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勇者、ライバルを知る

 『魔王は配下を縛り付けるのです』


 会話はオリビアのこの一言から始まった。

 私たち四人は女王である私の個室に移動して、魔王について語り出した。そしてオリビアとディアナは精神支配を受けて魔王を愛していたのだそうだ。魔王軍の幹部はとにかく女が多い。


 魔王軍の幹部は十人中九人が女性で占める。


 魔王はその大半に魔王を愛する様、暗示をかけているとオリビアは言いました。愛はどんな感情よりも信頼出来る。自らを愛させれば部下は絶対に裏切らない。


 魔王はそう考えているのだそうだ。



「男のミロフラウスには愛を強制出来ない、だから人質をとって従わせているのですね?」

「アバズレがしゃしゃり出んじゃねえよ」



 私が感じた疑問を口にするとディアナはヤンキーの如くメンチを切るように顔を近付けてきた。ディアナは勇者様の前ではいい子を演じるのに、私に対してだけは辛辣な態度を取ってくる。


 私は女王としての威厳を保つ必要がある。


 太ももをつねり怒りを抑えながら強引に笑顔を作って対応した。しかしそんな我慢など無意味だと言わんばかりにオリビアまでもが私に辛辣に当たってくるのです。



「アバズレは黙っていて下さいませんか? 私は勇者様に説明しているのです」



 このババアどもが……、私が我慢していれば言いたい放題。それでも私は己の立場を鑑みて拳を握りしめて怒りを抑えつけていると、勇者様はソッと私に手を握り締めてきた。


 勇者様はミロフラウスの戦闘を終えて、お若いイケメンに戻っていた。


 そのイケメンがニコリと笑いかけてくる。ズイッと私の目の前に超絶イケメンがどアップのゼロ距離で私を心配してくれました。



「私はアルテミスしか目に入りませんけどねえ。ディアナさんもオリビアさんもお美しいけどアルテミスが居れば私は何も要りません」



 おっふう。


 私は勇者様の言葉に上せて立ちくらみをしてしまった。すると勇者様はそんな私を抱きかかえて「このままベッドに直行しますか?」と耳元で囁いてくる。


 この言葉が何を意味するのか。

 勇者様は私が就寝するベッドに侵入した実績があるお方。そんな事が再び起こったら私は確実に鼻血を射出してしまう。そんな不安を感じた私は顔を引き攣らせて勇者様に念を押してみた。



「え、栄一様。それは……私だけベッドで休憩すると言う意味ですよね?」

「アルテミスが望んでくれるなら添い寝したいところですが」

「「ぺっ!」」



 あ、魔王軍の元幹部二人が勇者様に隠れて唾を吐きましたわ。この二人、ここが私の個室だと知ってワザとやってますね。



「それとディアナさんにオリビアさん。美しいお二人に汚い言葉使いは似合いませんよ?」

「「はーい」」



 このババア共。


 勇者様にだけは忠実ですのね。

 二人してキャッキャと手を上げて勇者様の注意を聞き入れていた。そして勇者様が問いかけるとオリビアは目をハート型にしながら、素直に答えていった。


 翼人のオリビア、この女もディアナと同じです。勇者様の前でだけは猫を被るつもりらしい。


 キーーーーーー!! 腹が立ちますわ!!



「ミロフラウスさんはお二人を本当に大切になさっている様ですね」

「ミロフラウスは父親が純粋なドラゴン、母親はエルフと翼人の血を引く者なのです。相性以上に同種族と言うことも手伝ってミロフラウスは私やディアナを実の妹の様に接してくれました」

「私も彼が紳士だと認識しています。ですがミロフラウスさんほどの実力者ならば人質を奪取して魔王から逃げることくらいは可能なのでは?」

「不可能です」



 オリビアは勇者様の問いかけに首を横に振った。するとオリビアの返答にディアナが怒りを塗りたぐった様な表情で補足を加えてきた。


 このディアナの反応には勇者様も怪訝な表情にならざるを得なかった。



「自ら忠誠を誓う幹部が一人だけいるんですー。それでー、ソイツがミロフラウスを監視してましてー」

「監視……ですか?」

「はーい。魔王軍十大幹部筆頭のリリー、最悪の性悪なんですけどーソイツがミロフラウスを監視してるんですー」



 ディアナは勇者様の前でずっとこの様子を貫くつもりなのでしょうか。キャピキャピとした口調とディアナが浮かべる怒りの表情とまったく合わない。


 側から見ているとイライラしてしまいます。


 少しは自分の歳を考えたら如何かしら?


 それでも私はジュピトリスの女王な訳で、国民を守るため手に入れた情報を精査する必要があるのです。私はディアナの言うリリーと言う幹部を知る責務があるのです。



「リリーと言う女はあのミロフラウスよりも強い、と考えていいのですか?」

「ぺっ」

「ディアナさん?」

「あ、はーい。そうなんですー、リリーはミロフラウスとほぼ互角の実力を誇っているんですー。けほけほ、ちょっと風邪気味かもー。喉に痰が絡んじゃったー」



 このババア!!


 私が女王という立場を考慮しなかったら絶対にディアナを引っ叩いていますわ!! 風邪気味なんて分かりきった嘘を吐いて。ディアナとだけは絶対に仲良くなれません!!



「ディアナさん、無理は良くありません。さ、そこのソファーまで運んで差し上げましょう」

「いやーん。私ー、勇者様に添い寝してほしいー」



 ディアナーーーーーーーー!!


 貴女と言う人は勇者様がお優しいと知って、よくもまあぬけぬけと!! しかも勇者様がお姫様抱っこをして下さっているからって、抱きつき返すなんて許せません!!


 あ!!


 ディアナが勇者様の死角から私に向かってアッカンベーをしてきています、……私の勇者様に許すまじ。私はディアナの態度に全身から怒りの炎を迸らせてしまった。


 勇者様はそんな私に気付くことなくディアナをソファーまで運ぶ。そして彼女を優しく下ろすと蕩ける様な笑みを向けてから人差し指で彼女の額に突いて話しかけた。



「とても魅力的なお誘いですが私にはアルテミスがいますので」

「わー、勇者様ってとっても誠実ですねー。けっ」



 一々ディアナの態度に反応していては私の身が保ちません。そして何よりも勇者様が断言してくれた。勇者様にとって私がどんな存在かを、私を愛してくれていると。


 私は勇者様の言葉にホッと胸を撫で下ろした。


 やはり勇者様は素敵な方であることに疑いの余地はない様です。勇者様はニコニコと笑みをこぼしてプーッと頬を膨らませて拗ねるディアナに背を向けた。



 すると勇者様は唐突にオリビアに視線を向けて一つの疑問を問いかけた。



「オリビアさん、魔王さんがアルテミスに呪いをかけた理由をご存知ですか?」



 勇者様の魔王の核心に迫る疑問に部屋の中はの空気が一瞬で張り詰めていく。

 下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、


お気に召せばよろしくお願いします。

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