傀儡の粘魔2
粘魔に操られた人間が剣を振り下ろしてきたため、ゼノアは左に避ける。
「ウアアアァァァ!」
雄叫びとともに、再び剣を斜めに振り回してきたため、今度は避けきれないと判断し、細剣で受けた。
「ウッ……重っ……!」
予想していなかった重い攻撃にゼノアは思わず膝をつく。
(下級冒険者の俺よりも筋力が桁違い……! こいつらおそらく中級冒険者だ……!)
ゼノアは上級冒険者でも倒すことができない粘魔を倒すことができるため、上級レベルと思われがちだが、
それは粘魔を倒す知識がずば抜けているだけで、身体能力や魔法のレベルは下級冒険者クラス。
「気をつけろよ! こいつら結構冒険者としてもレベルが高いぞ!」
レオナはゼノアのことを気にかける言葉をかけながら、粘魔に操られた元冒険者2人の攻撃を軽くいなしている。
さすがは上級冒険者。身体能力はあるということか。
「ウラァ!」
ゼノアは渾身の力を込めて振り下ろされた剣を振り払い、距離を取った。
「平気か、下級冒険者。お前にとっては格上なのではないか?」
レオナが相変わらず好戦的なセリフを言ってくる。
「問題ない」
ゼノアは心の奥で苛立ちを覚えたが、それを表面には出さず、ぶっきらぼうに答えた。
「奴はどうやって倒せる?」
スライムはただのブルースライムですら、倒し方がすぐにはわからないほど、未知の魔物。新種の魔物であれば、なおさら攻略法は想像すらつかないため、倒した人間に聞くのが早いと判断し、ゼノアはレオナに対処法を聞く。
「傀儡の粘魔は、『傀儡』という魔法を使う。
『体から伸ばした触手の先に接続した生物の自我を奪い、自在に操ることができる』というものだ。
それを使って人間や他の魔物をコマとして使う。奴らの弱点は2つ。
1つ目は、冒険者の後頭部と傀儡の粘魔の本体を結ぶ、あの触手だ。あれを切れば冒険者を操れない。
2つ目は……」
「つまり、あの触手を切ればいいんだな?」
ゼノアは会話を途中で遮り、姿勢を低くし、地面を蹴った。
「待て! 最後まで話を聞け!」
レオナの制止も間に合わず、目にも止まらぬスピードで元冒険者の背後をとった。
「速い……」
レオナは予想以上のスピードを見せたゼノアに、思わずつぶやいた。
そして、傀儡の粘魔から冒険者の後頭部へ繋がっている触手に向かって、剣を振り下ろした。
しかし、触手は切れなかった。
「くそっ! 硬いな」
背後を取られたことに気づいた元冒険者が振り返り、再び攻撃してきた。
「くっ!」
ゼノアは体勢を立て直すために、距離をとった。
「あの糸、剣で切れないのか……」
「お前も粘魔を討伐してきたから、わかるだろう。奴らの体は変幻自在に変形でき、斬撃も吸収してしまう。それを突破するには、本体を叩くしかない。その方法は……」
「酸をぶつけて溶かす、か……」
ゼノアはそう言うと、腰につけた、セリーナ特製の酸性粉の入った袋に手を伸ばし、粘魔に向けて構える。
「それだけじゃない」
「!?」
ゼノアは驚きの表情でレオナの方を見た。
「もう一つは、魔法だ。奴らの体表には魔法で」




