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天上の菫〜銀竜の末娘は転生者〜  作者: 湯かけほうれん草
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建国神話

誤字脱字あると思います。

初投稿なので、間違い等もあると思います。


メンタルがお湯かけたほうれん草並みにヤワヤワなので、何卒お手柔らかにお願いします。


 この国には逸話がある。

 遥か昔、この国の始祖であられるミルバ1世は王になる為に、屈強な力でこの地に住う魔物達を掃討し、国を創り上げた。魔物から地を奪い、追い出す手腕は、まこと見事だったという。


 だが魔物達の王である銀竜王は怒り、自身の封印と引き換えに、この国とミルバ1世に末代まで続く呪いを掛けようと天を割り、その狭間から降り立ったのだ。

 長い尾で街を薙ぎ倒し鋭い爪で地を抉ると、灼熱の炎を吐き出す。炎に逃げ惑う人々を他所に、銀竜王はその長く大きな体躯をしならせるとミルバ王の住む白亜の城に巻き付け、濃紫の瞳を瞑り、静かに呪いを掛け始めた。


 それ程までに大きな呪いを掛けるには、銀竜王でさえ十日間にも及ぶ長い時間が必要であったが、その間、ミルバ1世の指示のもと兵達が集い攻撃を試みるが銀竜王の強靭な鱗は傷ひとつさえ負わず、ミルバ1世の王たる力で持ってさえ手に負えなかった。

 それでも諦めないミルバ1世は国中から偉大な力を持つ魔術師や、力自慢の強者を集めたが、城に巻き付く銀竜王の鱗ひとつさえ傷付かない。

 最後の十日が迫る毎に、暗雲立ち込める国は日を追うごとに暗く淀み、誰もが諦め始めた。


 九日目の朝、年端もいかない少女が城へとやってきた。

 王も、取り巻く兵達も、魔術師も、強者も、その少女を嘲笑った。焦る気持ちもあっただろう。それでも、屈強な自分達でさえ敵わないものを、どうしてこの幼き少女に敵わせる事が出来ようか、と。

 最後の威厳を示そうと王であるミルバ1世は非道な言葉で罵り、声をあげて笑ったのだ。それが、人として、ましてや王としては、間違った事だと気付かずに。


 嘲笑われながらも、少女は怯む事なく城の1番高い塔から、声を張り上げた。


「銀竜王、罪なき魔物を傷付けこの地を奪い、貴方様の怒りを買ってしまった事。そして、呪いの引き換えに御身自ら犠牲となり封印の道を選ばせてしまった事、誠に申し訳ございませんっ!!」

「どうして人間が犯した罪の尻拭いを、貴方様にさせる事ができましょうか!!全ての根元は、我々人間側にございます!!」

 その少女は銀竜王に詫び、魔物に詫び、人間に非があると叫んだのだ。


 これにミルバ1世は激怒した。

 人間の住む世を作って何が悪いと。

 だが、それでも少女は銀竜王に謝り続けた。


 銀竜王は九日間ずっと閉じていた目を開き、その濃紫の眼を鈍く光らせ、少女を見つめたという。


 九日目の夜が差し迫ろうという時間。少女は捕らえられ、処刑される手筈となった。たとえ十日目に王自身が、この国が呪われようとも、王はこの少女が許せなかったのだ。

 処刑台に上がり、首に縄がかけられようとも少女は謝り続けていたという。それまでに兵や強者に殴られようが、蹴られようが。断罪の証に舌を切られ、もう言葉となっていなくても、血を吐きながら少女の唸るソレは、銀竜王に対する詫びの音だと人々は気付いていた。


 殴られ蹴られ、舌を切られ、酷く甚振(いたぶ)られる幼い少女が我が子や兄弟と重なって見える人々は胸が潰れる思いだったという。


 それは、少女が処刑場から突き落とされた時だった。


 この地を揺るがすような咆哮が響き渡り、その瞬間、銀竜王が城から剥がれると、縄で首が締まりかけた少女を丸呑みにしたのだ。


「ミルバ、コノ少女ハ、コノ国ニハ、希有ナモノ。

コノ少女ヲ奪ウ代ワリ二、コノ国二、呪イハ掛ケヌ。

ダガ、希有ナ少女の、舌ヲ切リ落トシタ対価トシテ、オマエノ国ハ、暗黒ノ世ヲ、彷徨ウダロウ。」


 そう言うと天に向かい咆哮した銀竜王。城に禍々しい程の黒い炎を吐き、その炎が広がると、街を、王都を更に燃やし尽くそうとする。

 その様子を見届けた銀竜王は天に昇り、眩い銀の鱗が見えなくなった途端に漆黒の雲が立ち込め、国は淀んだ霧に包まれた。


 銀竜王の火が一年経ってようやく掻き消え、辺りは焦土と化しても、霧だけは三年経っても消える事なく淀み漂い続けた。この時代を人々は「焦霧時代」と呼ぶ。


 最初は怒り狂ったミルバ1世も、次第に弱っていった。

 王都の大地は痩せ新たに穀物が実らず、辺境地から穀物を運んでも追い付かずに日々の食事もままならない。

 水脈は日を追う毎に枯渇する様になり、口を潤す僅かな水さえ碌に手に入らない日もあった。そのせいで病は蔓延し、諍いは絶えず起きた。


 あの時、少女の姿に胸を痛めた者は黒雲や、淀んだ霧が立ち込める中、拾った石を丁寧に積み重ねると小さな祠を作った。その祠に配当された僅かばかりに手に入った水を掛け、謝罪し、願う様に膝を折ったのだ。

 すると、その者たちの住む家の周りに息を吹き返すように草が芽吹き、枯れ井戸から水が溢れだすと、三年漂い続けた淀んだ霧が掻き消え、分厚い黒雲が割れると、その者の家を照らすように一筋の光が差し込んだのだ。


 奇跡が起きた。


 その話は瞬く間に王都中に広まり、その事はミルバ1世の元にも届いた。


 ミルバ1世は、あの日、少女を処刑しようとした処刑場の地に石造りの神殿を建てると、罪を言葉にして、今度こそ本当の意味で罪なき魔物達に詫び、少女に対する凄惨な仕打ちの贖罪として、自分の利き腕を肩から切り落とし奉納した。


 まるで天がその様子を見ていたかのように、その瞬間、黒雲の空からは眩い程美しい雨が降り始め、それは三日三晩続くと、王都中の井戸から水が吹き上げるように湧き溢れたのだ。

 そして、その次の日の朝。太陽の光が数年の時を経て、王都に差し込んだのだった。


それを人々は「奇跡の雨」「はじまりの日」と呼ぶ。


 片腕を無くしたミルバ1世は、心を入れ替え、国の紋章に銀竜を入れる事を発表すると、国名をアルマダーゴとし、本来の王たる手腕を発揮し、魔物と共存し、慈愛と正義を大切により良き統治をしたという。


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 そんな逸話があるこの国。

 アルマダーゴは、青き水の国として諸外国に有名である。王都には至る所に水脈があり、移動手段は馬車以外にゴンドラやカヤックが用いられる。

 この逸話は辺境地の農民の子どもでさえ知っている建国神話であるが、始祖であられるミルバ1世によって建国された際、王都は「水の国」では無かったらしい。

 そう呼ばれるようになったのは、はじまりの日に湧き出た水が今もなお湧き続けているからで、結果川となり王都の道を覆うように流れ続けているらしい。

 あくまで、「らしい」ではあるが。

 物語なんてどこまで本当で、どこまでが嘘か分からないもの。そういうものなのだ。下手するとその話全てが嘘であったり、誠であったりするからたちが悪い。建国神話ではあるが、どちらかというとアルマダーゴではお伽噺のようなものでもあったのだ。


 現14代国王であられるセリオス・ライオネル・ミルバ王は、齢46歳であられ、その手腕を発揮していた。





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