Our Fate 〜旅の途中で〜
「『自分のやらかした事のデカさに今更になって気付くなんて』だって」
「シオンさあ、俺の顔真似しながら俺を弄るの止めてくれない?」
シオンがふて腐れている。
俺はシオンとアイゴヤを出発し隣り合って延々と続く草原を歩いている真っ最中だ。彼女は自分が寝ている間に色々と話が進んでしまったことが気に入らないらしい。それに対する抗議がこの可愛い反抗期だそうで。
しかしシオンは器用だな。
俺の顔真似をしながら劇画タッチの表情を作るだなんて、そうそうお目にかかれる芸当では無い。
とまあシオンの反抗期についてがそこら辺でいいとして、俺ことミロフラウス・ワーストは心底驚いてしまった。
何十年も前の記憶だが一度だけ貴族から頭を下げられた経験があった。まだ俺がやさぐれる前、その人は「知識をくれ」と言って深々と頭を下げてきたのだ、しかも相手はたかだか十代後半の若造。
貴族と言えば特権階級、奴等には奴等なりの矜持と誇りがある。
だから庶民に頭を下げるなど俺には想像が出来なかった。
そんな俺の現実を覆してきた男、それが俺の故郷であるサンクトぺテリオン連邦のアイゴヤ領主、ニコラウス・アンリ伯爵その人だ。
後で聞いた話だと伯爵は若かりし頃、前線で剣を振るった生粋の武人として名を馳せた時代があったらしい。『雪原の虎』などと形容された男でもあり、今はアンリ家の家督を継いで領主として名を馳せる。
あの人は本当に凄い人だった。
俺は貴族と言う存在に色眼鏡を持って見てきた事に僅かながらに後悔をしつつ、その謝罪と言う訳ではないが求められた通り母から受け継いだ薬師スキルの喜んで伝えたい。
余す事なくそれらを伝えると伯爵は屈託のない笑顔を俺に向けてくれた。
最高の出会いだった、俺はアイゴヤから出発する時には最高の気分になれた。
なればこそ全てが終わったら今度こそ薬師と言う夢を追いかけるために、一つずつ目標を叶えようと意気込んだ。目指すは父の故郷、神の使いとされるドラゴンの住まう聖域。
『エントランス・オブ・ゴッズ』。
俺とシオンは迷わずそこを目指した。
しかしそこはドラゴンの領域、そうなれば『ドラゴンの使い』を自称すり竜人がそこの門番を気取っている訳で。
竜人が住まう場所は『エントランス・オブ・ドランゴンズ』、奴らはそう自称している。当然ながら目的地を目指すにはそこを通過する必要がある。何しろ地理的に竜人の領域は父の故郷をグルッと囲っているからだ。
これも当然と言えば当然で竜人は外界からの侵入者を常に監視している。
つまり俺とシオンは奴らの領域に入るなり強襲を受けてしまったのだ。
俺たち二人は地理的優位によって分断されてしまい、別々に竜人の手荒い歓迎に対処するハメになる。最初に戦闘を開始したのはシオンの方だった。
世の中とは物事が己の想定通りに進まないもので、シオンはその存在に気付くと腰を落として警戒を強めた。彼女の察知スキルが捉えた気配がバサバサと羽音を鳴らして上空から降りて来たのだ。
そして着地するなりシオンに向かって友好的に自己紹介をしてきた。
「初めまして、ドラゴンのご子息のご友人。私はルルパスパー・ジダンダ、テュラム様の懐刀です」
やけに紳士的な態度を取る竜人にテュラムと同様の異常性を覚えたシオンは即座に対応を決定した。俺の過去に纏わり付く不愉快な記憶が掘り起こされる。
ティラム、それは俺の両親を殺した竜人の名前だ。俺もシオンも絶対に忘れる事のない因縁の男、そして俺がこの手で殺した男でもある。
俺とシオンはティラムの亡霊と戦闘を余儀なくされるのだった。
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