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 執行猶予がついた結花は、都内の更正施設に入った。

 宣言通り、稲本夫妻と悠真そして静華も身元引き取りを拒否したから。


 施設に来て1ヶ月経ったが生活に大分なじんだ。

 お風呂上がりの結花は自分の部屋で、せっせと夜のスキンケアに熱心だった。


 結花の機嫌はすこぶる悪かった。

 夕飯前に、施設の監督の女性に個別で注意されてしまった。


 理由は洗面所とお風呂の使い方だ。

 両方とも結花が長時間占領して、他の入所者達が入れなくって困っていると。

 

 施設には洗面所とお風呂が2台ある。

 現在入所者は結花を入れて10人。

 入浴の時間は夜の19時から21時の間に済ませることになっていている。

 結花は1番風呂で30分入り、洗面所も30分かけて使うので、他の入所者の生活リズムに影響している。

 入所者達は、結花の入浴が終わるまで空いている所で、22時の就寝時間に間に合うようになんとか回している。

 

 ただでさえ洗面所は朝晩戦争になるというのに、結花がのんびり構わずやるので、入所達は不満がたまっていた。

 しかも結花が使った後の洗面所は、水しぶきが広範囲に出てる。

 本来なら、使った後に毎回掃除することに鳴っているが、結花はやらないので、後に来た人が先に掃除している状態である。

   

 その場で「気をつけます」と少し涙を見せながら、反省しているように装った。

 

 説教や注意を聞くのがウザいので、とっとと終わって欲しいだけ。

 それに泣いている姿を見せれば、罪悪感を植え付けられる――と目論んでいたが、監督は顔色変えずに次から気をつけるように、涙拭いてくださいと、ティッシュを渡しただけだった。



 たかがお風呂とか洗面所でいちいちうるさいんだよ!

 ほんとむかつく! 誰がチクったのよ!

 底辺の癖に生意気ね!

 

 監督にゆいちゃんの泣き落としが通用しなかった……やっぱり同性だとダメね。

 あー、男の人来ないかなぁ。

 20代のイケメンの人!



「ゆいちゃん、今日、洗い物の当番でしょ? まだやってないでしょ?」


 同室の女性に声をかけられた。20代半ばの華奢で肩まで届くぐらいの金髪。


「えー、やっててよ。ゆいちゃん、スキンケアでいそがしーの」


「それさ、どこで買ってる? 効果ある?」


 女性は話題を変えて結花の美の秘訣を胸を弾ませて尋ねる。

 結花の機嫌が良くなった頃に、もう一度洗い物やろうよと言うとあっさり「そうだね」と答えた。 


 同室の女性のおかげで、更正施設での結花の評判は良くなった。

 お行儀よく振る舞い、作業は真面目に……寮母やスタッフからは評判が上がった。

 言葉遣いも丁寧になり、多少丸くなった――は表向きの顔だった。


 1ヶ月後、金髪の女性が退所してから、結花の自己中さと陰湿さが再び顔出した。

 生活のルールを守らず、後から入ってきた子に対して、プライベートを聞き出し、弱味をついて、脅した。

 気に食わないことがあれば、八つ当たりや、怪我をさせるようなことをして、ニタニタ笑っていた。


 被害者達は監督に結花からの嫌がらせを訴えたが、証拠がないことや結花の日頃の態度から、そんなわけないと一蹴され、泣き寝入り状態だった。


 更正施設は2、3ヶ月で出て行くので、短期間で住人が入れ替わる。そのため結花の悪行は知られることなく、自立することが出来た。

 元々共同生活無理な結花が早くでるために、優等生キャラを演じていただけだった。

 

 他の人同様3ヶ月で出た結花は、ホームレスになってしまった。

 冬の寒い頃だったが、結花の姿を見た支援団体の男性が「寝食、職場が保障されているところがあるので、いかないか」と誘った。

 働くのは不本意だが、衣食住そろっているならとすぐに話に乗り、その場所へ向かった。

 


 

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