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スライム・スレイヤー  作者: そらりん
第1章 異世界
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vs スライム亜種2

そう思ったゼノアだが、目の前のスライムの様子が少しおかしいことに気がつく。




スライムは少女を前に微動だにしない。突進してくる様子がない。かと言って、他の攻撃をしてくる気配もない。




「キィッ!」




何が起きている? 今スライムが出した声は威嚇の鳴き声だ。なぜあの少女を威嚇しているんだ?


それになぜあの少女を攻撃しようとしない。


明らかにおかしい。今まで遭遇したどのスライムでも見たことがない反応だ。




「……? ……え?」




しかし、少女も何が起こったか分かっていないようだ。




「だが、これはチャンスだ」




ゼノアはこの理解不能な状況でも、冷静だ。逆に攻撃をしてこないなら、こちらのチャンスだと捉えた。


少女の影に入り、スライムからは見えない角度から、横に高速で移動し、酸が入った小瓶をスライムに向かって投げつけた。


そして、少女の左に一歩踏み出し、小瓶に向かってレイピアを突き出す。


レイピアの尖った先端が小瓶に当たり、パリン、と割れる。


小瓶から酸がこぼれ出し、スライムの体に付着。




「よし、これでいける」




スライムが苦手とする酸性の粉末を振りかけたため、このまま溶けるはずだ。




と思ったが、反応がない。




「キィィィィァァァ‼︎」




スライムは粉末を浴びても何事もなかったかのように、攻撃の手を緩めない。




「おかしい! なんで効かないんだ! 強力な酸の粉末だぞ!」




そこでギルドで言われたことをハッと思い出す。


このスライムは体表の色が違う。色が違うということは亜種の可能性が高く、となると体の性質も全く別物の可能性がある。




「くそ! やはり亜種なのか!」




このままではこちらが不利だ。攻撃手段がないまま、やられてしまう。




「くっ……何か手はないのか!」




必死で周りを見渡し、何か手立てはないかと探す。




スライムと俺、少女を囲う周りには、3人の男女の死体とその周りを飛び散る血、スライムに斬られた体の残骸が無惨にも転がっているだけ。




いつもの、スライムに倒された者たちの残骸と同じ状況だ。


見慣れている。




何か手がかりはないか、と考えたその瞬間、ふと違和感を覚えた。




待てよ。なぜあのスライムは体の一部だけ傷を負っているんだ。よく見ると、右側の手に変化する部分だけが傷つき、皮が剥がれたように色が少し黒ずんでいて変わっている。さらに、そこからシューシューと煙のようなものが上がっている。


あれはスライムに酸を浴びせた時に起こる反応と同じもの。つまり、間違いなくあの部分だけは奴の弱点の酸を被り、ダメージを受けている証拠だ!




「じゃあ一体あれはどこで受けたダメージだ?」




ここで先ほど感じたもう一つの違和感を思い出す。




あの少女だ。




彼女はスライムの目の前に立ったにも関わらず、スライムに殺されなかった。攻撃の隙などいくらでもあったのに、むしろ威嚇し、わざと攻撃しなかったように見えた。




「いや、違う。攻撃しなかったんじゃない。攻撃できなかったんだ」




そう考えると、4人冒険者がいて3人だけが殺されて彼女だけが生き残った理由にも説明がつく。




彼女は奴の弱点となる何かを持っているんだ。それが何かはわからないし、なぜ彼女が持っているのかはわからない。




だが、今はこれしかない!




「君! あのスライムになんかしたか?」




「……え?……いえ、なにも……してない……のら……」




彼女は突然大声で話しかけられてビクッとして怯えた表情で答えた。




「そんなはずはない……! 奴は明らかに攻撃を喰らっている。君が何かしたはずだ……ウッ‼︎」




少女が何かスライムに攻撃を与えた証拠を持っていないか確認しようと、彼女に近づくと、耐えられない激臭がして、思わず鼻を摘んだ。




この鼻をつく刺激臭に嗅ぎ覚えがあった。




「これは……ギ酸?」




ギ酸とは、高校の化学でも出てくる、発火しやすいという特徴を持つカルボン酸という酸性の物質の一種だ。




俺が先ほどスライムに放った粉末は酢酸をベースに作ったものだ。酢酸の酸性度を表すpHが2.4なのに対し、ギ酸のpHは2.2。pHは数字が低いほど酸性が強いことから、ギ酸の方が酸性度が強いということになる。




つまり、ギ酸の方が酸として強いということだ。




もしかすると、あのスライムに対しては、酢酸は弱い酸だから効かなかったのかもしれない。




それがギ酸ほどの強さの酸だったら効いた、という可能性がある。




前世で学生時代いろんな薬品を作ったりしていた俺が酸の匂いを間違えるわけはないから、この匂いは間違いなくギ酸だ。




ギ酸は基本的にアリを蒸留させることでしか析出しないから、自然界にあることはない。つまり、このギ酸は人の手によって生み出されたものであることがわかる。




そして、この少女からこの匂いがするということは……!




「お前、もしかしてギ酸を作り出したのか?」




少女の両肩を掴んで、正面から問いただす。




「……はい。……今も結晶を……持っている……のら……」




と、腰のあたりにつけたポシェットから一つの瓶を取り出した。




その瞬間、ポシェットには穴が空いていて、その穴から割れた瓶が一つコロン、と地面に転がった。




その瓶にギ酸の結晶が入っているのが見える。




「なるほど……。奴はこのギ酸を浴びて傷ついたのか。そして彼女が自分の天敵となるギ酸を持っていたから、威嚇し、攻撃をしなかった……」




ふと振り返ってみると、緑色のスライムは、一向にこちらに近づこうとせず、威嚇をするように鳴き声をあげている。




「ギィィィィ……」




これは勝機。

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