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ルイス・スカーレット・セルニア

「「スカーレット!!」」



 ディアナとオリビアの言葉がハモる。


 二人は目を覚ましたスカーレットに走り寄っていた。



「ありゃりゃ? ディアナとオリビアじゃないっすか? お久しぶりっすー、……ん? あれれ? どうしてウチは鎖でぐるぐる巻きにされてるっすか?」

「テメエ、もしかして何も覚えてねえのか?」

「スカーレット!! 貴女、何をしにここに来たかちゃんと説明しなさい!!」

「ふええ? そんな一度に幾つも質問しないで欲しいっす。ミロフラウスがサンクぺテリオン方面に左遷されるって三時のおやつの時にいきなり言ってきて、じゃあウチも着いていくっすって言ったらダメだって言われて……あれれ?」



 スカーレットは目を覚ますなりディアナたちに質問攻めに遭ってしまった。そしてその見た目通り可愛らしい仕草を見せた。彼女自身も混乱しているのでしょう。現状の把握が追い付かない様で、キョロキョロと周囲を見回し始めた。


 そんなスカーレットの態度に痺れを切らしたのでしょう。ディアナは鬼気迫る様子でスカーレットの肩を掴んで揺すり出す。オリビアもディアナに触発された様にスカーレットに詰め寄っていく。



 この光景を見ては思わず顔が綻んでしまう。



 ディアナとオリビアはミロフラウスを心の底から信頼しているのだ。

 だからこそここまで必死になって擁護をする。この二人を見ていればミロフラウスと言う男の人間性が良く分かると言うものです。



 この光景を見れば充分だ。



 そう感じるも今は三人のやり取りをソッと見守る事にした。勇者様の私と同じ想いだった様で、クスリと笑みをこぼす。嗚呼、私は尋問の最中だと言うのに、勇者様も微笑みに思わず腰が砕けてしまいそうのなる。



 勇者様の笑顔はホンマに狂気やで。


 勇者様はスマートに逞しい胸に私を抱き寄せてくれた。やっべー、こんな胸板なら私は生き埋めにされて海の底に沈んでも悔いはありません。



 そんな私の煩悩に気付いていないディアナはスカーレットの胸ぐらを掴み、言葉を捲し立てていく。ですが今はそんな事はどうでもいい。


 クンカクンカ、嗚呼、勇者様の匂いに包まれていくー。



 あると思います!!



「スカーレット、テメエ!! じゃあ質問をシンプルにしてやるぜ!! ミロフラウスに何て命じられてここに来たんだよ!!」

「ふええ? えっと……、『ジュピトリスのペチャパイ女王の部屋を狙撃しろ。だが絶対に人は殺すんじゃねえ、テメエなら絶対に出来る筈だ』って言われたっす、えへへ」



 スカーレットはミロフラウスに誉められた事が嬉しかったのか、照れながらポリポリと尻尾で頭を掻いていた。鎖の隙間から器用に尻尾を走らせる仕草がとても可愛らしい。


 ペチャパイは一言余計ですけど。



「他には!?」

「ディアナーーーー、頭をグルグルと回さないで欲しいっすよーーーーー」

「煩えよ!! テメエの発言にミロフラウスの評判が掛かってんだ!! さっさと吐きやがれ!!」

「ふええ? 良く分からないっすーーーー。えっと……後は『そうすりゃ勇者のジジイが出てくる筈だから適当に投降しとけ。それと、この話は絶対にリリーにはするんじゃねえぞ』っす。ウチ、リリーみたいな性悪女は大嫌いだから絶対に言う訳ないっす。ミロフラウスの事が大好きっす」



 スカーレットは「早く鎖を解いて下さいっすー、苦しいっすよー」とジタバタともがき出す。すると先ほどまでそのスカーレットの胸ぐらを掴んでいたディアナは「ふう」と一仕事を終えたと言わんばかりに天井に向かってため息を吐いた。


 これでミロフラウスの身の潔白が証明された、ディアナはそう思ったのでしょう。


 するとディアナはオリビアとタイミングを合わせた様に私に視線を向けてきた。それと同時にディアナは激しい怒りを発して、カツアゲをするヤンキーの様な表情を作り上げていった。


 あ、オリビアもディアナと同じ顔つきになりましたわ。


 やっべー。


 二人は私の態度が気に入らないのでしょう。私は勇者様にされるがままに、恋する乙女の如くその胸に赤らめた顔を埋めてスリスリとしていたのです。



「アバズレーーーー……。人が必死になって尋問してんのにテメエは呑気に何やってんだ?」

「貴女がミロフラウスを見損なったとか言うから私たちは必死になってたのですよ!?」

「ふえええええええ!? こ、この人はもしかしてウチに投げキッスをくれた運命の人じゃないっすか!?」



 魔王軍の元幹部たちが三者三様の反応を見せる。


 ディアナは力一杯に私を勇者様から引き剥がそうとして、オリビアは私を抱きしめる勇者様を必死になって引き剥がしにかかる。


 スカーレットに至っては勇者様に存在に気付いて驚きのあまり大声を上げる。目をハート型にしたかと思えば、心臓までハート型にしてドクンドクンと周囲に心臓の鼓動を撒き散らす。


 あ、スカーレットがまたしても鼻血を射出させています。彼女の血は医務室の床にドバドバと運河を形成していった。


 これはまたスカーレットに輸血が必要になりそうですね、それと床の掃除も手配しなくてはなりません。



「見損なったと言ったのは私ではないのですが。スーハー……」

「テメエ!! この後に及んで冷静になんじゃねえよ!! それと堂々と俺たちの目の前で勇者様の匂いを嗅ぐんじゃねえ!!」

「はっはっは。アルテミス、後でコッソリと嗅がせてあげますよ」

「きゅーーーーーー……」

「アバズレーーーーーーー!! 貴女、人の恩人を疑っておいて、その態度は無いのではありませんか!? 何を然りげ無く気絶してるのですか!?」



 こうして王城の医務室でディアナたちは大暴れを始めてしまいました。


 この後、医務室の異変に気付いた騎士たちが駆け付けてくれて、怒り狂ったディアナたちによって彼らはボコボコにされながらも体を張って事態を沈静化してくれたのです。


 私は少しだけ罪悪感を感じてしまい、顔がボコボコに腫れあがった騎士たちに申し訳なさを覚えた。とは言えミロフラウスの意図だけは把握することが出来て、スカーレットの尋問を終えることが出来た訳で。


 そしてここから先の話し合いは私の個室で執り行われることにした。


 これ以上ディアナとオリビアに暴れられては医務室が戦場と化してしまうと考えたのだ。何よりもここから先は家臣たちに聞かれるわけにはいかないのです。



 ミロフラウスと言う男について私と勇者様は興味を持ってしまったのですから。

 下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、


お気に召せばよろしくお願いします。

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