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浮融  作者: 海月歌
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今日は調子がいいので三作品掲載します!

 学校はいつも16時20分に終わる。僕は今日も誰とも挨拶をすることなく、校門を出る。これが日常。だが、これで満足だよ。周りの日本語もろくに話せないサルどもとなんか、会話をしたって時間の無駄だからね。


 多少は日本でも有数の進学校だからって、僕にとっては低能ばかりとしか思えないね。まったく名声とか、噂は信用ならないね。教師も同じだよ。今日も僕に論破されちゃって、大人が小学五年生に言い負かされるなんて、恥ずかしくないのかな?


 帰り道はいつも一人だ。気にしないよ。ギャーギャーわめくサルがいなくってすっきりするんだ。それにしてものどが渇いたな。ちょうどいい。愚痴を言っている間に自動販売機があるところまできた。僕の学校では現金の持ちこみを禁止している。そんなルールに誰が得するんだ。ほんとう、学校の馬鹿さ加減には嫌気がさすよ。


 意味のないルールなんてないに等しいからね。お金なんて毎日のように持ってきているよ。歩きながらのコーラは最近の癒しだね。この僕でもくだらない日常ばかりでは疲れも出てきてしまうんだよ。


 っくう……! これこれ、この炭酸が疲れを吹き飛ばしてくれる。僕が総理大臣にでもなったら、日本の奴隷どもを使ってサイダーの工場を増やしてもらおう。


 ここは……、廃工場どおりか。ここはなんだか不気味な感じがするから、通りたくないな。決して怖くはないけどね。不気味なだけだよ。おや、待て。向こうから誰か来たぞ。


 女か。赤いワンピースを着てるがこの風景とはまったく合わないな。ちょっと待て、なんだあの女! 目は白く、歯は黒い。ま、まるで、ににに、人間じゃない。


 いや怖くない! この僕には怖いものなんてないんだ。時計を見ながらゆっくりと、あの女を視ないようにいけば、楽勝なんだ。


 時刻は16時30分か。け、気配は、すれ違っていく。やがて僕の視界に女は、いなくなったようだ。

 ふん。最初から怖くなかったぞ。まあ、さっさと電車に乗って帰るとするか。


 廃工場の通りを抜け、右にまっすぐ進むと、駅がある。僕が毎日利用する駅だ。電車に乗る時刻は完璧に憶えているよ。簡単な逆算で待たずに乗れるんだ。まあ常識だよね。これが社会常識ってやつかな。ただ駅でひたすら電車を待っている大勢の低能な大人どもには見ていて可哀想に思うよ。簡単な社会常識も身に付けていないからね。教育の質の差が原因だろうね。きっと親から何も学んでないのだろうね。いや、その親も僕以下か。


 おっと、16時42分。電車が来たようだ。僕は急いで席に座る。立ちながらスマホのゲームはやりにくいからね。サイダーを飲みながらのゲームは格別だ。僕はふたを開けサイダーを飲みながら、ゲームに興じる。あれ、新しいガチャが出たんだ。よし、引こう。ガチャを引くと、たいていはキャラの専用ボイスがついてくるから聞き逃さないように、音量は上げる。これ、基本だよね。君たちもそうだろう。ボイスは基本。

 くそ、全部ゴミキャラじゃないか。まあいいや。あとでママに課金してもらおう。

 ……この敵モンスター、やけに強いじゃん。この僕を本気で怒らすなよ。僕の頭脳をもってすれば、お前なんかケチョンケチョンだ。どれどれ。

 そのとき記事情報の通知がピロンと届く。

「おいニュース邪魔だよ!」

 ふざけるな、ワイプで画面が視えなくて負けちゃったじゃないか。何が『強盗、山田強志 逮捕』だ。僕はそんなものに興味はないんだ。ったく、コンティニューするか。


 とぅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる

 鳴り響くスマホ。誰だ? ママだ! やった!

「もしもし、ママ? どうしたの」

「テルちゃん、今日のテストどうだった?」

「もちろん百点だよ。簡単すぎて、周りの知能が心配になるレベルだね!」

「まあまあ、よくできたわね。ご褒美にプリン買っておいたから、早く帰ってきなさいね」

「やったあ。うん、もう帰るよ。じゃあね」


 通話を切る。今日はプリン、やったね。プリンは僕の大好物。さすがはママだよ。

 その瞬間、背筋に寒気がした。前を向くと、乗客全員が僕のほうをじーっと視ている。その瞳に感情がないように、無機質なもの。なんだよ。こ、こわくなんかないぞ。

 ま、まだ大人たちは僕のほうをただじーっと睨みつけている。そして、後ろからもゾクッと視線を感じる。なんだよ! まさか廃工場であったあの女が……! やっぱりお化けだったのか。


 時刻は16時55分。もはや電車の中は紫の邪悪なモノに包まれているかのようだった。僕以外にまっとうな奴がいない。僕だけが、人間として生きているような。そしてこの視線は、人間が出すものではないような。まるで何かにとり憑かれているような!

 僕は恐る恐る後ろを振り返る。後ろには……………………!


 窓に僕が映っているだけだった。


 僕は安堵しながらも前を向く。あの視線は、うそのようにパタリと止んだ。大人たちはただの人間に戻っているように過ごしている。

 なんだったんだ、今さっきのは。とにかく目的駅の一つ前だけど、次の駅で降りよう。

 電車が到着すると、僕は言いたくはないが、逃げるように電車を降りた。駅を出ると、電車は出発したようだったようだが、人生には変なことも起きるものだよ。あれはお化けが途中まで僕を視ていたに違いないね。

 まあいい。あんな後味の悪い帰り道のことは、甘いプリンで忘れるとするかな。僕は自宅のほうへと歩を進めていった。


 




こんな感じのコントが多めです

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