プロローグ
恋愛と異世界ファンタジーを融合させたちょっとしたラブコメです。
どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。
「女王陛下、準備が整いましてございます」
語り継がれる伝承がある。
ーーーーこの世界に闇が蔓延る時、
伝説の勇者が現れて正義の力を行使し魔王を打ち砕かん。
藁にも縋る想いとは良く言ったものだ。
私は真っ白に染まった正装で床に跪いて祈りを捧げる。白を基調とした幾何学的な空間に召喚陣が描かれて、私は陣の前で目を瞑り、想いを口にした。
「神よ、どうか救いの手を……」
私の名前はアルテミス、戦姫の通り名で知られるジュピトリス王国の美貌の女王である。滝の如く腰まで流れ落ちるブロンドヘアーに大きな緋色の目を生まれ持った美貌の女王。
私が統治するジュピトリスは大きな問題を抱えていた。
魔王が五十年前のある日、突如として軍を率いてここジュピトリスに侵攻を進めてきたのだ。魔王軍の侵攻に国民は恐怖して、夜も不安で眠れない。
魔王軍が侵攻を開始して早五十年、私の愛する国民は疲弊し続けた。
私はこの状況を打開すべく国に古くから伝わる伝承に縋る事を決意した。
勇者の召喚。
私は魔王に対抗する手立てとして勇者の召喚を決意した。そしてこの儀式の間で私はギュッと手を握りしめて国を救ってくれる勇者の出現を願った。
私の願いに応えるように召喚陣は淡い光を解き放つ。
そしてその光の中から人影が現れた。
良かった、勇者に召喚に成功した。私は安堵して神に深く感謝した。
そして私は伝説に勇者にも敬意を示した。
勇者様は私たちの身勝手な願いを受け入れて異世界からこの世界に召喚されるのだ。これまでの生活を捨てて、ジュピトリスの救国に尽力して下さる。
そんな勇者様に失礼があってはならない。
私は勇者様が床に着地した音を確認すると目を閉じたまま懇願の言葉を口にした。
「どうかジュピトリスをお救い下さい」
「……どうかお顔を拝見させて下さい」
優しげな声が聞こえた。
まだ見ぬ勇者様は何とも優しげな声の持ち主だった。私はその声色を聴いただけで慈愛に満ちた勇者様の召喚が成功したと確信した。
こんな優しげな声の持ち主が私の願いを受け入れない道理はない。
私はそう感じて勇者様の言葉に応えるべくゆっくりと顔を持ち上げた。
そして次の瞬間、私がキョトンとしながら勇者様への質問を吐き出していた。
「……失礼ですが勇者様はおいくつでいらっしゃいますか?」
「五代栄一と申します。稼業を定年して十年、今年で七十歳になる若輩者です。お美しい貴方からの頼み、謹んでお受けいたします」
顔は凛々しい髭で皺だらけ、そして髪は全て白く染まっている。だけどそんな風貌に反して勇者様の体は鍛え抜かれていた。身長は180センチ前後だろうか?
雰囲気は優しげで朧げ。
勇者様はピンと背を張ってニコリと優しげな表情を浮かべながら跪く私に手を差し伸べてくれていた。
この皺くちゃな勇者様との出会いから私の人生は大きく歯車が動きだすのだった。
下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、
お気に召せばよろしくお願いします。




