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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第五章 鎖の街 カラン軍事学校編
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99話 爆弾


 次のイリスでの民会は、のっけから紛糾していた。

 

 議題はもちろん、海賊対策。だが、どのように海賊に対策を立てるか、もめていたのだ。

 

「とにかく北だ! 北を固めよう!」

「何を言うか! 首都周辺を固めるべきだ!」

「イリスの守備をしっかりしてくれればいい!」

 

 やんややんや、と言う感じで、みんな自分の事しか考えていない。とはいえ、それも無理はないだろう。これだけ海賊にやりたい放題されて、対策は何も無いに等しいのだから。

 

「静粛に! 静まれ!」

 叫ぶルシールさん。

 

 一応静まる議場。しかし、静まった所で問題は解決していない。

 

「フェイ殿、何か対策はございませんか」

 レフさんが聞いた。レフさんは本来、民会には参加しないが、今回は呼ばれている。

 

「対策はあります」

 僕は言った。注目を集めた。

 

「対策と言うのは、例の鎖のことかね。しかしあれはカランでしか通用せんぞ」

 そういうリザードマンの議員。確かに、鎖はあそこでしか通用しない。

 

「いや、これです」

 ぼくは丸いボールを取り出した。銅でできた丸い球だ。縄が付いている。

 

「ははは、それでボール遊びでもするつもりですかね」

「そんなもので何ができるか!」

「子供は黙っていろ!」

 叫ぶ議員たち。また騒ぎ始めたようだ……。

 

「お静かに。そこに木の塊が見えますか?」

 僕は言った。

 

 そこには、木をたくさん並べて置いた。みんな不思議がっていた。

 僕は球の縄に火をつけ、投げ込んだ。ジジジ……と縄が燃えていく。

 

「何ですかな、冗談は」

 リザードマンの議員がそう言った次の瞬間!

 

 ドーーーーーーーーン! と凄まじい音と光が発され、一気に木の塊が燃え上がった。

 

 凄まじい炎が発され、木々があっという間に炭になっていく。呆然とする議員たち。

 

「火炎爆弾です。これがあれば、海賊の船もひとたまりもないはず」

 僕はそう言った。

 

「た、確かにそうかもしれんが……。これはどうやって作ったのかね?」

 そう聞くルシールさん。

「申し訳ないですが、それは秘密とさせていただきます。ただ、イリスの海軍に渡しますから、イリスとグランテイル間に防衛線を引いていただきたい」

 僕はそう言った。

 

 イリスとグランテイルの間は狭い。この海峡を抑えてしまえば、カランとグランテイル島南部で安全に交易ができるのだ。

 

「そうすれば、イリス以南は安全になるでしょうが……、逆に北部は見捨てられるでしょう」

 そういう北の街の議員。

「カランは鎖で閉じられていて、安全に船を作成できます。海軍を創設し、海賊を撃破すれば、問題は解決します」

 僕はそう言った。

 

「海軍か……。しかし、君の力だけではそんなものはできないだろう」

 そう言うルシールさん。

「はい。またイリスの職人を御貸し頂きたい」

 僕は頼んだ。

「またかね……。しかしまあ、この火炎爆弾とやらがあれば、海賊とも戦えるだろう。これをいくらくれるのかね?」

 そう聞くルシールさん。

「とりあえず50個は……。ただ、グランテイルの材料を使ってますので、交易をできないと作れないのです」

 僕は言った。

 

 元々僕達は、火薬を詰めて爆発させる爆弾を作っていた。しかしこれは危険な上に燃焼力は低く、海賊対策としてはイマイチだと思っていた。

 

 そこで火薬の量は下げ、精製した石油を詰めた火炎爆弾を開発したのだ。これは良く燃えた。海賊対策としては上等だろう。

 

「しかし、その爆弾の破壊力が凄まじいのはわかったが、どうやって敵に当てるのかね」

 そう聞くリザードマンの議員。

「手で投げるのが基本でしょうが、バリスタに取りつけたりした方が良いかもしれませんね」

 僕はそう言った。バリスタは巨大な弓矢だ。

「ふむ、そのあたりは色々研究してみようか。フェイ君、職人を貸すから、良い海軍を作って、海賊を始末してくれたまえ」

 ルシールさんはそう言った。

「わかりました」

 僕はそう答えた。

 


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