魅惑の粘魔(パフュームスライム)
リリスはニブルとともにスライムの親玉を倒した後、少しの間その場に立ち尽くしていた。戦闘の余韻が残る中、彼女はニブルの方を見た。
「本当に、助かったわ…でも、あのスライム、ただの怪物じゃなかった。」
ニブルは頷いた。「ああ、あのスライムはただの脅威じゃない。背後に、もっと大きな力があることを感じる。」
リリスは少し黙り込んだ。彼女の心の中には、何かが引っかかっているようだった。ニブルはその気配を感じ取り、リリスに問いかけた。
「君、何か隠していることがあるのか?」
リリスは一瞬顔を曇らせたが、やがて深く息を吐いて言った。「実は、あのスライムは…私の元々の上司、いや、元々の女王よ。」
「女王?」ニブルは驚き、リリスの話に耳を傾けた。
「そう。パフュームスライム…あれは昔、人間だったの。」リリスは話し始めた。「その女王は、私と同じように美しさと魅力を持っていた。でも、あの人には…ある運命があったの。」
リリスは目を伏せ、思い出にふけるように語り続けた。
「彼女は、かつて絶世の美女として、歓楽街を支配していたわ。でも、誰にも心を許さなかった。ある時、ひとりの冒険者に出会った。彼は、まるで夢のような人物だった。勇者だと言われ、強く、そして優しく、誰よりも輝いていた。でも、その人は、私が思っていた勇者じゃなかった…」
ニブルは静かに彼女の言葉を聞きながら、リリスの目の前に浮かぶ過去の影を感じ取っていた。
「その勇者は、偽物だった。私が心を許したその人は、実はただのチャラい男で、女をゴミのように扱い、取っ替え引っ替えしていたの。」リリスの声は震えていた。「私は騙されて、結婚まで考えた。でも、彼は私を裏切り、顔に火を浴びせて…その結果、私は顔に大きな火傷を負った。」
「そんな…」ニブルは驚きと同時に、リリスの心の痛みを感じた。
「そして、あの偽の勇者は失踪した。私は愛する人と、私の誇りを一瞬で失った。」リリスは涙をこぼしながら続けた。「その時、スライム軍の科学者が声をかけてきたの。顔を戻してあげる代わりに、スライムの細胞を取り入れ、私の命令を受けて生きることを提案された。そして、私はそれを受け入れた。自暴自棄になり、何もかもを投げ出して。」
ニブルはリリスを見つめ、彼女がどれほど苦しんできたのかを理解した。
「そして、彼女はその後、歓楽街の女王として君臨した。スライムとして生きることになったが、外見は人間のままだった。だが、内面はもう…スライムとしての力に支配されてしまっていた。」
リリスは涙を拭い、力強く言った。「だからこそ、私は彼女を倒さなければならない。あのスライムは、私が逃げられなかった罠の象徴だもの。」
ニブルは彼女の決意を感じ、頷いた。「君がそのために戦うのなら、俺も力を貸す。」
リリスは感謝の気持ちを込めて、彼に微笑んだ。「ありがとう、ニブル。でも、この戦いは私だけのもの。私が決着をつけるわ。」
その瞬間、街の一角から一陣の風が吹き抜け、異様な匂いが漂ってきた。リリスはその匂いに反応し、目を見開いた。
「来たわ…あの女王が…」




