第26話 水の国
ニブルたちは水の国に向かう船に乗り、遥か海の彼方に浮かぶ街、アトランテを目指していた。アトランテは、その名の通り水の上に建てられた巨大な街で、無数の小島が波間に浮かび、橋で繋がれている。遠くからでも、建物の屋根が海面に反射して光り、美しい景色が広がっている。しかし、同時にその街は危険な海賊たちが跋扈する場所でもあった。
街に近づくと、いくつかの海賊船が波を切って進む姿が見えた。その中の一隻から、鋭い目をした少女が不敵にこちらを見つめていた。彼女は、二角帽子を被り、海賊らしい風貌を持っているが、どこかひょうきんな印象を与える。しかしその目には強い意志が宿っている。
ニブルたちが街に足を踏み入れると、すぐにその少女が声をかけてきた。
「おうおう、俺たちの縄張りを奪う余所者はどこのどいつだ?」
その言葉に、ニブルたちは一瞬立ち止まった。少女の後ろには、彼女の部下と思しき海賊たちが数人、腰に剣を差して立っている。
「クリスタルを探しにきた旅人だ」と、ニブルは冷静に答えた。
「クリスタルだと? 俺たちのナワバリを犯す下等な人間なんぞ信用できん!」少女は一瞬にして態度を変え、怒りを露わにした。
その言葉を受けて、周囲の海賊たちも剣を抜き、戦闘の気配が漂い始める。ニブルたちは一歩も引かない。彼は冷静に周囲を見渡しながら、すでに戦う準備を整えていた。
すると、少女が突然、水のような気配を感じさせる魔法を使い始めた。手をかざすと、海の水が一気に集まり、鋭い水の棘となってニブルたちに向かって飛んできた。
「来い!」と、ニブルが叫ぶと、氷の力が一瞬でその水の棘を凍らせ、無力化する。氷の柱が空中に浮かび、棘が砕けて消えていった。
「なっ!? なんだその技は!」少女は驚きの表情を浮かべ、思わず足を止める。その間に、ニブルたちは周囲の海賊たちも片付けてしまった。
セリーナが氷の刃を放ち、レオナは瞬間移動で敵を一気に制圧する。あっという間に周囲の海賊たちは倒れ、戦闘は終息した。
「むちゃくちゃ強いな、お前たち」と、少女は驚きと感嘆の混じった声を上げた。「よし、私の子分にしてやろう!」
「お断りだ」と、ニブルは冷たく言い放った。
その態度に、少女はますます興味を持ったようだ。「おいおい、そんなに高飛車な態度を取られちゃ、気に入らないじゃないか」と、彼女は笑いながら言った。「でも、気に入ったよ、お前たち。私、マリン。ここらで海賊の船長をやっている。ここらで一番強いぞ」
自己紹介をしたマリンに、ニブルは短く名乗った。
「俺はニブル」
「私はレオナ」と、レオナも名乗りを上げる。
「私はセリーナ」と、セリーナも加わった。
「よろしくな、マリン」と、ニブルたちはそれぞれに軽く手を挙げて挨拶をした。
マリンは少し考えた後、にやりと笑った。「いいじゃん。あんたたち、私の部下になるなら、海賊としてしっかり働いてもらうからな。そう思って、覚悟して来なよ」
「勘弁してくれ。私たちはクリスタルを探してるだけだ」と、ニブルは淡々と答える。
「クリスタルか、そうか、まぁいいだろう。でも、もし私のナワバリを越えていくんなら、覚悟はしておけよ?」
マリンの言葉には、どこか遊び心と本気が混じっていて、ニブルたちはその妙な緊張感を感じ取った。
「それにしても、何か面白いことが起きそうだな、こいつらと一緒なら。」セリーナはニブルにささやくように言った。
「面白いことは期待できそうだな。」ニブルは微笑んだ。
こうして、ニブルたちはマリンと少しだけその街で過ごすことになった。彼女の言葉通り、何かが起きる予感がしていた。それが何であるかはまだ分からないが、確かにこの先の冒険が、今まで以上に刺激的なものになる予感がしていた。




