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 周子も施設のスタッフに家族の話をするときは、ほとんど結花のことばかりである。

 

 いかに可愛いか、いい子なのか。

 良輔と静華は夫に似て地味で面白くないと。


 その面白くないと言われている息子が定期的に周子の身の回りのことや、手続きをしにきているのに、口に出すのは来てない結花だけ。

 それか他の利用者の悪口だ。


 周子は気に入らないスタッフや利用者達にマウントとりしていた。

 利用者と話するときは、自分がいかに家族に愛されているか、娘である結花が可愛いか自慢して、頭しっかりしてるのよと遠回しにアピールする。

 

 歩くのに少し介助が必要な人に、手伝うふりして、わざと段差の多いところ連れて行ったりと、陰湿な嫌がらせをしている。

 それで1度けがにつながり、そのときは施設のスタッフ達の責任として、家族に平謝りした。

 

 周子は「急に立ち止まったから、手伝っただけ」と証言していたが。 


 スタッフ達にナースコールですぐに駆けつけなければ、のんびりされてるのねとか、これだとお嫁にいけなさそうねなんて嫌味がとんでくる。

 男性スタッフには結婚しているのか、彼女いるのか聞いて「うちのゆいちゃんにふさわしい相手さがしてるの。どう? 呉松家の一員になれるだけでありがたいのよ」なんて言っている。


 最初はスタッフ達は冗談だと思っていたが、毎回言われるとげんなりする。


 特に一部の男性スタッフ――特に若い20代から30代の人達から「周子さん苦手です」と。

 まさか娘まして、40代の娘の婿候補扱いされるのなんて思ってもないことだろう。


 スタッフだけでない。


 頭のしっかりしている利用者にも「うちのゆいちゃんをおたくの息子さんと結婚させてないかしら? それで私を介護してもらうの」なんて言って、凍り付かせている。

 周子と利用者は表向きいい感じに見えるが、いつもおしゃべりに付き合っている人達は、苦手意識を持っている人間も少なくない。


 おしゃべりグループのメンバー達は


『周子さんは穏やかな口調だけど、なんか怖い』


『たまに無神経なことを言われて辛い』


『下手に言い返すと何されるか分からないから、黙って聞いているだけ』


『息子と周子さんとこの娘さんと結婚させたらどうって言われたけど、正直嫌だった。とてもじゃないけど、周子さんと親族なんて嫌よ』


 周子に対して少し苦手意識がある。


 本心では、付き合い切れない所がある雰囲気だ。


 たまたま周子の最初の話相手が彼女達というだけで、そのままずるずると続いている形だ。


 たまに面会にくる良輔と周子のやりとりを見てる彼女達は、あれが気に入らない、これが嫌だと言い合いしている姿を見て、良輔に同情気味である。

 

 周子も勝手に利用者達にどれだけ家族に大切にされているかマウントを取りたいだけだ。

 だから、少しでもいいパジャマや衣類を買うように良輔にねだる。  


「ばかいってんじゃね! お前の状況分かってんのか? それにお母さんも、また利用者いじめてただろ? 昨日施設から連絡きたんだよ!」


「あらー、そんなことしたっけ? 覚えてないわー」


 うふふと笑いながらごまかして、りょうちゃんもうるさいわねと周子は結花に視線を向ける。


「お母さんがいじめるわけないじゃん」


「じゃぁ、なんで施設の人から連絡こっちにきてんだよ!」


 今回良輔が施設へ来たのは、結花に周子の現状を見て、将来自分もそのようになる可能性あると自覚させること、もう1つは、他の利用者からのクレームについて。

 

 ――他の利用者さん達から、地味な嫌がらせを受けてるというお話を聞いてます。


 耳が遠いご利用者さんに、耳元で嫌味言ったり、足の悪い利用者さんの杖をわざと遠くに置いたりなんてしてました。


 それで転んだんです。これで2回目です。


 お母さんと関わってる方達が立て続けに精神的に追い詰められたり、元気なくなっています。


 確証はないですが、お母さんが来てからそのような変化が増えてまして。


 遠回しに施設スタッフから「おたくのお母さんのせいで」と言わんばかりにクレームが来てた。

 良輔の電話に数日前来て、普段の生活状況の報告かねて話をしたいと。


 ――《《また》》施設を変えないといけないのか……。


 今いる施設は2件目。


 以前、周子は他の利用者達に、嫌味や陰湿な嫌がらせ、男性利用者達と絡んで男女トラブルに発展。


 ターゲットは、少し衰え気味、気の弱い人達や優しい人達だった。


 男女トラブルの段階で、離れた方がいいと良輔が判断した。


 今の所も時々周子が男性利用者達に絡んでいる。


 その利用者達同士で周子を取り合いしている姿を見て「あらあらかわいいねー」と楽しんでいる。

 その話も電話でされたとき、いつトラブルになるか気が気でない。


 なのに、この母は自分が被害者と言わんばかりに主張する。


 妹とメンタルが一緒だ。さすが《《諸悪の根源》》なだけある。

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