vsパフュームスライム
### 8話:激闘、パフュームスライムとの決戦
リリスは静かに息を整え、目の前に広がる歓楽街の暗闇を睨みつけた。彼女の心には確固たる決意が宿っている。これまでの恐怖、過去の痛み、そして何より自分自身の力を信じること――その全てを乗り越え、今ここでパフュームスライムと対峙しようとしていた。
「リリス、無理はしないでくれ。」ニブルは慎重に声をかけたが、リリスは一度も後ろを振り返ることなく、力強く言った。
「大丈夫よ。私はこれを乗り越えなければ、前に進めない。」彼女の目は、決して揺るがなかった。過去に縛られることなく、今を生きるための覚悟がその瞳に宿っていた。
その時、突然、地面が震えた。低く、不気味な音が響き渡る。それはまるで巨大な生物が歩いているかのような音だった。
「来る…」リリスは冷静に声を上げ、周囲の空気が一気に張り詰める。ニブルと仲間たちもその場に身構え、息を飲んで静かに待った。
そして、闇の中からゆっくりと姿を現したのは、あの恐ろしいパフュームスライムだった。もともと人間だった女王が、スライムの細胞を取り込んだその姿は、異様で恐ろしい。全身が淡い紫色の粘液に包まれ、その中にかつての美しい顔がうっすらと浮かんでいる。だが、その顔にはもう何の表情もなく、冷徹な瞳だけが鋭く輝いていた。
「リリス、ようやく会えたわね。」パフュームスライムの声は、ねっとりとした響きを持ち、まるで甘い罠のように耳にまとわりついた。「あなたの力、どうしても欲しいの。私のために。」
リリスは一瞬だけ目を閉じ、深く息を吸った。もう迷いはなかった。彼女はゆっくりと、自分の手のひらを開き、氷の魔法を呼び起こした。
「私の力を、あなたのためには使わない。」リリスは力強く言い放った。「あなたのような存在に、私の力を渡すことはできない。」
その言葉が終わると同時に、パフュームスライムは鋭い笑みを浮かべて言った。「そう、ならば私があなたの力を奪ってみせるわ!」
パフュームスライムはその身を震わせ、周囲の空気が一気に濃く、重たくなった。彼女はその粘液を膨らませ、まるで巨大な風船のように広げていく。それは一瞬で周囲を包み込み、リリスを取り囲む。
リリスは身を翻し、氷の刃を放った。しかし、パフュームスライムはそれを軽く受け流すと、粘液を使ってその足元を包み込もうとした。瞬時に足元が沈み、リリスは一歩踏み込むことができない。
「くっ…!」リリスは焦りを見せるが、すぐに冷静さを取り戻し、自分の力を集中させた。手のひらから氷を放ちながら、足元の粘液を一瞬で凍らせる。だが、パフュームスライムはその凍った部分を瞬時に溶かし、リリスを締め上げようとしてくる。
その瞬間、ニブルが突如として動き出した。「リリス、今だ!」彼の声が響き、リリスはその言葉を合図にして全力で魔法を解放した。
リリスの氷の魔法が、再び強力に放たれ、今度はパフュームスライムの周囲全てを凍らせる。スライムの粘液が硬化し、パフュームスライムはその動きを止められた。
「これで、終わりだ!」リリスは決然と叫び、氷の槍を手のひらから突き刺した。その槍は正確にパフュームスライムの核心を貫き、スライムは大きく震えた。
「な…っ、あなた…!」パフュームスライムは言葉を失い、体が崩れ始める。かつての美しい姿は、もう見る影もなく、ただのスライムの塊となり、その命を失っていった。
リリスはその場に立ち尽くし、息を整えた。すべてが終わった後、彼女は自分でも驚くほど冷静にその場を見渡した。
「やった…」リリスは小さく呟き、そして振り返った。ニブルたちが彼女に微笑みかけていた。
「お前がやったんだ。」ニブルは穏やかに言った。「お前の力だ。」
リリスはそれを聞き、少しだけ顔を赤らめながらも、心の中でようやく重荷が下ろされたことを感じた。
「これで、私は前に進める。」リリスは自分に言い聞かせるように呟いた。その瞬間、彼女は本当に自由になったのだと感じた。




