかしてくれそう。


「あー、農産スタッフの尾澤さんと福島さんとかでしょ? 基本厳しい人ばっかね。尾澤おざわさんは入って十数年の40代、福島さんは高校からうちでバイトで入ってたから12年かな」


 その後おばちゃん達から厳しいスタッフに気をつけること、何か言われたらいつでもおいでと言われ、安堵した。


「ね、車で送ってくれない?! ジュースおごるから!  私一人で帰れないのー」


 男性スタッフに声をかけるが「免許とる年齢じゃないので」と切り捨てられる。


「けちっ! フン、タクシーで帰る!」


 そういえば、仕事でタクシー乗る用事あれば、請求出来るって言ってたわ。

 結花はタクシーのアプリを開いて、迎車をお願いした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 今までこういう、ざまぁ系?は読んだことがないので新鮮で面白かったです。 大体こういうのは男性側の視点で書かれることが多いので、女性側の根本的な考え方を知れて良かったです。 続きはまた時間があ…
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