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世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!  作者: 月見里ゆずる
4章

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8

「だから吹部も恋愛禁止なんですね……《《諸悪の根源》》は母ですか……」

 

 陽鞠は納得出来たのと同時に絶望と呆れがわき出た。


 ただの暗黙の了解で恋愛禁止じゃなくて、母の身勝手さやワガママで、人間関係崩壊させたり、部活に影響を出していた。

 これがいま自分の代迄来ているし、その前の先輩方も納得本当の理由を知らないままやってきたのだろう。

 母は後輩達から恨まれる立場だ。


「あなたのお母さん、陰でなんて呼ばれてたか知ってる?」


 陽鞠は頭を横に降った。


「“トラブルメーカー楊貴妃”ってね。知ってる? 楊貴妃って、世界三大美女に入る中国のお姫様。あと”春中はるちゅうのマリーアントワネット”とか”サークルクラッシャー呉松”って呼ばれてた」 


 陽鞠は思わず吹き出した。


「そ、そんなあだ名あったんですか。楊貴妃やマリーアントワネットに失礼だと思います……」


 歴史人物をもじったようなあだ名で呼ばれてたとは。

 確かに間違ってはないと思うけど、彼女達もうちの母のような人間と一緒にされたらたまったもんじゃないと思う。

 個人的にはサークルクラッシャー呉松が一番似合うと思う。


「そうね。あれ考えたの誰だったかな。男子が勝手に呼んでたのが広まったの。ああいうの最初に思いつく人はスゴいと思う」


「赤澤先生の話聞いて、やっぱり母は昔からあんな感じだったのがよく分かりました。メンタルが中学生。娘の私ですらこんな人同級生でいたら嫌ですし、関わりたくないと思います」


 担任が自分に当たりキツイのは無理もないだろう。

 かつて付き合ってた男子と浮気した人の娘が、目の前にいる。それが重なって見えるのかもしれない。


「あと、浅沼さんのお父さんの件は、あなたのお母さんがいじめてたの」


 陽鞠の目が剣呑になる。

 いつも昔いじめられてたと話していた母。

 祖母からも繰り返し聞いている。


「浅沼さんのお父さんって、小さい頃に大きな病気して、歩き方が少しおぼつかないの。でもね、トランペットの腕が凄くってね、吹奏楽部の花形だった」


 普段は杖をつきながら歩いていて、体育は基本見学。

 しかし勉強で努力したきたタイプで、学年でも上の成績をキープしていた。


「あなたのお母さんは浅沼さんのお父さんが歩くのに、杖が必要であることを分かった上で、隠したり、窓から投げたりね。かと言って浅沼くんは、あなたのお母さんに怒ったり、手を出すことはなかった。彼は人望があったから生徒会の副会長になったの。そういうのあるからな、あなたのお母さんは、自分より目立つことやチヤホヤされるのが男女誰であろうと気に入らなかったんだろうね」


 智景の父は生徒会引退後、結花による嫌がらせで精神的にダメージが来たのか、1ヶ月近く学校に来なかった。


「あなたのお母さんは浅沼くんを不登校に追い込んだと自慢してたけど、皆全然聞きやしなかった。むしろ軽蔑されてた。それを理解してないのか、彼女はますます悲劇のヒロインになってたよ。学校じゃむりだから、他所の学校の男子と遊び回ってたの。受験なのに。それでもって、雲雀女学院ひばりじょがくいんに入れたからすごいわぁ。あそこ、あなたのお母さんの実力じゃどう見ても無理なんだけどね。多分お金積んだでしょうね。本人もそう言ってたし」


 雲雀女学院はこの辺でも指折りの名門校。

 春の台中学の先輩で行ったのは毎年片手で数えられるほどで、入るのが難しい。

 中学時代優等生ポジションが最低ラインで、それ以外にボランティアとか何かで賞を取ったとか求められる。


 母のタイプはまず無理。一方であるクラスだけお金積めばいけると言われている。多分そこに入ってたと思う。

 そこは裕福だけど中学時代問題起こして入るとこないとか、実力的に無理だが、雲雀女学院という箔が欲しいための人が入るクラス。

 しかも校則がそれなりに厳しい。母のことなので、多分問題起こしてもお咎めなしだったんだろう。


 同級生を不登校に追い込んで、のうのうと贅沢三昧をしている母。その様子をブログやSNSに載せている。


 ちかの父が母にいじめられてるのにも関わらず、母の姿を見たら腹立たしさが沸くのは無理もないと思う。


 仮に母または私が母の代わりに謝ったって、ちかの父の心の傷は癒えないし、自己満足に過ぎない。


 呉松結花の娘というだけで、遠巻きにされるのも、私が辛く当たられるのも、仕方ないの?


 私は私。母と一緒にしないで!


「依田さん、あなたのお母さんがやったことはゆるされるものではない。いくら陽鞠さんは関係ないとはいえ、やられた方は呉松結花のムスメというだけで、”親の因果が子に報いる”を願ってる人も少なからずいる。それだけあなたのお母さんは良くも悪くも地元で有名なのよ。後輩たちに影響与えた意味で」


「それって、私は大人しく《《親の因果応報》》を受けなさいと言ってるようなものじゃないですか。じゃぁ、私はどうすればいいんですか?! 私に母のやらかしなんて関係ないですよね?! 先生も結局、母に恨みあるから、私に辛く当たるのを正当化してるだけですよね?!」


 陽鞠は強く机を叩いた。

 赤澤は一瞬怯んだが「やっばりそういうとこ、お母さんに似てるねぇ」と口角を釣り上げた。


「あんなのと一緒にしないでください」


 さらに強く言い切るが「いや、その感情的な所がよく似てる。ムキになるところも」と煽る。

 赤澤の口調はまるで子どもを揶揄うような楽しみ方だった。


 いやだと言ってるのにも関わらず、わざと地雷を踏んでいくスタイル。

 陽鞠の顔は泣き始めそうなぐらい顔が真っ赤で、赤澤を直視できる状況ではなかった。


「じゃあ、わ、わたし、は、何すれば、引き合いにされなくてす、すむんです?」


 精一杯訴えられることは今ここで言うしかない。


 あの問題児の娘である私がここにいる限り、私は親のことで引き合いにされて、因果応報を理由にして、理不尽な嫌がらせも甘んじることなく受けないといけないのか。それを阻止する方法はないの?


 私は私! 依田陽鞠!


 小学校の時のあの授業参観で、母の姿を見て反面教師にしようと思った。


 勉強も生活態度も、家のことも隙を作らないように。


 呉松結花の娘じゃなくて、依田陽鞠として見てくれるために。


 中学に入ってから拍車がかかったけど、部活と勉強の両立や、先生からとやかく言われないように、先輩から言われないように、地道にやってきた。


 母と顔を合わせたくないから、忙しい吹奏楽部を選んだ。


 担任から話された母の在学中の話。

 自分の知らない所で広まってるのかもしれないし、同級生の保護者や先生達の中で面識があった人や、被害にあった人達がいた。

 そこから知らない人達に話が広まったのかもしれない。

 

そもそも地元で有名なお家なので、母の素行が既に広まってたのだろう。

 母がいじめっ子だからといって、私がそうするとは限らない。そうならない様に、見なされないようにやってきた。

 

 目の前で担任の否定により今までの努力が水の泡になりそうだ。

 なんだか疲れてきた。私はどうも母の罪を償わないといけないみたいだ。


「母親のことを引き合いににされない方法教えようか? ――環境を変えること」

 その一言は陽鞠にとって十分なぐらい心を抉りとった。

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