97話 騎射
それから数日、僕は生徒たちの訓練を続けた。
訓練としては、まず長距離行軍。それから弓矢、槍による集団戦、個人戦ということになる。特に腕力のあるメンバーにはハルバードも渡した。
防具については、軽装の革鎧を渡した。また、あまり重い防具を着ることは禁止した。と言うのも、重い防具を着ると速く動けないと思ったからだ。逃げたり隠れたりしながら戦うという戦術を教えているので、それはまずい。
ちなみにこの戦術についてはシギスが文句を言っていた。まあ彼は敵前逃亡は絶対ダメって言ってたし。当然ではある。とはいえ、僕としては逃亡を禁止する気は無かった。逃げないで殺されたら駄目だと思ったからだ。シギスも渋々納得してくれた。
その日、僕はカラン近くの平原で騎乗戦の訓練をしていた。全員一応馬は乗れる(技術に個人差はあるが)。騎乗して矢を放ったり、馬を並べて走らせたりする訓練をしていた。
その時、羊飼いの女性が血相を変えて走ってきた。
「海賊だ!」
そう叫ぶ女性。
「どうしました!?」
僕は答えた。生徒たちも注目する。
「海賊が上陸して、略奪しているんです! あなたたち、軍事学校の人たちですか? どうかお助け下さい!」
そう言う女性。
まずい状況だ……。どうするか。
「敵の数は?」
僕は聞いた。
「わかりません。ただ、馬に乗っていて……」
そう言う女性。
「先生、ここで見捨てるわけにはいかないでしょう。助けに行きましょう」
そういうトロルの女性、リュボフ。
「よし、行こうか。みんな、弓矢を使って慎重に戦うように!」
僕は言った。
僕達が急行すると、あたりは大変なことになっていた。馬に乗った連中が、民家を襲っているようだ。
「外道め……、はあ!」
ビシュン! と馬上から矢を放つヴァンダ。見事命中し、海賊一人を倒した。驚く海賊たち。
「なんだてめえら!」
「痛い目みてえのか!」
「野郎共、やっちまえ!」
わああ、と曲刀を抜いて襲い掛かる海賊たち。
「撤退しつつ、射撃!」
僕は命じた。馬を後ろ向きに走らせ射撃する。
騎馬の上からの射撃はとても難しく、生徒たちも苦戦する。だがエルメやヴァンダは見事に射撃し、敵を一人、また一人と倒していった。
「ま、待ちやがれ!」
叫ぶ敵。しかし待たない。
「食らえ!」
ビシュン! とダークエルフの男、パウルの放った矢が命中し、敵は落馬し、倒れた。敵は全滅したようだ。