海
マリンの海賊船は巨大で、まるで海の王者のような存在感を放っていた。船体は古びているが、手入れはされており、その大きさから来る重厚感が迫力を感じさせる。50人の船員たちは、見た目に年齢を感じさせるおじさんたちが多いが、その顔には誇りと決意が見て取れる。彼らの姿勢からは、マリンに対する信頼と、共に過ごした長い年月の絆が感じられた。
マリン自身、見た目はまだ幼い少女そのもので、顔立ちもまだあどけなさを残している。しかし、その姿からはただの子供とはかけ離れた威圧感が漂っていた。身長こそは小柄だが、その体のどこかに強大な力を秘めていることは誰の目にも明らかだった。特に目を引くのは、背中から伸びる長い尻尾と、鋭い歯が並んだ口元。サメの特徴を持ちつつも、少女の体に完全に収まっているその姿は、まさに「海の化け物」と呼ぶにふさわしい存在だ。
彼女は常にトライデント――三叉の槍を手にしており、その長さは彼女の身長を超えるほどだ。その槍を握りしめる手からは、すべてを支配できるかのようなオーラを感じさせる。
「どうだ、気に入ったか?」と、マリンはニブルたちに自信満々に言った。
「すごい船だな」と、ニブルは驚きながら答える。
マリンの背後に立つおじさんたちが、まるで彼女の守護者のように無言で立っている。その目は、どこか優しさと誇りを感じさせるものだった。船員たちは、誰もがマリンを孫のように大切にしているのだ。
「これが私の船、波風号だ。ここを出て、海賊としての冒険を繰り広げてるってわけだ」と、マリンは誇らしげに言う。その顔には、少女らしさと海賊の船長としての責任感が交じり合っている。
しかし、この街に住む人々の中には、漁業で生計を立てている者が多く、その中でも海の領地を支配している一部の者たちがいる。彼らは長年この土地を支配しており、他の人々にとっては食料を得るための重要な資源を持っていた。しかし、その支配が強すぎるため、権力に反発する者たちもいた。反対勢力が弱体化すると、生活の糧を失った者たちは、どうしても手段に困り、海賊に転身することが多かった。
「私たちも、そんな人たちのために戦ってるんだよ」と、マリンは言葉を続ける。「この国では、漁業を巡る争いが絶えない。力のある者たちが魚を独占し、足りない者たちが飢えに苦しんでいるんだ。だから、私たち海賊が食べ物を奪ってでも、弱者に分け与えるんだ。」
その言葉には、どこか切実さが滲んでいた。街の人々が心から感謝しているわけではなく、むしろ彼女の存在を恐れている者も多い。しかし、マリンとその船員たちは、自分たちの信念を貫き、戦っていた。
ニブルはしばらく黙ってマリンの話を聞いていたが、やがて口を開いた。「でも、盗むことでしか生きられない人たちがいるって、ちょっと複雑だな。海賊がその問題を解決するって、どうしても一歩踏み外しそうな気がする。」
マリンは少し考えてから、にやりと笑った。「それが海賊さ。正義だとか、道理だとか、そんなものに縛られてたら、何もできない。私たちは、無理やりでも生活できる手段を見つけなきゃいけない。でも、だからこそ、その行動が正しいかどうかをいつも考えてる。私が海賊船長としてやっていることは、単なる略奪じゃない。私なりに、この国を変えるための戦いなんだ。」
ニブルはその言葉を心に留めながら、マリンの背後にいるおじさんたちを見た。彼らの目には、マリンを守るために戦う覚悟と、深い愛情が込められていた。
「なるほどな…」と、ニブルはぼそりと言った。「この国の問題を解決するためには、ただの戦いじゃなく、もっと大きなものが必要なんだな。」
その時、セリーナがニブルに軽く耳打ちした。「でも、面白いわよね。マリンの言っていること、ちょっと本気で考えると、別の見方ができそうだ。」
ニブルはしばらく黙って考え、そしてしっかりと答えた。「そうだな。無駄に反発するだけじゃ、何も解決しないかもしれない。」
この時、ニブルたちは海賊たちの戦いの背景に、ただの悪党たちではない、深い理由があることを少し理解し始めた。そして、彼らの冒険は新たな方向に進んでいく予感がした。




