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Little Mountains Again 〜俺と幼馴染は名コンビ〜

「ミロフラウスゥ、村に帰れば薬草もすぐに手に入るじゃん。どうして帰らないの?」

「意地」

「おじさんの穴に帰ろうよー。何とかって領主の洞窟に入るよりその方が早いってー」

「シオンも『おじさんの穴』とか言わないでくれる!? なんか卑猥で嫌!! 頼むから人の父親を無自覚に風評被害を与えないで欲しいのだけど!?」



 と俺が幼馴染の失言を拾いながら歩いていた。



 彼女は俺の後ろを歩きながらブンブンと腕を回してまるで駄々っ子の様に不満を漏らしているのだ。



「……俺、決めてるから。目標を達成するまでは絶対に村には帰らない。そもそも帰れるなんて思ってないから」

「……おじさんの穴が嫌ならそこら辺で一休みがてら私のあ……!! モグモグ、ぐひばほあ!!」

「そこから先は絶対に言わせねえぞ!! シオンも自分が結婚前の女の子だって良い加減に自覚して欲しいんだよね!! 「あ」の後に何を言おうとした? 事と次第によってはシオンをヒロイン枠から外さないといけなくなるから放送禁止ワードだけは絶対に俺の手で阻止してやるからな!!」



 俺とシオンはアイゴヤの街を出て洞窟を目指す。

 目的はボリバル店長の薬屋にやって来た女の子が求める肺炎に効く薬を作る事。その為に材料となる雑草を求めてアイゴヤの領主が所有すると言う洞窟に一直線だ。


 シオンの放送禁止ワードを阻止すべく俺は彼女の口を力一杯塞ぐが、彼女は思いの外に手強く大暴れするがそれでも何とか足を止めずに進んでいる。俺たちの村には学校に通うような年齢の子供は俺とシオン以外では少し歳の離れた男の子がもう一人だけだった。


 それ故に彼女はお淑やかさや慎ましさと言ったものを落っことしたような性格になってしまったようで。平然と放送禁止ワードを口にする時があるのだ。


 村ではまだ良かったがいざ外の世界に出れば流石に品が無いと思う。俺もその癖だけは直してあげたいのだが。


 何と言うかそう言う薬はこの世に存在しないのが苦しいところではある。


 狂犬のように大暴れしながらシオンは口を塞ぐ俺の手など気にも止めない様子を貫くのだ。俺はげっそりとしながら精一杯しがみ付くもシオンは悪役レスラーの如くそんな俺の額にチョップを落とす。



 この子、もう俺の母ちゃんを超えたよ……。



 俺の母ちゃんだって女性としての魅力を武器に押し出す部分があったから一線は超えなかったと言うのに。シオンと来たら自分の魅力に気付いていないのか平気で最終防衛ラインを踏み外しにかかってくるのだ。



 シオンは自分が美少女だって自覚すべきだ。



 ん? 父ちゃんがオナラでモールス信号を送ってるのか? 「其方がシオンに欲情しないのが悪い」だって? これって俺のせいなの? シオンの暴走癖は俺がシオンを異性として意識しなかったのが悪い父が心の中で告げてくる。



 マジか、と言うか父にはいい加減オナラが臭いから止めて欲しいのだが。



 ん? 今度は母ちゃんがバシャバシャと水面を叩く音を立ててくる。もしかしてシオンと一緒に風呂に入れって伝えたいのかな? うちの母は随分の積極的な女性の様で、この手のアプローチをシオンにする様に頻繁に俺に促してくる。


 だけどいくら仲の良い幼馴染と言っても俺は越えてはいけない一線があると思うわけで。俺は小さくため息を吐くとそんな俺に母は「ちっ」と舌打ちをしてくる。


 そんな母にげんなりとするも俺は思うのだ、そのアプローチはそもそもが破談していると。



「一緒にお風呂に入ってもシオンのペチャパイじゃあ異性なんて感じないじゃん……」

「んだとこらああああああああ!!」



 シオンに腰の入ったフルスイングパンチを捩じ込まれて俺は派手に吹っ飛ばされてしまった。ザザザッ、と音を立てて地面に叩きつけられて俺は大の字になって空を眺めていた。


 すると俺の視界にシオンが颯爽と現れる。


 どうやら俺を殴ったその足で直ぐに追いついて来たらしい。鬼の形相と化したシオンは大きな血管をいくつも顔に浮かばせて俺の首元を掴んで勢い良く立たせにかかる。


 俺はカカシか何かですか?


 そして頭を激しく前後に揺らされて俺はシオンに良いように扱われてしまった。グキグキと音を立てて首が前後に揺れるが、俺は後ろの景色に気付いて怒り狂うシオンに声をかけた。



「ここだよ、ここが領主の洞窟だ」



 揺らされながらも後方に指を差して俺は目的地への到着を幼馴染に伝えるも、彼女はそんな事はどうでも良いと俺に唾を飛ばして文句を口にして来た。



「私のどこが魅力無しなのよ!! 言ってみなさいよ!!」

「いや、シオンは可愛いよ。ちょー可愛い」

「だったら日頃から素直にそう言えば良いじゃん!!」



 シオンが可愛い顔を台無しにしてしまう程に泣きじゃくる。


 オウオウと泣きながら文句を言うものだから俺も失敗したかな、と思うもやはり嘘は良くない。男は嘘を吐くなんてカッコ悪い。


 年頃の女の子には女の子なりのプライドがあるだろうと普段は触れなかったが、俺はこんな仕打ちを受けるのならばそんな気遣いは不要だったかな? と感じて思いの丈をシオンにぶつけた。



「シオンってAカップだよね?」

「ギリッギリのBよ!!」

「余裕を持ってAで申請しとこうよ」

「四捨五入するとBだから良いじゃん!!」



 遂に俺を洞窟の中に投げ飛ばしてシオンは我を失ったかの様に癇癪を起こす。そしてオーラで刀を伸ばし始めた。泣きながら得意技を繰り出すシオン。だがその攻撃が良い具合に洞窟の天井に生える雑草を切り落としてくれる。


 シオンがいると大事な事がスムーズに進まないからコレならば良いかとポンと手を叩いて雑草の採取に取り掛かる。だがシオンはそんな俺の姿を見てどうやら冷静さを取り戻しそうだったのだ。


 俺はシオンを有効活用すべく再び彼女に話題を振った。



「シオン、ちょっとその場でジャンプしてみて?」

「え、急にどうしたの? こんな感じで飛べば良いの?」

「ほら、揺れない」

「うきいいいいいいい!!」



 俺一人で洞窟に入ると言ったのだがシオンがどうしても一緒に行きたいと言ったから連れて来たが案の定こうなってしまった。両親はどう言うわけかシオンと二人きりになるタイミングで俺に妙に絡んでくるのだ。


 俺もそれを口にしてしまうのも悪いのだろうが、元はと言えば父と母が俺とシオンをくっつけたがるのが悪い。


 そのシオンも二人に気を使ってしまうから、俺としては申し訳ないと思う。だからこそ幼馴染としては仲良くするも、異性としては敢えて壁を作ろうと頑張るのだが……。



 それでも最終的にシオンが暴走する。



 これが俺とシオンの日常なのだ。



 そうなっては彼女に何を言っても無駄なわけで、ヤレヤレとお手上げを意味するジェスチャーをしつつ俺はシオンが刈り続ける雑草をせっせと採取する。


 背に担いだカゴにテンポ良く絶え間無く落下してくる雑草を投げる。


 俺は飛翔のスキルがあるから別段シオンに手伝ってもらう必要も無いのだが、暴走されるのであれば活用すると言うのが俺の持論だ。


 そして神々しくも緑に輝く雑草に「久しぶりだねえ」と頬擦りしているとシオンの斬撃がピタリと止む。



 ちっ、冷静さを取り戻したか。



 だが薬の材料は必要量を確保したからもう良いだろうと、この功労者に俺は笑顔で「はい、オッケーです」とテイクツーは要らないと告げた。


 そんな俺にシオンはげっそりとした様子で唸るように言葉を漏らしていた。



「うううう、またミロフラウスに弄ばれたああああああああ」



 シオンも人聞きが悪いな。



「いや、実際にシオンのスキルは使い勝手が良くて羨ましいよ。俺のスキルなんて父ちゃんが全盛期のステータスを勝手に受け継がせたから加減しづらくて使い道が無いからさ」



 父が心の中で心にダメージを負ったようで「ガーン」と言う効果音をオナラで表現して来た。



(だからくっさいんだよ!!)



「ミロフラウスのオーラって竜気ドラゴンズオーラに変化しちゃったもんね。アレって普通のオーラに戻せないの?」

「出来るけどそのためにオーラを大量消費するのってバカらしいじゃん? 本当に加減を知らない脳筋オーラだよ。そもそも俺はまだ竜気が上手く操れなくて、半竜気ドラゴニカルオーラっぽくなっちゃうけど。オーラの色もそれっぽいし」

「ま、普通のオーラしか使えない私からすれば贅沢な悩みね」



 シオンは会話に決着を付けて数回ほど刀を振ってからキンと音を立てて鞘に収めた。


 シオンは固定型と放出型のペイントを比率良く扱うバランスに優れたペイント使いだ。かく言う俺は変化型も絡めて放出型に偏ったタイプで対応力は高いがオーラの扱いやコントロールなどはシオンには敵わない。



 つまり基本と言う部分に関して言えば彼女は天才なのだ。



 そう言った背景からシオンはペイント使いとして、弱冠十八歳ながらにして既にとある領域に足を踏み入れてるのだ。それは『オリジナルペイント』と呼ばれる特殊な効果を持ったペイントの配合を所持するステップだ。


 俺もその領域に到達してはいる。だが俺はその能力を『とある理由』で自ら放棄せざるを得なかった。


 彼女はそのアドバンテージを遺憾無く発揮して真面目な顔付きとなって俺に注意を促してきた。


 どうやら彼女が刀を鞘に納刀した理由は『使い終わった』からでは無く、『使いやすい状態』に戻すためのようだ。


 シオンは収めた刀を握りしめたまま腰を深く保って居合の構えを取っている。


 その彼女の様子に釣られるように俺は腰のホルダーに手を伸ばしてシオンと同様に戦闘態勢に入る。



「ミロフラウス、洞窟の外から見られてる。私の網にずっと掛かってるから偶然の通りすがりなんて言い訳じゃ通じないわよ」

「シオンは可愛い上に最高に出来る女の子ですな」



 シオンのオリジナルペイントの効果、それは気配感知のスキルだ。俺とシオンに敵意を向けた何者かが洞窟の外にいるようだ。

 下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、


お気に召せばよろしくお願いします。

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