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First Contact【前編】 〜ドラゴンの咆哮〜

 次話もセットになった前編です。ここで新キャラが一挙に二人登場します。そのうちの一人は光の主人公アルテミス(純愛担当)と並ぶ本作品における闇の主人公(バトル担当)となります。


 後編も本日中に投稿予定ですので、どうぞセットでお楽しみ下さい。

 風が疾る。



 私は翼人セイレーンに肩を掴まれてサターン山脈の上空を飛んでいた。上空故に身動き一つ取れない。翼人が脚の鉤爪を肩から離すだけで私は地上に真っ逆さまに落下してしまう。


 私は地面に落ちたトマトの様な己の光景を想像した。その光景を思い浮かべて戦慄し、ゴクリと唾を飲み込んだ。


 そして同時に遠くからバサバサと翼が羽ばたく音が聞こえてきた。この羽ばたき音は翼人のそれではない。私は悪い予感を感じて、その方向を振り向いた。



 すると竜の顔をした男が一人、先ほどの翼人の様に薄気味悪い笑みを浮かばせて私の方に近づいて来た。



竜人ドラゴニュート!?」



 男は竜人と呼ばれる種族だ。


 そして竜人は驚きを隠せない私を無視して翼人の女に話しかけ始めた。



「その女が魔王様ご所望の?」

「間違いありません。ジュピトリス女王の戦姫アルテミス・メサイア、魔王様が直々に呪いをかけた不老の女です」

「魔王様の死にたがりにも困ったものだ」

「理解は出来ます。何しろあの方は数千年の時を生きてこられた、それまでの間、どれだけの別れを経験したかなど私たちには到底想像出来ないのですから」

「しかし幹部の俺たちを借り出してまでする事なのかね? 結果的にディアナなんて勇者に寝返ってしまったじゃねえか」



 竜人の男は「ヤレヤレ」と数回首を横に振って何かに呆れているのです。


 だけどこのやり取りだけで状況を理解出来る筈がない。

 魔王が死にたがっている? 魔王が数千年の時を生きてきた? 私は落下の恐怖を振り払って二人の魔物を睨みながら話しかけた。



「魔王が死にたがっているとはどう言うことですか!?」



 二人の魔物は私に冷酷な目付きを向けてきた。



「あ? 俺たちの会話に聞き耳立てるんじゃねえよ」

「この状況でそれを言うのですか!?」

「テメエは黙って魔王様に寿命を差し出してればいいんだよ、……ん?」

「追手が来ましたね」

「アレが例の勇者か? 情報と大分違うじゃねえか、確かジジイだって話だった筈だが?」



 またしても勇者様が私を救出に来て下さったと言うのですか? 私は二人の会話を耳にして何とか後ろを振り向こうと試みたが、翼人によってそれを制止されてしまいました。


 翼人は私の肩を掴む力を強めてきたのです。


 魔物は人間よりも遥かに身体能力が高い、魔王のスキルによってこの世に生まれた彼らは鼻で笑いながら私たち人間を弄んでくる。


 それは五十年にも及んだ戦争で私自身が痛いほど痛感してきたこと。


 翼人はまるで私を捻り潰すかの如く足に力を込めてくる。ギリギリと音を立てて、正に私の肩を鷲掴みにしながら脅しの言葉をかけてきた。



「死にたいのですか? 私が気まぐれを起こせば貴女は地面に叩き落とされて死ぬのですよ?」

「がっ、ああああ……あああああ!!」



 苦痛で表情が歪んでしまう。

 そして上空で悲鳴を撒き散らしてしまいました。これはとても状況を分析できる状態ではない、だけどそれでも出来る範囲で分析せねばと言う思いからわたしの心のうちは反対に冷静になっていく。



 竜人の魔物が口にした言葉、私はそれに違和感を感じていたのです。



 そしてどうやら翼人の女も私と同様だったらしく、怪訝な表情を浮かべながらその言葉を否定していました。



「勇者は情報通り老人でした。私がこの目で見て来ましたから間違い無いかと」

「だけどよー、普通の人間にあんな芸当出来るのか? バカでかい葉っぱをスケボーに見立てて空を滑走してるぜ?」



 え?



「待てーーーーーーーーい!! 私の女神を置いて行きなさい!!」




 後ろを振り向けないからそのお姿を見ることは出来ない。だけどその声色と竜人の男からの情報でおおよその見当がついてしまいました。


 もしかして勇者様はお若い姿になっているのでは?


 見当は付く、しかしそうなると新たな疑問を抱くのは当然です。


 何しろ勇者様はハウザーの薬で一度若返って、その後、ディアナによって誘拐された私を追いかけて来て下さった時は元々のお姿に戻っていたのです。



 コレは辻褄が合わない。


 やっとの思いで整理した情報に整合が取れないのです。私は酷く混乱してしまった。



 ですが状況は私の混乱など待ってくれる筈もなく、強制的に前を向かされている私を置き去りにして、険しいサターン山脈の上空で激しい戦闘が開始することとなったのです。



「いくら勇者と言っても所詮は人間だろ? 喰らえや、竜星ドラゴンズメテオリオ!!」



 スキルと言う概念が存在する。


 生物は誰もがオーラと言うものを生まれ持ってくる。

 あらゆる生物がそのオーラを駆使して特殊な効果を生み出すことが出来る。それがスキルだ。当然、竜人も同様で、竜人の場合は半竜気ドラゴニカルオーラと言う淡く青いオーラを操る種族。



 竜人の男は手のひらから半竜気のオーラ弾を射出していた。


 竜人のオーラ弾は上空の気流を飲み込みながら唸る様な轟音を吐き出していった。すると翼人の女は戦闘の巻き添えを嫌ったのだろう。クルリと旋回をしてから、更に上空に上昇していく。


 そしてある程度上昇するとピタリと動きを止めた。どうやら勇者様と竜人の戦いを文字通り高みの見物する気らしい。



「魔王軍幹部の第二席、ミロフラウス・ワーストはディアナ如き下っ端幹部とは桁が違いますよ」



 私は上空から勇者様のご無事を祈ることしか出来なかった。

 下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、


お気に召せばよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんでしょう… 読んでいて勇者がいつ来るのかを常に期待してしまいます。 そして、良いタイミングで必ず現れる。 その現れ方も常に予想を超える。 本当に楽しませていただいてます!
[一言] 葉っぱを使って空を滑空www これはお姿見たかった笑 王女視点だと見れなかったのが残念ですな。 次回、どう戦うか期待!
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