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「おバカとは己の弱さが生み出す幻想なんですうううううう!!」
スカーレットも自分で何を言ってるか分かってないんだろうな。
おそらく尊敬してた先輩に裏切られたからショックだったんだろうね。泣きじゃくりながらクリスティーナちゃんに戻って来いとスクワットをしながら過剰なジェスチャーを繰り返してるよ。
スカーレットは自分の目標と目標とする人物を天秤にかけている。
つまりクリスティーナちゃんに裏切られた状態でK点越えを達成しても意味がないと思っているのだろう。流石の俺も段々とバカバカしく思えて来た。
そして俺は気付いてしまった。
クリスティーナちゃんの目が黒光りを見せている事に、しかもそれがシオンと俺に交互に向かっているのだ。
「クリスティーナちゃん、どうしたよ?」
「ワーストさん、不束な後輩ですかどうぞ良しなに」
「……あれ? 急に眠くなってきたぞ」
「ふええ? あれ、私も急に眠気が……」
俺とスカーレットの二人が急に眠気を主張する。それもほぼ同タイミングでだ。
「ふふふ、二人の飲み物に一服盛らせて頂きました」
うっそ!! 彼女の黒く光った目はこう言う事!?
クリスティーナちゃん、怖っ!! これには流石のジジイも顔面蒼白でドン引きして……無いだと? 「はっはっは、お疲れみたいですねえ」と笑いながら俺に話しかけるジジイの姿がそこにはあった。
どうやら勇者のジジイは心が美しすぎて目の前で起こるドス黒いやり取りに気付いていないらしい。
「あ、そーれ。はっはっはっ、クリスティーナちゃんのお肌はビックリするくらい氷が滑りますねえ」
「五代さん、そんな事を言いながら服に氷を入れるなんてええええええん!!」
ジジイもまだその遊びを続けてるの!?
と言うか俺もシオンもクリスティーナちゃんに盛られた薬が効いて来たのか、クルクルと目を回しながら意識が遠のいていく。
俺が最後に耳にしたのはクリスティーナちゃんと店長の腹黒い打ち合わせ内容だった。
「店長、ワーストさんのアフターはバックヤードの休憩所で構わないでしょ?」
「そうだねー。シオンちゃんの声が漏れないように厳重に防音しとこうか」
ダメだ、もう意識が保てない……。
「んががががっ、ずびびびび!!」
俺はシオンのイビキを子守唄にして店内で意識を失うのだった。
「ミロフラウスさん、私は先に帰りますね? お爺ちゃんは寝るのも早いもので」
ジジイも薄情だな!!
…………
目を開けると見慣れない天井がそこにはあった。
おそらく先ほどクリスティーナちゃんが言っていたキャバクラの休憩室だろうな。そして隣には布団を同じくする少女、スカーレットが盛大にイビキを掻きながら寝ている。
「んがが!! …………が……ががっ!!」
無呼吸症候群ですか!?
スカーレットのイビキにツッコミをいれつつ俺は自分がいる部屋の確認を始めてみる。部屋は小綺麗に整理された小さな一室、おそらく店長たちが話していたこの店の休憩室だろう。
と言うか俺が服を脱がされてスッポンポンなのはどう言う訳だ?
店長とクリスティーナちゃんは俺にナニをしろと?
まさかスカーレットと一晩を一緒に過ごせとか言わないだろうな? ダメダメ、それだけは絶対にダメだ。コイツは俺の仲間であってそう言う対象では無い。
何よりも本当にナニカあったら俺はディアナやオリビアにゴミを見るような目つきを向けられてしまう。
この状況だけは断固として拒否だ。
周囲を見渡せばこの部屋は窓は設置されていないようだ。部屋には出入り口らしきドアが一つあるのみ。後は飲み物などが入っているのだろう、小さな冷蔵庫が部屋の隅に設置されている。
そして俺が動いて振動が伝わったのか、スカーレットもパチクリと目を開ける。
「……ふえ? ここは……お店の休憩所? どうしてウチは布団の中で寝てるっすか?」
「よ、よお」
寝返りを打って俺とスカーレットは布団の中で視線を合わせる。当然ながらシオンは驚いた様子を隠さないわけで。
「ミロフラウスじゃないっすか。何でウチと同じ布団で寝てるっすか?」
「目を覚ましたらこんなでよお」
「ふええ!? どうしてウチたちは縄でぐるぐる巻にされてるっすか!?」
とか言いながら縄を引き千切ってやがる。
そして店長たちもナニをしろと言う割には考えが及ばないらしい。
互いに押し込まれた状況を整理して俺とスカーレットは息を合わせて歩き出す。掛け声を発しながら部屋に入口の前まで移動してやっとの思いでドアノブに手をかけた。
だけど状況を整理したらそれは無駄だろうな。そこは俺が最初に諦めてるのだ。
「まあ、鍵を掛けられてるわなあ?」
「ふええええええ!! お姉さま、そこにいるっすよね!? いたら返事して下さいっすううううう!!」
うん、十中八九ドアの前にクリスティーナちゃんはいるだろうな。何しろドアの向こうから彼女の香水の香りがするから。
ドアの向こうにいるクリスティーナちゃんにスカーレットは必死になってドアを叩いて助けを求めている。しかしスカーレットも服を脱がされており、そのセンスに俺は頭を抱えてしまう。
そしてスカーレットにため息を吐いてしまった。
「スカーレットよお、テメエもキャバ嬢なら熊さんパンツのチョイスはダメだろう?」
「ふえええええ!? 私、どうして下着姿なんっすかああああああ!?」
「今更かよ、……ん?」
良く見たらドアに何か小さな小窓が付いてるじゃないか。まるで独房に食事を運ぶための窓にも見えるけど。そして俺に続いてスカーレットもそれに気付いたらしい。
するとまるでタイミングでも図っていたかのように、その窓はキイッ音を立てて開く。
「407番、差し入れのパンツよ」
囚人かよ!! その声はクリスティーナちゃんだな!!
と言うかこれって監禁事件じゃないのか!?
「おーい、クリスティーナちゃーん。流石に出して貰えねえかな? コイツは俺の妹分だから手なんて出せねえよ」
「ほほほほ、ワーストさん。二人を押し込んだ時にドアの立て付けが悪くなりまして」
マジで!? え、俺たち出られないの!?
「お姉さま!! 業者呼んで下さいっすよおおおお!! 風邪ひいちゃうっすうううう!!」
スカーレットも本当に必死だな。斯く言う俺もその心情は痛いほど理解出来る訳だが。
「ほほほほ、シオン。ワーストさんにブスッと注射して頂きなさいな」
こうして俺とスカーレットは不毛な抵抗をする事となり、半日ほど経ってようやく到着したにレスキュー隊によって部屋から救出される事までの間、極寒を布団だけで耐え凌ぐ事となった。
そして救出された頃には俺たちは脱水症状で危うく死ぬところでした。
スカーレットなどは入店から写真が店内に飾られる事なく、引退する事となり、『?』の指名写真はこの店の永久欠番となるのだった。
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