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3人は面会を申し出て悠真がいる部屋に案内された。
4人部屋で一番入り口手前に依田悠真のプレートがあった。
他に男性3人が入院している。
水色のカーテン越しに悠真と談笑する声が聞こえる。
陽貴がカーテンを開けると、陽鞠が既に丸椅子に座っていた。
白のパジャマ姿の悠真はベットを上げて陽鞠に笑顔を向ける。
「ゆーちゃん、ごめんねぇー! 昨日忙しくってさ、来れなくなったのぉー、許して」
結花は悠真の顔を見るなり、胸元に抱きつくようにして号泣して、病院に行けなかったことを弁解する。
結花が泣いてるそばで「可哀想に……」と周子が背中を摩る。
「ほら、泣かないで? 悪い、陽鞠、台に置いてあるティシュお母さんに渡して」
陽鞠は無言で結花を見ながら渡す。
「なんなの、陽鞠ちゃん! お母さんにそんな態度で! 失礼じゃない?!」
陽鞠の態度を見た周子はキーキー言いながら注意する。
陽鞠も陽貴も結花がわざとらしく泣いてるフリをしているのを分かっていた。
本当に泣くのなら、嗚咽をもらして、下手なことは言わないから。
「まぁ、元気そうでよかったわ。さあ、これからすぐ退院して、結花ちゃんのために働いてもらうわよ!」
周子の発言に結花も同調して、さあ、早くベットから降りてと促す。
「働いてもらう……?」
言葉が弱くなる悠真に対して、「ほんとヘタレすぎるわ! とっとと働け!」「働かないと今後おたくの所の会社の支援止めますよ」と結花と周子が詰め寄る。
悠真は唇をぎゅっと結ぶ。
陽貴も目を丸くして言葉を出すにも出せず、表情が強ばる。じっと結花と周子の発言を聞くだけ。
「お母さん! 何言ってるの?! お父さん働きすぎなんだよ! お母さんのせいで! ちょっとは休ませて!」
黙っていた陽鞠が椅子から立上がって、口を出した。両手に握り拳が出来ていた。
「なに言ってるの? お父さんはね! 私を幸せにさせる、楽にさせると約束したんだから、絶対守ってもらわないと! あんたには関係ない話でしょ?! 黙っててくれる?! それに今日あんた学校休んだでしょ?! もうお父さんの顔みたんだから今からでも学校に行きなさい! 内申点響くわよ! あと部活もいくこと! その後は晩ごはんの準備して!」
陽鞠は椅子にゆっくり座り直し、結花と周子に歪んだ表情を向ける。
「陽鞠ちゃん、ちょっと」
陽貴は陽鞠と一緒に悠真の病室から一旦席を外して、ナースステーションの廊下へ窓側に寄せて耳打ちした。
病室の廊下には、ネイビーのポロシャツとパンツを履いた清掃員達や、赤のナースジャケットとパンツスタイルで白のナースシューズを履いた職員達が、銀色のワゴンを押して病室に巡回している。
「ちょっとあっちに行こう」
ナースステーション方面の案内図と一緒に談話室がある。
2人は談話室に向かった。