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「服部さん、今の言葉取り消せないですよ。『人権剥奪』とか『死ねばいいのに』って。他もそうですけど。呉松さんがこれで自殺したらどうするの?」


 丸岡が服部に対抗するかのように強い口調で嗜めるが、彼女は舌打ちして「そうならそこまでの人間でしょ。言われたくないなら、さっさと仕事して成果見せたら?」と切り捨てた。


 彼女が自殺したら困るのは周りの人間だ。


 おそらく連絡取れない娘に情報が来るだろう。 

 娘からしたらとんだ迷惑だろう。


 彼女には慰謝料の支払いと母親が残した借金がある。

 全部返済、支払い済ましてもないのに死なれたら、そのお鉢が娘に回ってくる。


 彼女は娘と連絡取れないと言っていたので、おそらく着信拒否や住所を第三者から教えられないようにされているのだろう。


 彼女の過去のことは本人から、社長からもちらほら聞いているし、少し前にネットで炎上した人と悪い意味で有名になっていた。

 社長がかつて彼女からいじめられてたと言っていて、容赦なく扱うと言っていた。


 もしかして復讐の意味で、彼女をあえて《《採用させた》》のだろう。


 服部が言い方きついのも分かった上で、ここに《《異動させた》》のだろう。


 今まで散々社長や他の人が言って来たことを、今度はいわれる番だとわからせるために。


「服部さん、その発言はアウトです。今ここで彼女が死なれたら、色々な意味で困りますよ。ほら、怯えてる人いるじゃないですか」


 丸山が指差したのは、チャレンジ枠の1人の女性の落合だ。


 彼女は知的障害があり、人付き合いに難ありなタイプだが、仕事熱心できちんと完遂してくれる。


 結花が来てから、丸山や服部と言い争いしているのを見て、3人の顔を見るだけで怯えている。

 落合は度々「呉松さんと服部さんが怖い」と丸山に訴えてた。


 結花が異動してしばらくしてから、怒鳴り合ってる姿みた影響なのか、仕事のパフォーマンスが落ちてる。


 書類の入れ間違いや、うっかり忘れなどが頻発するようになった。

 口数も減り、返事の声も小さくなってきた。


「はぁ? そんなのでいちいち怯えてたら生きていけないよ? そもそも誰かさんのせいでこうなったんだから」


 服部はすすり泣きしている結花に、広角を上げて眉根を上げながら視線むけた。


「あんたも泣いてないでさっさと仕事やって。このノロマ! 泣き顔見苦しいんだよ! でた! 悲劇のヒロイン面か? まじ見苦しいんだよ。鏡見たら? めっちゃうっぜー。世界可愛いじゃなくて自称でしょ?」


 自称という言葉に他の同僚も「それな」と続ける。


 違うもん。みーんなゆいちゃんのこと可愛いって言ってくれる。


 いつまでもお姫様扱いされるって。


 どこいっても可愛がられるから、何もしなくていいって。人はつかうもの。


 アラフォーになってから、今までの口調やノリで話すと、軽蔑やからかいの目、腫れ物扱いされるようになった。


 あれこれやってと言っても自分でやれと、やってくれなくなった。


 泣いてその場を切り抜けようとしたら、うんざりしたような顔で、ほっとかれて、誰も慰めてくれない。


 ムスッとしても、だーれも察してご機嫌取りしてくれない。


 働くなんて慣れてないし、そもそもゆいちゃんの人生設計には全くなかったのに!


 全部周りが肩代わりしてくれると思ってたのに!


「服部さん、先程の発言、社長に報告しますので。落合さんは少し席外して、クールダウンしてください。呉松さんは、これから私とお話しましょう」 

「私は事実を言ったまでです! この人も散々人を悪く言ってきたんだから、これぐらい言われるのは当然でしょう?」


 丸山は服部の言い分を無視して、落合と結花を連れ出した。


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